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株式会社 森上教育研究所 2017年入試 首都圏中学入試の結果と分析

2017-03-31

2月20日(月)東京都内のアルカディア市ヶ谷私学会館において、(株)森上教育研究所(森上展安代表、東京都千代田区)主催「2017年入試 首都圏中学入試の結果と分析」が行われ、多くの学校関係者や塾関係者が集まった。

第1講では、石川一郎氏が「2020年からの教師問題」について講演を行ったあと今春の中学入試はどのように変化したのかを考察し、さらに第2講では、同研究所アソシエイトの後藤健夫氏の分析で伝え、「大手塾分析」のゲストスピーカーにサピックスの広野雅明氏と早稲田アカデミーの入吉弘幸氏を迎え、入試実態に迫った。

共学校と大学附属校の受験者数が増える傾向に

石川一郎 氏

石川一郎 氏

昨年出版された『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)の著者でもある石川一郎氏は、「2020年からの教師問題」について語った。

今ブームとなっているのはアクティブ・ラーニングだが、その前、90年代の終わり頃には「ディベート」が流行し、いつのまにかすたれてしまった。

「ディベートに関して言えば、例えば2つの価値観が出てきたとき、日本人はロジックや説得力を問わずに、どっちの価値観でもいいじゃないかという話にしてしまいがちです。クラスで話し合っても『いろいろな考え方を大事にしようね』という話になってしまいます。お互い認め合うことは大事なのですが、答えは1つにしなければなりません。正解というよりは『最適解』を求めるのが苦手です」と石川氏は語る。そして「これから学校が向かっていく先には正解がなく、正解がないからこそ、アクティブ・ラーニングは成立すると思っています」と述べた。2020年の大学入試では、答えが1つに定まらない問題が出されることはすでに教育再生実行会議で提言されている。

ただし、すでに正解があるものについてアクティブ・ラーニングを行っても意味はないと石川氏は言う。「例えば第2次世界大戦が起きた背景については先生が教えてもいいのではないかと思いますが、『どうすれば第2次世界大戦を防げたのか、もしあなたが当時の日本の首相だったら、どんな政策をとりますか?』という問いになると正解はないわけで、これはグループワークをやると非常に効果があるわけです」。

また、多くの生徒は先生がこうしたいという思いを読んで行動するので、生徒が自律的な考えを身につけるのは非常に難しいとも言う。「私が学年主任をしていた生徒たちは5名東大に合格しましたとか、自分が主役になってこういうことを主張する先生が結構いらっしゃいますが、それで本当にいいのか? ということです。生徒たちを使って実績を出すのではなく、あるいは先生が目標を決めてそこに向けて生徒たちを引っぱっていくのではなく、子どもたちの一番いいところを引き出すような、そういう関係性にしなければいけません。でもおそらく、ここが結構大変です」。

さらに、「先生たちには自分の教科についてさらに学んで深めていただきたい。そういう先生が発する問いには凄味と深みがありますから」と語った。

多様化する中学入試、「思考力入試」は昨年の約2倍に

小泉壮一郎 氏

小泉壮一郎 氏

「入試状況はどう変化したか」について、森上教育研究所のアソシエイト、小泉壮一郎氏が語った。それによると、受験者数は茨城・神奈川・北東部23区(北・板橋・足立・葛飾・荒川・台東・墨田・江東・江戸川区)が減少し、千葉・埼玉・多摩川地区が増加した。学校種別では男子校・女子校が減少し、共学校が増加。共学校の実質的な受験者数増加率は4.0ポイントにもなったという。また、付属校は微増の横ばいで、進学校は微増の横ばいで、半付属校は減少傾向が続いている。

学校ランクでみると、C(四谷大塚偏差値59〜55)・D(同54〜50)ランクは前年を上回り、A(同65以上)・B(同64〜60)・E(同49〜45)・F(同44〜40)はわずかに減少だったが、G(同40未満)・H(非エントリー)ランクは大幅な減少となった。GHランク対その他のランクの2極化とも言えるかもしれないとのことだ。

