
私塾協同組合連合会 全国研修大会
「少子化の中の成長戦略を学ぶ」
私塾協同組合連合会の全国研修大会が12月7日(日)、埼玉県大宮市の大宮サンパレスGLANZで開催された。第一部はPS・コンサルティング・システム代表の小林弘典氏が「少子化の中の成長戦略ーワンフレーズキャッチを探せ!」のテーマで講演を行った。
研修会は、私塾協同組合連合会理事長の坂田義勝氏の挨拶からスタート。「今、塾にとって厳しい状況が続いておりますが、講師の小林先生に色々なヒントをいただき、来年に向けて、塾の運営に役立てていただければと考えております」と話した。
続いて、全国学習塾協同組合理事長の森貞孝氏、駒込中学校・高等学校の河合孝允校長が来賓として挨拶。この他、学習塾団体合同会議代表幹事の鈴木正之氏、千葉学習塾協同組合理事長の峯村明子氏も来賓として紹介された。
[講演]
「少子化の中の成長戦略ーワンフレーズキャッチを探せ!」
PS・コンサルティング・システム 代表 小林 弘典 氏
最初に中3生の数の推移から、学習塾市場のこれまでとこれからを確認したいと思います。2025年度の中3生の数は106万9000人。1988年度の205万1000人と比べて52・1%まで減少しています。このままでは2033年度には90万6000人になる予想です。
塾の方々には、今後自塾のエリアでどのくらい生徒が減るのか確認していただきたいと思います。中には危機感のない先生もいらっしゃいますが、あっという間に生徒は減っていきます。私の知っている例では、中学校2校で8クラスほどあった地域が、数年後には2クラスになっていました。
もう一つ注目したいのが、中3生の通塾率の推移です。大都市(政令指定都市と東京23区)・中核都市(人口20万人以上)・その他の市・町村のいずれも2021年をピークに通塾率が下がっています。全国的に中3生の減り具合よりも通塾率の減り具合の方が大きくなっています。
これまで塾は「みんなが行くから私も行く」という子どもが多かったと思います。ところが今は通塾していない子どもが増えてきて「みんなが行かないから私も行かない」となる可能性が出てきました。その点を非常に危惧しています。
一方で、明るい話題もあります。来年度から私立高校の授業料が基本的には無償化されます。その分、浮いたお金はどこに流れるのか。私は塾に流れると思います。今、総合型選抜など年内に実施される大学入試に「基礎学力テスト」を導入する大学が増えています。総合型選抜でも希望する大学に行くためには勉強する必要が出てきますから、アピール次第では通塾に誘導できると考えています。
オンライン併用塾やリスキリング需要に活路
今後、塾業界の市場は少子化とともに小さくなっていくと考えられます。その時、塾事業者に残されている選択肢は3つ。「撤退(転業・廃業)」「学習塾事業を継続」「総合学習支援産業に転身して成長路線へ」です。
学習塾事業の継続を選択するのであれば、市場が残っている地域へ移転する方法があります。また、少なからず市場が残っている場合、他塾の撤退後に生徒を独占できる可能性もありますが、いつまで続くかはわかりません。
移転せず、専門塾として生き残る方法もあります。また大きく市場が減っている地域については、移転せず「地域限定のオンライン併用塾」へ転換する方法も考えられます。これは月2回ほど通塾し、その他は自宅でオンラインで自主学習をしてもらうスタイルの塾です。
地方の人口密度の低いエリアでは、生徒はどうしても遠くから通わざるを得ません。その場合、一番問題になるのは送り迎えです。送り迎えの問題は地方の話とは限りません。北九州市で塾帰りの中学生が刺される痛ましい事件もありました。15年前までは安全だと思っていたことが通用しなくなっているのです。
このオンライン併用塾の目的は「自宅学習の習慣化」です。自宅学習が継続できれば成績は上がっていきます。ただし、学習意欲の喚起と継続には、対面による学習支援が欠かせません。
