• Home
  • 新着情報
  • 私教育を1つの力に
    自分を知ることからすべては始まる 本当の教育とは何か

私教育を1つの力に
自分を知ることからすべては始まる 本当の教育とは何か

2026-02-02
作家 髙嶋哲夫 氏

作家 髙嶋哲夫 氏

僕と核融合、そして教育

昨年一年は、僕にとって考えさせられる年だった。作家としてデビューして30年近くになるが、初めて一冊も本を出さなかった。いや、出せなかった。だが、何もしていなかったわけではない。むしろ例年以上に忙しく、各地を飛び回り、多くの人に会い、話を聞き、考え続けていた。そのきっかけとなったのは、2025年1月8日の新聞記事だった。
「核融合」に関する記事である。大学・大学院、そして就職した日本原子力研究所では、当時、世界一の核融合実験装置、JT-60の研究開発に加わっていた。20代前半の学生にとっては、「地上に太陽を」という言葉は、魅力的で衝撃的で、生涯を捧げてもいいと本気で思っていた。

挫折と第二の人生

僕は科学者を志していた。だが、より広く力強い世界で羽ばたこうと、原研を退職してアメリカの大学に留学した。しかし、待っていたのは挫折だった。努力だけでは越えられない壁があり、科学者として世界の最前線でやり続けるだけの才能や適性が、自分にはないことに気付いたのだ。その現実を受け入れるのは簡単ではなかったが、僕は運が良かった。周りに作家志望の友人が複数いて、彼らの小説原稿を読まされるうちに、「これなら自分にもできる」と思えたからだ。
科学者に求められる能力と、小説を書くための能力は異なる。僕は想いだけは理系人間で、作家になるための勉強をしたこともなく、本を大量に読んできたわけでもなかった。要するに興味がなかったのだ。むしろ、作文は嫌いだった。ただ、バラバラな物事を頭の中で組み立て、形にしていくことには自信があった。科学者としては能力不足だったが、表現者としては、多少の資質があったのだろう。

教育の重要性

大学をドロップアウトして日本に帰国してから、生活のために学習塾を始めた。「教育」に初めて本気で、向き合うことになったのだ。子どもたちを見ていて強く感じたのは、実に様々な子どもがいるということだ。だが、世間、学校、保護者の評価は画一的だった。「できる、できない」「点数が高い、低い」という基準だけ。何が得意で、何が苦手なのか。何が好きで、何が嫌いなのか。学校や保護者はもちろん、子ども自身も分かってはいなかった。
日本の教育システムは、「自分を知る」ことよりも、「知識を得る」ことに重点を置いている。アメリカにいた頃、日本の教育は世界一だと信じていた。しかし、実際に内から教育を見るようになり、考えが変わった。アメリカの教育は、大雑把でいい加減な面が多い。しかし、多様性に満ち、何が育つかわからない「未知数」を許容する土壌がある。日本は、均質で優秀な人材を育てるには向いているが、個性を見つけ伸ばす仕組みが弱い。つまり発展途上国用の教育なのだろう。

才能の多様性

帰国後すぐに、『アメリカの学校生活』『カリフォルニアのあかねちゃん』という二冊の本を出した。アメリカの教育システム、教育の精神をまとめた本だ。学習塾をやりながら、教育についていろいろと考えた。
その後、ある小説の賞を取り、作家としてデビューした。執筆が忙しくなり、学習塾は続けられなくなったが、教育の重要性についての思いは、むしろ強くなっている。教育とは、単に知識を教えることではない。何よりも大切なのは、「自分を知る」手助けをすることだ。
気がつけば30年近く作家の仕事を続けてきた。忙しい日々だったが、「イヤだ」「辛い」「辞めよう」と思ったことは一度もない。自分に向いている仕事だったからだろう。
自分を知るとは、万能になることではない。神様は平等ではない。勉強、音楽、芸術など様々な才能がある。人にはそれぞれ、得意なことと不得意なことがある。であれば、得意なものを伸ばせばいい。嫌いなものは嫌いでいい。無理して好きになる必要もない。さらに言えば、「優しさ」「器用さ」「辛抱強さ」といった性質も、立派な個性であり才能である。問題は、それを社会が正当に評価しないことだ。

