
教育資源としての民間教育 第99回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
当たり前を守るために、私たちは動かなければならない
新学期が始まり、各教室では新しい学年の空気が少しずつ落ち着いてきた頃かと思います。新しい環境に緊張していた子どもたちも、少しずつ表情がやわらぎ、自分なりの目標に向かって歩み始めています。こうした日常の光景は、塾に携わる者にとって何より大切なものです。しかし私は、この「当たり前の光景」を守ることこそ、今の時代において最も大切な仕事の一つではないかと感じています。
近年、高校授業料無償化をはじめ、教育をめぐる制度の見直しが進んでいます。家庭の経済状況に左右されず、学びの機会を広げていこうという方向性は大いに歓迎すべきものです。一方で、制度が整うことと、現場の一人ひとりの子どもが救われることとは、必ずしも同じではありません。実際には、学力差、家庭環境、地域差、進路への迷いなど、制度だけでは埋めきれない現実が数多くあります。
だからこそ、学習塾の役割があるのだと思います。私たちは単に知識を教えるだけではありません。子どもたちが前を向いて学び続けられるように支え、時には保護者と向き合い、時には進路の不安に寄り添いながら、その子にとっての最善を一緒に考える存在です。そこには、学校とも家庭とも異なる、民間教育ならではの役割があります。
また、AIや教育DXが進む時代にあっても、この役割は決して小さくなりません。むしろ、情報があふれ、学びの手段が多様化した今だからこそ、「何を学ぶか」「どう学ぶか」を導いてくれる存在の重要性は増しています。技術が進んでも、最後に子どもを支えるのは人であり、信頼関係であり、日々の対話です。私は、そこに塾の本質があると考えています。
そしてもう一つ、忘れてはならないことがあります。それは、私たちがこうして教育活動を行えている環境は、決して自然に与えられているものではないということです。国や行政の制度設計が変われば、民間教育の立ち位置も大きく変わり得ます。「国は関係ない」「現場だけ見ていればいい」という時代では、もはやありません。だからこそ、業界の声を集め、社会に発信し、必要な提言を続けていく役割が必要です。
公益社団法人全国学習塾協会は、そのための団体です。目立たない仕事かもしれませんが、業界の防波堤として、全国の教室の日常を守るために動き続けること。それが結果として、子どもたちの未来を守ることにつながると信じています。
これからも、塾業界が社会の中で信頼され、必要とされる存在であり続けるために、皆様とともに歩んでまいりたいと思います。

