直接顔を合わせて会話をする、日本版DBSの問題もありますので程度が難しいですが、ハイタッチするといった、肌の温もりを感じられることが重要です。また、クラスメイト同士で集まることで、仲間意識が生まれ、受験に「団体戦」で向かうことができます。
また、「総合学習支援産業に転身」の選択肢では、塾は「学習支援を求める者(需要)」と「学習支援ができる者(供給)」とのマッチング産業と考えます。これからは、リスキリングの需要が急増し、資格や技術がなければ就職や転職ができない時代がやってきます。18歳や22歳までの知識や技能だけで、65歳まで最前線で働くことは容易ではありません。そうしたリスキリングを目指す社会人を対象にした塾に転換する方法もあると思います。
専門塾作りのカギはワンフレーズキャッチ
塾を取り巻く状況で、私が一番気にしているのは実は少子化ではなく「寡占化」です。今塾業界には個人事業主を含め約3万社が存在しています。2017年には上位160社の売り上げが業界全体の38.9%を占めていました。それが2024年には51.1%まで増加。つまり、上位0.5%の会社と残り99.5%の会社の売り上げがほぼ一緒ということです。これだけ寡占化は進んでいます。
このような状況で、他塾と同じことをしていて生き残ることができるでしょうか。従来型の弱者の生き残り策で、規模で強者に太刀打ちするのは無理です。そこで提案したいのが、専門塾へ転換です。専門塾には、目的を持った児童生徒が集まります。英語塾なら英語に興味を持っている生徒が入ってくるでしょう。興味をあることを勉強するのですから、自ずと質の高い塾になっていきます。
専門塾作りの手順としては、まず過去3年間の塾生の住所を確認し、その市場の地域傾向を把握します。場所によってはエンジニアになる人が多いなど、その土地独特の匂いがします。次に競合塾がないか確認し、専門の中身を検討・決定します。専門塾は数学塾などの教科別のほか、年齢や目標校に絞る方法もあると思います。
次の段階がワンフレーズキャッチの作成です。自分の塾の特徴をひと言で言い表す言葉、スローガンを探してください。「ワンフレーズ・ポリティクス」と言われる、小泉純一郎氏の「自民党をぶっ壊す」、トランプ大統領の「MakeAmerica Great Again」は、人々がなんとなく考えていることをグッと掴んだ言葉です。これが広告宣伝の根幹になります。
こうしたキャッチは敵を作る一方、口コミに乗りやすい特徴があります。例えば「授業をしない塾」というキャッチフレーズを掲げた塾に対し、「授業をしない塾は塾ではない」と考える人(敵)もいるでしょう。すると、かえって口コミが広がるのです。
塾としての目的を「言語化」し、それを塾関係者が全員が行動として表すことも、専門塾化の絶対条件だと考えます。「生徒を大切にする塾」なら、授業が終わった瞬間、先生が外へ走っていき、送り迎えをする保護者に「ありがとうございます、今終わりました」と言い、生徒には「気をつけて帰ってね」と送り出す。そんな行動に落とし込んでいく方法もあるでしょう。定型的なもので構いませんが、それがやがてその塾のスタイルになっていきます。
これからは、専門性がより重要視されるような時代がやってくると思います。専門性が生き残る唯一の道ではありませんが、近道であると考えてもらえたらと思います。
第一部の閉会の言葉は、埼玉県私塾協同組合理事長の川邉洋一氏。「今日のお話を伺い、時代に合わせて変わっていかなくてはいけないと思いました。そのような気持ちで来年も邁進していきたいと思います」と締め括った。
第二部の懇親会は埼玉県私塾協同組合の「年末情報交換会」と合流。また、全国学習塾合同会議との共催で「合同忘年会」としても開催された。
懇親会では、元静岡県私塾協同組合理事長の長沼滋氏、元茨城県私塾協同組合理事長の布浦万代氏、埼玉県私塾協同組合理事長の川邉洋一氏、東京私塾協同組合理事長の鈴木幸広氏、神奈川県私塾協同組合副理事長の伊藤直樹氏の紹介が行われた。全国学習塾協会副会長の稲葉秀雄氏が挨拶に続き、NPO塾全協全国会長の内藤潤司氏が乾杯の発声を務め、和やかに会がスタートした。






































