
2026年 首都圏中学入試の結果と分析
森上教育研究所 中学受験研究会・私学中等教育セミナー
受験者数は微減も受験率は高水準
(株)森上教育研究所(森上展安代表、東京都千代田区)主催の第490回中学受験研究会・私学中等教育セミナー「2026年入試 首都圏中学入試の結果と分析」が2月19日(木)、順天堂大学7号館 小川秀興講堂(東京都文京区)で開催された。
第1部は「入試問題出題傾向の変化について」、第2部は「模試からみた入試状況の変化をさぐる」、第3部が「受験生動向からみた今春入試大手塾分析」だ。全体の司会は同研究所アソシエイトの高橋真実氏。多角的に今年の首都圏中学受験の概要を振り返った。
[第1部]入試問題出題傾向の変化
国語分析
平山入試研究所 所長 小泉 浩明 氏
2つの問題文からの出題が増加
小泉氏は例年通り、文種、問題文のテーマ、頻出作家と頻出内容について分析した。
2026年の傾向として、文種では随筆が昨年3.8%に対し、5.6%と微増。問題文のテーマでは、「友人(友情)」が年々減少。また、昨年まで減少傾向だった「言語コミュニケーション」が再び増加した。他には、これまであまり出題されてこなかった「うそ・虚偽・犯罪」や「メディア」なども出てきており、テーマが多様化していることが窺える。頻出作家についても、新しい作家が登場している傾向が見られた。
小泉氏は国語の問題の進化として「読解力を問う問題が多かった」と解説。武蔵で出題された朝比奈秋の「植物少女」は、植物人間になった母を見舞う娘の物語で、登場人物の心情を捉えるのは受験生にとって難しいと思われる。
さらに、内容が身近なものではないもの、物語の中で別の物語が展開するものなどがあり、「読みにくい文章を出題し、それによって読解力を問うのは面白い試み」と話す。
興味深かったのは、問題文全体を理解しないと解答できない設問をする学校が多かったこと。また、物語文と説明的文章でテーマが同じ学校もあった。世田谷学園・青山学院・東大寺学園は「言語・コミュニケーション」、鷗友学園女子は「弱者・障害者・病人」とテーマが同じだった。
一番の変化は2つの問題文からの出題をした学校が21校(昨年7校)と増えたこと。「今年は問題文の中の設問の中で数行の問題文を提示して問う形式が増加した。来年以降もこういった形が増えるのではないか」と小泉氏。西大和学園では、生成AIによって作成された画像を問題に使用。「面白い試み。今後様々な形で出てくる可能性があると思いました」と話した。
算数分析
みんなの算数オンライン 主宰 竹内 洋人 氏
受験生に考えさせる問題が増加
竹内氏は、今年の算数入試について感じたところを4点挙げた。1つ目は、解法の記憶に頼って解けていた問題が減り、考える問題が増えたこと。「条件反射的に手が動いて解ける問題がなく、一歩立ち止まってしまう問題が明らかに増えてきたことを今年は強く感じました」と話す。
2つ目は、整数問題を扱うテーマの難度が年々上昇していること。3つ目は、初めて見るような形の平面図形が特に難関校で出題されていること。これも問い方が新しく、一瞬立ち止まるタイプの問題が増えている。4つ目は立体切断に加え、立体交差も交えた問題も見受けられるようになっていることだった。
竹内氏は各校の平均点の推移を紹介しつつ、開成の合格者平均と受験者平均(共に%)について言及。合格者平均は昨年から0.4%ダウンと大きな変化はないが、受験者平均だけが6.3%ダウンした。
原因の1つは大問1(1)で、グラフ問題が出題されたこと。開始直後に、2点の移動に伴い変化する三角形の面積に関するグラフを書く問題が出され、「ここを丸々落とした受験生もいたのではないか」と竹内氏。「出題順は極めて重要で、この問題が大問2や大問3に配置されていれば結果は変わってきた可能性がある」と話した。
竹内氏が解くのに苦戦したのは鎌倉学園(一次)の問題3(2)。平面図形・円の問題で、斜線部分の面積を求めるシンプルな問題だったが、円の中心にできる直角二等辺三角形に気づかないと解けない問題だった。同じく平面図形・円の問題で、麻布の問題3は、円の弦の長さを考慮する珍しいユニークな問題が出題されていた。「しかも、方程式的な面倒な処理になることを避ける設定がされていて、非常にきれいな良問だと思いました」と語った。