自分を知る重要性

自分を知らないまま進学や就職をすると、せっかく苦労して入った高校や大学、会社であっても、早期に退学、退職することすらある。自分を知らないままに進路を選び、あるいは選ばされてきた結果なのだ。しかし彼らは幸運なのだ。比較的、早期に少なくとも自分の嫌いなモノ、好きになれないモノから逃げ出すことが出来たのだから。彼らも不登校、不登社の一人なのだろう。「まったく分からない数式の前に一時間以上座っているのは苦しい。いくら待っても、神様は下りてこないこともある」これは僕が得た経験からの教訓。
だからこそ、本当の教育とは、子どもの好きなもの、得意なものを見つける手助けをし、それを伸ばす環境を整えることだと思っている。これは学校だけでできることではない。家庭、地域、社会全体で関わる必要がある。まずは私教育からでもいい。できるところから始めればいい。

40年余りの空白 再び核融合

2026_02_p43_medal2

さて、僕自身のことに戻ろう。科学者になるのを諦めて、40年以上が過ぎた。しかし、核融合という言葉には、身体が反応する。今も特別な思い入れがある。2022年、ある政治家の新聞記事を読み、「それは違うのではないか」と感じ、反論のエッセイを書いた。核融合の商業化など数十年早い。核融合の達成のためには、温度一億度、密度100兆個/cm3のプラズマを1秒間磁場の中に閉じ込めなければならない。しかし僕にはそれ以上のことは何も書けなかった。僕の知識は40年以上前のものだ。
3年後の昨年1月、やはり核融合に関する新聞記事を読んだ。「2030年代初頭の送電開始を予定」「工業団地に商用炉建設」「米核融合新興企業、バージニア州で」本当だろうか。「出力約40万キロワット」「MITの研究成果を基にした世界最大級の核融合スタートアップ」「20億ドル以上の資金調達」と続いている。
30年代初めに商業炉が稼働する可能性が、現実味を帯びてきたという内容だった。

新しい世界と教育

改めて核融合について調べ始めた。久しぶりに、「地上に太陽を」という言葉がよみがえり、心が揺さぶられた。再び核融合に向き合うようになったことには、運命的なものを感じている。かつて研究者として挫折し、作家として生きてきたからこそ、今は違った視点で核融合を見ることができる。今年3月には、新書『核融合発電の衝撃』(仮)をPHP新書から刊行する予定だ。原研での研究でもらった「原子力学会技術賞」のメダルは、今も僕の宝物だ。
今後も僕は作家の目で核融合を、そして他の最先端技術を見続けていきたい。専門家とは違う見方、感じ方、伝え方があると信じている。
教育も同じだ。自分を知ることから、すべては始まる。それは、子どもにとっても、大人にとっても同じだ。教育とは、「自分を知る」ための時間と場所を用意し、手助けすることだと思う。

作家 高嶋哲夫 氏

教育関係の著作「いじめへの反旗」(集英社文庫)「アメリカの学校生活」「カリフォルニアのあかねちゃん」「風をつかまえて」「神童」「塾を学校に」「公立学校がなくなる」など多数。https://takashimatetsuo.jimdofree.com/


東進ハイスクール


PICK UP


                         城南進学研究社
                         塾エイド
                         Formaid
                         スポーツマネジメント通訳協会
                         ベスト塾
                         FLENS
                         コエテコbyGMO

全国学習塾協会ITコンソーシアム塾ツール

河合塾One

東京保健医療専門職大学

琉球リハビリテーション学院

麗澤中学・高等学校

麗澤瑞浪中学・高等学校

つくば開成学園

コンパス

塾シル!

レキシとコトバの先生

塾ナビ

家庭教師

中国語資格HSK 中国政府公認・世界共通規準

塾と教育 twitter


塾と教育

株式会社 塾と教育社
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン807
Copyright © Juku To Kyoiku Sha. ALL Rights reserved.