
塾の日シンポジウム2016 四日市大会 地方からの教育イノベーション!
公益社団法人全国学習塾協会は10 月16 日(日)、プラトンホテル四日市(三重県四日市市)にて「塾の日シンポジウム2016 四日市大会」を開催した。テーマは「地方からの教育イノベーション!」。三重県協議会の取り組み紹介や、愛知県出身の「日本わくわく協会」柴田美香理事長による講演などが行われた。
講師の安心・安全を守り、良質な教育サービスの提供を
今回で28回目となった「塾の日シンポジウム」。第一部「塾の日記念式典」は、全国学習塾協会の山下典男副会長による開会の辞で幕を開けた。続いて、安藤大作会長は次のように式辞を述べた。「塾がコンプライアンスを重視したたゆまぬ取り組みを行い、講師の安心・安全が守られ、さらに人材不足が改善され、結果としてより良質なサービスを提供する、そんな善のスパイラルの広がりを実践していくことが、我々の使命だと考えています」
来賓祝辞として、経済産業省の藤井法夫氏は、サービス産業におけるサービス品質を〝見える化〟する「おもてなし規格認証制度」を紹介。学習塾産業では現在24社が認証取得申請を行っていると話した。
文部科学省の助川隆氏は、地域学校協働活動の一環として「土曜学習応援団」や子どもの未来応援国民運動における「地域未来塾」が担う役割の重要性を強調し、さらなる連携・協働を呼びかけた。
全国学習塾協同組合の森貞孝理事長は、次のように提言した。「大手企業がICT分野で教育業界に参入し、東京都が『英語教育戦略会議』を設置するなど、子どもたちをとりまく教育環境は日々進化しています。民間教育と公教育はお互いさらに切磋琢磨していくべきではないでしょうか」
大島九州男参議院議員は「教育再生実行会議第九次提言」について触れ、
「国を動かす原動力になる人材を育てるという強い信念を、ここにお集まりの皆さんと共通認識として掲げながら、国会で発言していくことをお誓いします」と挨拶した。
続いて第一部のプログラムは、自主基準遵守塾の表彰へと進み、第26回全国読書作文コンクール優秀作品表彰も行われた。
そして締めくくりは、三重県協議会の岸本雅夫副幹事長が登壇し、「高校入試の調査書の評定分析や、『三重ぜんけん模試』のデータを活用した各高校のボーダーラインの推定などを行っています」と、三重県協議会の取り組みを紹介。例年10月に県下3会場で実施する情報交換会が、学習塾における進路指導の一助を担っていると話した。
また、会場エントランスでは、三重県立水産高校が製造した災害時の非常食「サバイバル缶詰(通称:サバCAN)」や、三重県立あけぼの学園高等学校の商品開発プロジェクトによる伊賀産菜種油を使ったヘアケア製品などが特別展示されていた。あけぼの学園の生徒たちは自身が開発に携わった製品を、来場者に熱心にPR。今回のシンポジウムのテーマ「地方からの教育イノベーション!」にふさわしく、日頃の学びの成果を地元の魅力として発信した。また、愛知県や三重県など中京エリアの企業によるブース展示も行われた。
日本わくわく協会・柴田美香理事長による 「夢を叶える魔法の言葉」
第二部はオープニングセレモニーとして、桜丘中学・高等学校ハンドベル部の演奏で幕を開けた。同部は世界大会の出場経験を持ち、全国有数の実績を誇る。61個のハンドベルが奏でる美しく澄んだ音色に会場が包まれた。
続いて、「日本わくわく協会」理事長・柴田美香氏による「夢を叶える魔法の言葉」と題した講演が行われた。柴田氏の次男・章吾さんは、中学年3年生で原因不明の難病「ベーチェット病」を発症しながら、高校野球の名門・愛工大名電に進学し、甲子園大会に出場。2011年には読売巨人軍に育成枠で入団し、家族とともに難病と闘いながら〝夢を追い続ける奇跡の投手〟と言われている。
柴田氏は当時を振り返り、「もう野球はできないかもしれない」という絶望の淵にいた息子に対し、何か一つでも役に立ちたい一心だったと話した。
「お見舞いでいただいた、五日市剛さんの著書『ツキを呼ぶ魔法の言葉』を読み、藁をもすがる想いで息子に渡しました。嫌なことや辛いことをイメージしていると、人生はどんどん悪い方向に行ってしまうけれど、『ありがとう』『感謝しています』というプラスの言葉を発すると悪い連鎖が途切れ、人生が好転するという内容に感銘を受けました」
最初は半信半疑だった章吾さんも、病室のベッドの上で痛む腹部を押さえながら『ありがとう』と唱えはじめた。その言葉には、支えてくれる両親への感謝の想いが込められていたと、後に章吾さんは語っているという。
「いつしか息子は、一度は諦めた夢である甲子園のマウンドで投げる自分をイメージするようになりました。すると不安よりもワクワクした気持ちが打ち勝って、みるみる前向きになり、『野球を続けたい』と宣言して医師を驚かせるほどに変化していきました。頭の中で”ワクワクしたイメージ„を持つことで、現実がイメージ通りになっていくことを息子に教わりました」
そして、来場者とともに「わくわく講座」のワークショップがスタート。はじめに、悲しい・辛い・苦しい・嫌だったことを書き出し、その紙をビリビリと破る。マイナスのイメージを手放した後で、次のステップでは楽しい・嬉しい・ワクワクすることを紙に書き出す。来場者の数名がワクワクすることを発表すると、柴田氏は「素晴らしい!」「いいね!」「ステキ!」と声に出すように全員を促した。いわゆる、傾聴と承認のメカニズムだ。最後のプログラムは、「過去形で夢を語る」というもの。柴田氏は次のように話した。
「こうなりたいではなく、すでに叶ったかのごとく夢を宣言することで、現実がイメージ通りになっていくのです。私自身も辛いことが頭の中いっぱいに埋め尽くされていた息子の闘病期を経て、幸せなことだけを考える時間を持つように努めました。1つの言葉が人生を変えることだってあるのです。言葉には本当に不思議な力があると思います」と語った。 和やかなムードの中で第二部は幕を閉じ、その後、第三部の民間教育交流会でも、全国の学習塾による活発な情報共有が活発に行われた。