
NEA 教育アライアンスネットワーク
2025オープン教務セミナー
入塾説明会・保護者面談をアップデート
「この塾なら!」と思われる環境作りと関わり方のコツ
11月5日(水)、(一社)教育アライアンスネットワーク(NEA)によるオンラインセミナーが開催された。登壇者はNEAの理事でもある、(株)サイタコーディネーション 代表 江藤 真規氏。子育て支援や保護者のエンパワメントを専門とし、学習塾と保護者をつなぐ家庭学習支援などの活動を精力的に行う。
セミナーでは保護者対応の基本的なスキルをはじめとして、入塾説明会・保護者面談に焦点を当てた対話の事例やアドバイスが紹介された。いまどきの保護者に「この塾ならわが子の未来を本気で考えてくれる」と思ってもらうための工夫やコミュニケーションで留意したい点など、参考になるエッセンスが詰まっている。
保護者対応の基礎的スキル 共感的理解と質問力がカギ
「保護者が置かれている環境をマクロで捉えた上で、子育て家庭に対する認識をアップデートし、時代は〝子育ての社会化〟に向かっていることを理解する必要があるでしょう」と江藤氏は警笛を鳴らす。
「教育に意識が高い家庭でも、もはや学歴だけで子どもの幸せを測りきれないことを十分察知しています。小学生の放課後の過ごし方は保護者の判断に委ねられ、多様な習いごとや家庭学習のコンテンツがある中で、〝家庭ではできないこと〟をすべテーブルの上に並べた上で、〝我が子に合うものを納得した上で決めたい〟、こんな家庭が増えていると感じます。
学習塾は選択肢の1つですが、保護者のニーズはより複合的になってきており、選ばれるためには手立てが必要です」
保護者対応の基礎的スキルの前提として強調するのは、〝やっているつもり〟からの脱却だ。
「保護者の価値観が変わる中で当たり前を見直し、塾内でチーム力を高める。そのために、スタッフ間で保護者対応への共通理解を促進していただきたいと思います。釈迦に説法ですが、保護者対応の基礎的スキルの1丁目1番地は、傾聴です。〝できているつもり〟を防ぐために、〝保護者対応チェックリスト〟の活用が非常に有用となります」
保護者対応の基礎的スキルを次のように説明する。
「まず、共感的に聴くスキルは効果絶大です。保護者の状況や立場に関して共感的に理解できるようになると、保護者にとって大きな安心材料になります。感情や状況、価値観に共感していることが伝わるように聴くことが求められます。
質問をする際には、保護者の心の中の非言語の部分まで聴き、気持ちの言語化のサポートをすれば、相手に気づきを与えることができたりします。事情聴取ではなく、必ず答えられるもしくは思わず答えたくなるような質問を工夫してみてください。
保護者の意図を具体化するためには、チャンクダウン『そのためにはどうしたらいいでしょう?』、チャンクアップ『それができたらどうなりそうですか?』、スケーリング『何があったら5%前進できそうですか?』、スライドアウト『他には何かありますか?』といった質問が効果的です。〝相手のための質問〟を意識してレパートリーを増やしてみてください。ロールプレイングがおすすめです」
入塾説明会は奇跡の出会い ゴールの具体的な設定を
集客に関して危機感を持ってさまざまな新しいチャレンジのみならず、保護者に対するトークのトレーニングも重視するべきだと話す。
「塾を訪問してくれた保護者に対して、10年前と同じトークを展開するのは非常にもったいないと思います。保護者の子育て感や情報収集の方法、塾選びの基準も変化している中で、入塾説明会はまさに〝奇跡の出会い〟だと認識して、保護者へのファーストアクションをぜひ見直してください。
キーワードは〝第1印象〟です。保護者のリアルな訪問はすべてを見られる機会です。何をお伝えしたらよいのか、どんな気持ちで帰っていただくのか、どんな情報を引き出すのかというゴールを具体的かつ明確に設定していただきたいと思います」
そして、入塾説明会で行うべき3つのポイントを挙げた。
「第1に保護者のニーズを探ること、第2に家庭以外だからできる体験を伝えること、第3に可能性への期待を高めることです。
保護者は塾の概要を下調べ済みですから、お子さんの部活や得意科目などを話のきっかけとして、保護者の勉強に対する考え方や子どもの長所などを話してもらうとよいと思います。また、『塾ではこんな時間が過ごせる』とか、『こんな成長があり得る』と、実際の塾生の姿や変化を伝え、さらに3か月先や半年後の見通しを含めて保護者の心に期待を届けることが重要です。
どんな講師がどんな思いで指導をしているか、またこんな新しい出会いがあるということをエピソードとともにお伝えできると保護者は期待が膨らみます」
〝課題を期待に〟変える場 保護者面談を見直そう
「保護者面談は安心感とともに、課題解決の姿勢を示すことが不可欠」と語る。
「保護者面談は、『成績が低迷しているけど大丈夫?』という保護者の不安を払拭し、『この塾をもう少し信じてみよう』と改めて塾の価値を知っていただく場です。
塾内における子どもの様子や頑張りなどのエピソードを綿密に準備しておいてください。そして、課題を探って可能な限り解決に向かう姿勢を示した上で、先生として一線を引きながらも保護者へのねぎらいの姿勢が大切です。
いまはまだ結果が出ていなくても、どんな状況でどこに向かっているのか、どんな努力をしてどの段階にあると具体的に伝えると、保護者は納得されます。過去の類似する体験談や事例を提示すると、より建設的な面談となります。また、保護者は子どもを褒めるのは得意ですが、叱ることは苦手です。
『私の代わりに叱ってほしい』という要望が存在することも事実です」
最後に保護者面談の事例が2つ紹介された。
「『塾の宿題をやらない。でも、先生から叱られない』と言われた場合、まずは保護者の気持ちを汲み取って『ご心配をかけてしまいました』とひと言添え、本人に任せている理由や少し宿題を控えていた理由を説明するのが効果的です。
また、『辞めたい』と面談で告げられた場合には、相談だと受け止め、〝辞めたい〟の背景にある具体的な課題を引き出すよう、対話をしてみてください。その上で、塾でできるサポートをお伝えできればいいと思います」
保護者との関わりは先生の中にコツや勘として形成され、暗黙知化されていきがちだ。しかし、チームで共有して形式知に置き換えることができれば、それは大きな財産となる。
「保護者との関わりは事例検討に尽きます。ロープレや失敗の共有にこそ、意味があります。クレームは保護者対応力強化の最大のチャンスです。どうすればよかったのかを共有し、可視化していくことが塾の真価につながります。
保護者対応にはカウンセリングマインド『一緒に解決しましょう』とコーチングマインド『一緒によくしていきましょう』が必要です。つまり、受容と共感です。『この塾はわかってくれる』を起点に、『ここならわが子を任せられる』という未来へと進んでいただきたいと思っています」

