また実質的な受験者動向は、2017年受験者数は99.6%の横ばいで、小6人口の影響がなければ前年対比101.64%で、実質的には1.64ポイントの増加だった。

2017年入試で受験者数が増加した原因は明確ではないが、仮説として受験生・保護者が私立中学の「グローバル教育」に期待していることが考えられるという。

同じく同研究所のアソシエイト、高橋真実氏は入試のトピックを紹介した。

高橋真実 氏

高橋真実 氏

最初は「英語入試」について。英語の必須入試を行った学校は17校で、回数にすると27回。昨年は16校32回だったので、学校数としては大きな変化はなかったという。「試験の方法は大きく分けて、ペーパーテスト、リスニング、インタビューがありますが、インタビューの中で、選択として日本語でも英語でもいいという学校がありました」と高橋氏は言う。

次は「思考力入試」について。「こちらは英語入試と違って、今年は本当に爆発したな、というのが率直な感想です」。実施した学校が45校、受験回数は64回。昨年は28校、33回だったので、学校数、回数ともに昨年のほぼ2倍に増加した。「その中で1回あたり50人以上の受験生を集めた学校が都内には9校ありました。今年というよりは一昨年から増加しています」。

試験の方法は実に多彩だ。「合教科型のもの、プレゼンテーション型というのもありまして、自分がこれまで取り組んできたものについてプレゼンテーションしたり、自己PRしたりします。もう一つは調べ学習。テーマを与えてそれについて調べ、まとめて発表するというのも出てきています。学校によってはグループワーク型のテストを行っているところもあります」

高橋氏によると、英語入試、思考力入試は受験生がどこにいるかを見極めることが大きなポイントで、さらに積極的な広報活動も行う必要があるという。

「英語入試、思考力入試ともに、実際に入学してからの教育カリキュラムとの整合性も大きなポイントで、その整合性がクリアに見えている学校は受験生を確実に集めています。特に思考力入試は、模擬試験を実施するなど入試方法をわかりやすく伝えている学校が受験生を集めていると思います」。

会場は学校関係者、塾関係者で埋め尽くされた

会場は学校関係者、塾関係者で埋め尽くされた

問題解決できる人を大学は養成できるか

後藤健夫 氏

後藤健夫 氏

第2講の最初は、同研究所アソシエイトの後藤健夫氏が「大学入試改革の行方」について語った。

開口一番、大学入試改革について教育再生実行会議の提言はいったいどこへ行ってしまったのかと疑問を投げかける後藤氏。しかしそれでも教育は変えていかなければいかないと言う。なぜなら、少子高齢化、AIの登場、さらに国際問題の複雑化によって今の若者の未来は必ずしも明るくないからだ。

「これまでは知識の詰め込みによる受動的学習が中心でしたが、これを最も得意とするのはコンピュータです。AIが登場して、いつまでも受動的な学習をしていたら、AIに使われる人間になってしまいます」。

失われた20年と言われるなかで営業はソリューション営業、つまり問題解決に向けた営業手法に変わっていったのが象徴的だが、教育、特に公教育もまた、問題解決のためになっているかどうかが問われているという。「これがなければ、いくらワークショップを行っても、グループで話し合っても意味がありません」。

問題解決ができる人材を大学や高校は養成しているのかどうか。これがおそらくこの数年間で問われてくるだろうと後藤氏は語る。

 

 

 

 

注目される新しいタイプの入試

広野雅明 氏

広野雅明 氏

サピックス教育情報センター本部長の広野雅明氏は、「受験生動向から見た今春入試」について、サピックス生の動向を男子校中心に分析した。

大学付属校のブームが来ているが、実際に蓋をあけてみると、女子は付属校受験者が増えているが、男子はさほど増えていないという。

「付属校のトピックは、なんと言っても芝浦工大附属です。来年度豊洲に移転し、共学になります。入試も首都圏では珍しい算・国・理の3教科入試を導入しています。このようなインパクトがあったので、実受験者数も増えました。さらに受験者、合格者の平均点は特に算数の点数が上がっています。理系に特化するという同校の狙いがうまく果たされたという感があります」。