社会分析
文教大学 早川 明夫 氏
新出資料を読み解く問題が増加
早川氏は「社会はここ数年、大きな変化は見られません。最難関校では問題が平易になっていて、むしろ中堅校の一部では、非常に難しい問題が出されています。全般的に問題の質は向上しており10年、20年前の問題と比較すると、雲泥の差があります」と話す。
早川氏は一見すると難問だが、教科書の細かな記載から出題されている例として、「沖縄県糸満市の慰霊碑の名前(学習院女子)」や「藤原道長の時代に男性貴族が着用した正装の名前(横浜雙葉)」などを紹介した。
基礎的な知識の定着と応用をみる問題も多くなっている。筑波大学附属の「都道府県別の森林面積と森林率」の表を見て、都道府県名を答える問題は、内陸県名には印がついていたり、果実の栽培が盛んな県であるといったヒントが出されていた。この2つの基礎的な知識を応用すれば解ける問題だった。
様々な資料、しかも新出資料や複数の資料を読解する問題も増加傾向にある。雙葉の「季節の影響を受ける自然災害」についてのグラフや、豊島岡の黄砂を観測したグラフや地図は、多くの受験生にとって、初見だったと思われる。
「100校ほど入試問題を分析して痛切に感じたことは、改めて国語力や読解力が大事だということでした。時事問題も多く取り上げられていました」と早川氏。時事問題では参院選関係、トランプ米大統領の政治、周年問題(昭和100年、普通選挙法・治安維持法成立100年他)などが出題されていた。
理科分析
Tサイエンス 主宰 恒成 国雄 氏
「附属系の共学校」の問題が難化
恒成氏は全体の傾向として、上位校は例年通りの難易度だったが、千葉・埼玉の学校は易化したと分析。注目は「附属系の共学校」の問題の難化で、上位校と格差がなくなりつつある。これは問題作成が充実してきたこと、思考力重視の時代の流れがあると恒成氏は考える。「附属校第一志望の受験生が、難化する理科問題に対応できるかが今後の課題」と話す。
出題内容では、知識を問う問題が減少し、思考やデータ処理の問題が増加した。開成の「小鳥が効率よくエサを選ぶ実験」についての問題は、知識は一切出題されず、データを読み取る力が試された。「こうした問題は教えるのが難しい。普段の学校生活での手際の良さ、例えばどういう手順で掃除をしていけば早く片付くかなどを考えている子どもの方が解けるのではないか」と恒成氏。
今年は時事問題に絡めて、米の値段の高騰、クマの被害の出題が増えると予想していたが、それほどでもなく、多かったのは天体の皆既月食だった。一昨年多かった地震と猛暑の問題は、形式が変わりつつある。地震は津波に、猛暑は経口補水液についての問題が多かった。
その他、血液に関する問題も増加。ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文氏の制御性T細胞の研究や、漫画「はたらく細胞」などの影響があると考えられる。昨年から見られるようになったのは血液型の問題。以前はタブーとされていたが、東京農大第一や豊島岡などで出題。パズル的な思考力が試される面白い問題になっている。
「これぞ!中学理科入試問題」と恒成氏が感心したのは、明大八王子(第2回)の掃除機の仕組みから台風が通過するときの風向きの変化を説明した問題だった。
[第2部]模試からみた入試状況の変化をさぐる
・サピックス 広報・企画部 部長
広野 雅明 氏
・首都圏中学模試センター 学校情報部 事業リーダー
鈴木 達也 氏
・四谷大塚 情報本部 本部長
岩崎 隆義 氏
・森上教育研究所アソシエイト
高橋 真実 氏
受験者が微減も、中学受験率は高いまま
第2部では(株)サピックス広報・企画部 部長 広野雅明氏、首都圏中学模試センター 学校情報部の鈴木達也氏、 森上教育研究所アソシエイトの高橋真実氏が登壇。事前に募集していた質問に答える形でスタートした。
ー首都圏から関西の中学への受験生は増えていますか?麻布中の志願者が減少したのは、模試から見られた動きなのでしょうか?
