
4技能新テスト迫る!どうなる?英語科目 民間の資格検定試験を活用することが決定
東進ハイスクール・東進衛星予備校 英語科講師
財団法人 実用英語推進機構 代表理事
安河内 哲也 氏
●●現中3生以降は、大学受験生の多くが4技能試験に●●
さて、2020年度から実施される新テスト英語科目においては、4技能(「聞く」「話す」「読む」「書く」)を測定することができる民間の資格検定試験を活用することが決まりました。大学入試センターが認定した試験が、年に2回まで受検できるようになります。現行の2技能(1.25技能)のセンターを23年度まで予備として残す案も浮上していますが、どうなるにしろ、現中学3年生以降の、大学受験生の多くは4技能試験を活用することになります。
さて、どの試験が認定されるかはまだわかっていませんが、民間の4技能試験には、どのようなものがあるのでしょうか?
まずはおなじみの「英検」ですが、英検は国の動きに呼応して大幅なリニューアルを行いました。1級から3級までのすべての級は今年度から4技能スコア型となり、世界基準の「CEFR」に準拠したCSEスコアが出るようになります。つまり、合格・不合格だけではなく、級と級の間の距離がわかるようになり、大学入試や高校入試で活用しやすくなったわけです。
例えば、早稲田大学文学部では、英検2級の2200点(各技能最低ライン500点)を英語免除の基準としています。2020年度の新テストでは、英検が中心的役割を果たすことになると予測されます。
英検協会は、大学受験向きに開発され、アカデミックな英語領域を測定する「TEAP」、世界の大学で最も多く使用されている「IELTS」も実施しています。米国のETSが実施している「TOEFL iBT」も、難易度は高いですが、国際通用性が高い試験です。この試験は、世界の4技能試験の先駆けとなった「元祖4技能試験」です。
また、ベネッセはやはり日本の大学受験向けに開発された「GTEC CBT」という試験を運営しています。ほかにも、「ケンブリッジ英検」、「PTE Academic」、「iTEPAcademic」など様々な4技能試験があります。
●●民間の検定試験と現行のセンター試験との違いとは?●●
大学入試センターはこれらの試験の中から、日本の学習指導要領や国際基準CEFRとの準拠性や、地域による格差の有無、採点の公平性、受験価格の妥当性などを総合的に吟味した上で、どの試験を認定するかを決定します。受験生は4月1日から12月31日までに、これらの試験を2回利用することができるようになり、良い方のスコアを大学に提出することができるようになります。
さて、こんなにいろいろな試験があると、頭が混乱してしまうと思いますが、どの試験も英語の4技能を直接測定しているという点では根本は同じです。現行のセンター試験との違いをまとめてみます。
●読む力
【センター・4技能】大きな違いはなく、日本語を介在させた出題はない。
●聞く力
【センター・4技能】大きな違いはなく、日本語を介在させた出題はない。
●話す力
【センター】間接測定…発音問題や会話のスクリプトの問題で試す。
【4技能】直接測定…英語で応答、描写、主張する能力をそのまま試す。
●書く力
【センター】間接測定…文法問題、整序問題、不要文選択問題で試す。
【4技能】直接測定…長いエッセイやレポートを書かせて試す。
●測定する中心レベル
【センター】→B1 (2技能のみ)
【英検2級】→B1
【TEAP】→B1
【IELTS】→B2
【TOEFL iBT】→B2
【GTEC CBT】→B1
●●これからは英語で「話すこと」「書くこと」自体が入試対策に●●
私自身は、いわゆる「間接測定」が、悪い波及効果をもたらしていることを主張してきました。「話す力」「書く力」を育てるのではなく、文法問題などを解くための教授法が増殖するわけです。そのような対策で点数をとっても、「話す力」「書く力」を反映しないわけです。
世界でも認識は同じで、世界中のトップ大学は今や2技能試験での測定結果を信用していません。日本だけが完璧な公平性にこだわるあまり、間接測定から脱却できずにいたわけです。
試験対策自体は必要悪のようなもので、これからもなくなることはないでしょう。しかし、これからは、世界と同様に「話すこと」「書くこと」自体が試験対策となるわけです。
4技能試験での評価が大学受験で活用されるようになると、進学校や塾・予備校、参考書の版元も、これまでのいわゆる「受験英語」からの脱却を図らなければなりません。「文法問題解説」「構文解析」「英訳・和訳」から、「英語の4技能を使う力」へと、日本の英語教育は、大きく舵を切ることになるでしょう。
CEFRとは、ヨーロッパ言語共通参照枠「Common European Framework of Reference forLanguages」の略。もともとは、英語だけでなくドイツ語、フランス語、スペイン語など様々な言語を、共通の基準で測れることができるようにするのを目的にして作られたもの。レベルは6段階。C2が一番高いレベル(母国語レベル)、A1が一番基礎のレベル(習いたてのレベル)。
A(基礎段階)
A1:日常生活での基本的な表現を理解し、ごく簡単なやりとりができる
A2:日常生活での身近なことがらについて、簡単なやりとりができる
B(自立段階)
B1:社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を簡単に説明できる
B2:社会生活での幅広い話題について自然に会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる
C(熟達段階)
C1:広範で複雑な話題を理解して、目的に合った適切な言葉を使い、論理的な主張や議論を組み立てることができる
C2:ほぼすべての話題を容易に理解し、その内容を論理的に再構成して、ごく細かいニュアンスまで表現できる
(NHK 英語講座HP より)