校舎を新設し、校地を拡大した明大中野も多くの受験生を集め、2月5日にB方式4科総合型の入試を導入した明大中野八王子は、実受験者数354名に対して合格者はたったの23名という競争率の高い入試となった。

公立一貫校はひと頃のブームは去った感はあるが、出口の実績のいい学校は受検者が増加しているという。

「都立小石川を受検したお子様が2月1日の午前中どこを受験したかというと、一番多いのが開成、次が麻布、続いて桜蔭、渋渋、吉祥女子、女子学院となっております。サピックス生で2月3日の受験者が増えているのは、男子は国立です。学芸大世田谷の人気が結構高く、筑波大附属も男女とも人気があります」。

男子校でブレイクしたのは麻布だ。「実受験者数も大幅に増え、最近は面倒見の良さもPRしています。麻布らしさとともに、新しい施設になって保護者にも安心感を与えたのだと思います」。

今年の注目は、新しいタイプの入試とのこと。「聖学院の思考力入試、八雲学園の未来発見入試、宝仙学園理数インターのリベラルアーツ入試などがありますが、かえつ有明のアクティブ・ラーニング思考力特待入試は2月4日であるにもかかわらず、114名の出願に対して合格者はたったの8名でした」。

こういった入試は今後ますます増えることが予想されるが、その入試で入学した子どもたちがどのように育っていくかを学校が提示できるかどうかが大きなポイントになるという。

 

 

 

 

 

 

帰国生入試対応は大きなトレンド

入吉弘幸 氏

入吉弘幸 氏

早稲田アカデミー教務部部長の入吉弘幸氏も「受験生動向から見た今春入試」について述べたが、早稲田アカデミー生の動向を女子校中心に分析した。

「大学附属校と進学校の受験者数は増えていますが、これを違うカテゴリー、男子校、女子校、共学校と分けてみると、女子校だけ減少し、その減少分を共学校が全部カバーしてしまったという状況です。実際女子の受験生は共学に行くことが多く、共学校の中には女子だけ増えている学校も目立ちます」。

そのような学校の代表格は、中大附属、日大二中、広尾、法政第二。男子も増えているのが三田国際、明大明治、明大中野八王子。

「法政はかなり人気になっていて、2月1日、3日、5日と、法政と法政第二が激増し、欠席率も少なかったですね」。

女子校だけを見たとき、受験生が減っている学校が多い中、学習院、鎌倉女学院、恵泉、十文字、田園調布、東京女学館、立教女学院は少し増えているという印象があるが、格差が広がったというイメージはとても大きいという。

首都圏居住者のニーズの変化は大きいが、その中でも帰国生の対応は大きなポイントになるという。

「早稲田アカデミー内だけでも帰国生入試は軒並み増えています。さらに言うと、帰国生は中学入試に向いていると思うので、これは今後のカギになってくるでしょう。まさしくグローバル化と一致するような内容になっていくのではないでしょうか」と入吉氏は語る。

しかしながら一方で、建学の精神は重要だ。時代の大きな変化は真摯に受け止めながらも、教育の芯となるようなところまで変えてはいけないという。

「歴史の中で築き上げた日本という国の素晴らしさはしっかりと受け継ぎ大切にしながらも、全世界でどのように闘っていくのかを考えられる力を養っていくことが必要です。そこにおいて最も大切なことが教育であることは火を見るより明らかです」。

さらに特に女子校は、女子校の魅力、素晴らしさをもっともっとアピールすべきだと強調。保護者や子どもたちから共感を得られるような発信を積極的に行って欲しいと入吉氏は述べた。


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