広野 首都圏から関西を受ける生徒は2つに分類されます。1つは関西に転居予定の生徒。サピックスでは毎年15〜20名の生徒が関西の学校を受験し、そのまま進学します。もう1つは関西の難関校に合格し、いわゆる「三冠王」を目指す生徒です。そうした生徒は毎年ほぼ一定数おり、急激な増減はありません。麻布の受験者数ですが、模試から前年比98%でやや微減という予想で、実際の入試もほぼ予想通りでした。
ー首都圏入試の全体的な動向、茨城県の伸びについて教えてください
鈴木 首都圏の中学受験者数は前年より250人減り、5万2050人と算出。中学受験率も18.06%と、昨年の18.1%から微減となりました。都県別の受験者数は埼玉と神奈川が減少、千葉は微減、東京と茨城が増加しました。茨城の増加は、江戸川学園取手が1月9日に入試を新設したこと、また英語を含めた五科入試から四科入試に変更した影響が大きいと思います。
ー首都圏入試の全体的な動向は?
岩崎 四谷大塚の集計では、2月1日の実受験者数は4万2310人。前年より345人減りました。しかし、実受験者数トップ100の学校だけ集計すると受験者数は増加。つまり、学校選びが二極化していることがわかります。2026年の東京都の6年生数は昨対比で1386名増加しており、受験者数・受験率ともに東京が奉引。今年も受験者総数は5万5000名を維持し中学受験率は19.1%と、過去最高を更新したと推測しています。
ーサピックスオープンにおける早慶志望者の動向の変化は?
広野 早慶は各年現象を示し、前の年が増えると翌年が減ることを繰り返します。慶應普通部はサピックスオープンでは前年比86.2%、実受験も85%と、おおむね模試の結果が実際の入試に反映されたと思います。また、安全志向から、無理して早慶にチャレンジというよりは、順天堂大学系属理数インターを始めとした、新しい附属校に目を向ける家庭が増えてきたと感じています。
ー受験生の保護者の意識の変化、受験者数の増加に共通するキーワードは?
鈴木 今年は文教大学付属、鎌倉国際文理、安田学園などの共学校人気が高かったです。共通するのは、放課後学習支援サービスが充実している学校。もう一つは、サイエンス教育で施設が充実している学校。最近「ゆる受験」という言葉を聞きますが、これは首都圏模試を主に受けている層の受験だと思っています。しかし、首都圏模試の受験者の人気校の倍率を見ると4倍、7倍になることもあり、「ゆる受験」とは言えない状況です。
[第3部]受験生動向からみた今春入試大手塾分析
サピックス 広報・企画部部長
広野 雅明 氏
東京都市大付属の出願数が増加
男子校の分析はサピックスの広報・企画部 部長広野雅明氏。
2月1日の男子校で出願数を大きく増やしたのは、東京都市大付属。サピックス小学部の合格者の平均偏差値が上がり、難しくなっている。同様の学校例として、広尾学園・本郷・東京農大第一などを挙げた。
トピックとなる学校として紹介したのは、3年連続で出願総数を増やしている佼成学園。大学の合格実績が伸びていることが目立つ。「丁寧な男子教育で、可能性を伸ばす面倒見のいい男子校。これがキーワードとなり、人気となっています」と広野氏。
攻玉社は、昨年出願数が減ったものの、今年は大きく増加。これには同校の東大の合格者数と見事に正比例している。生徒を「攻玉社男子」と呼び、逞しさの中に優しさを持ち合わせる男子に成長させる教育や、駅からの近さも人気につながっている。
神奈川の男子校で、今年出願数を増やしたのは、サレジオ学院。「サレジオファミリー」という言葉があり、25歳・50歳の集いにも多くの同窓生が集まるのは伝統校の強み。ラーニングカフェという、生徒が自由に集まって研究ができるスペースも注目されている。
広野氏は最後に「受験体験記」の一部を紹介。受験勉強を始める前は「かいけつゾロリ」を読んでいた息子が、受験後東野圭吾の本を読んでいたという保護者。「大人の本が読めるようになったのは、受験で文章に向き合っていたからだ」と感じたというエピソードを紹介した。
早稲田アカデミー 中学受験部部長
丸谷 俊平 氏
山脇学園が女子御三家の併願校に
続いて、早稲田アカデミー中学受験部部長の丸谷俊平氏による女子校の分析があった。
早稲田アカデミー小6女子のデータを見ると出願校数の平均は8.23校で過去最高を記録。受験校は6.14校だった。「出願校数と受験校数の差が広まっている理由としては、サンデーショックで早くに進学先を決めた方が今年若干増えたためでは」と丸谷氏。
女子の午後入試の割合も増えている。2月1日が72.9%(男子56.1%)2月2日が50.2%(男子33.1%)。2月3日が40.1%(男子18.4%)。サンデーショックの影響もあり、3日までもつれ込んだ受験生が一定数いたと推測できる。
今年の女子御三家の合格率は桜蔭50.6%、女子学院34.7%、雙葉32.0%。「桜蔭は補欠32名が全員繰り上がった結果だと合格率56.2%と昨年とほぼ同程度でした。この繰り上がりによって、多くの学校が影響を受けたと推測します。2日に試験日を変更した女子学院は合格率が昨年の43.1%から8.4%もダウン。1日の結果から2日の女子学院を受験しなかった受験生がいた一方、繰り上げ合格も例年より多くいたと思われる中でのこの合格率ですので、最も苦しかった入試になったと思われます」
早稲田アカデミーの受験生で、2月1日午前に受験者数が増加した中で注目されるのは洗足学園と富士見。2月1日午後は山脇学園が非常に増えている。「サンデーショックの中、2月1日と2日の午後入試において、山脇学園が桜蔭・女子学院・雙葉の3校の併願を多く勝ち取りました。それが今年の受験者の増加に大きく貢献し、優秀な生徒を受験させることに成功したと考えています」と丸谷氏は話した。
栄光ゼミナール 教務部課長 藤田 利通 氏
面倒見の良さが進学に結びつく学校が人気
共学校については、栄光ゼミナール教務部課長の藤田利通氏が解説。
埼玉県では昨年受験者数が増えた反動もあり、今年は減少して落ちついた。また、何回も受験する生徒が減ってきている傾向も見られた。出願数・受験者数が増えたのは埼玉栄、西武学園文理など、注目は新設校の浦和学院で、577名の出願を集めた。
「埼玉県だけでなく、偏差値的にギリギリの生徒が無理をしなくなる『堅実志向』が広がり、着実に合格を取りにいくようになりました。さらに、無理をしなくても我が子に合った良い学校を吟味するようになっていると思います」と藤田氏。
千葉県全体の受験者数はほぼ前年並みだが、微減。12月1日の第一志望入試の受験者は増えていることから、地元の学校に進学したいという意志が強かったのでは、と藤田氏は捉える。
神奈川県は受験生数・倍率ともに大きく減少。小6児童数の減少幅が大きかったことが影響している。出願数・受験者数が増えたのは桐蔭学園中等、鎌倉国際文理。鎌倉女子大が鎌倉国際文理となり、共学校化して募集を開始したことで、多くの受験生を集めた。
東京は受験数・倍率ともに前年並み。出願数・受験者数が増えたのは文教大学付属、安田学園、青陵、桜丘など。「きめ細かい指導と面倒見の良さ、それが大学進学実績にきちんと結びついている学校は高く評価されていると思います」と藤田氏は話す。
首都圏の公立中高一貫校の受験者数は、川口市立高校附属中が定員を30名増やした影響で、埼玉県では増加。しかし、その他の都県では受験者は減っている。
最後に高橋氏から、森上教育研究所による1都3県の2月1日午前入試の受験者数の報告があった。受験者数は4万2480人で、前年比では99.3%。受験率は昨年と同じ15.2%だった。














![[左]首都圏中学模試センター 学校情報部 事業リーダー 鈴木 達也 氏 [右]サピックス 広報・企画部 部長 広野 雅明 氏](http://www.juku-kyoiku.com/wp-content/uploads/2026/04/2026_04_p56_speech1.jpg)
![[左]森上教育研究所 アソシエイト 高橋 真実 氏 [右]四谷大塚 情報本部 本部長 岩崎 隆義 氏](http://www.juku-kyoiku.com/wp-content/uploads/2026/04/2026_04_p56_speech2.jpg)
























