
全国学習塾協会 塾の日シンポジウム2025 名古屋大会
持続可能な社会における教育の果たす役割
公益社団法人全国学習塾協会(以下、協会)は、10月13日(祝)、ANAクラウンプラザホテル グランコート名古屋にて塾の日シンポジウム2025を開催した。このシンポジウムは、10月9日の「塾の日」にちなみ、協会が毎年全国の都市で開催しているものだ。
協会副会長今村明広氏による開会の辞のあと、会長の安藤大作氏からの挨拶があり、会がスタート。第35回全国読書作文コンクール受賞者表彰、自主基準遵守塾表彰、功労賞表彰に続き、核融合研究所工学博士高畑一也氏による基調講演が行われた。
子どもたちの笑顔を増やすために
学習塾が培ってきた知見と実践を生かし
経産省、文科省、こども家庭庁とも連携
全国学習塾協会は1988年10月、当時の通商産業大臣の許可のもと設立。2013年には公益社団格を取得し、以来、学習塾、生徒、保護者、そして働く人々のために業界の健全な発展を目指し、第三者がサービスの質や信頼性を評価し認証マークを付与する学習塾認証制度や塾におけるアルバイト従事者の利益保護と業界の健全化を図る安心塾バイト認証制度を普及・推進。塾講師に必要なスキルを体系化し、誰でも学べる講師育成・研修にも力を入れてきた。また、児童生徒の読書力・文章力・創造力を育むための全国読書作文コンクールの実施など、国や各省庁との窓口として業界の声を届ける役割も担っている。
開会の辞では、副会長の今村明広氏が、来賓および全国から来場した方々への感謝の意を述べるとともに、今大会が教育行政や地域社会との連携をさらに深めていくと述べた。
続いて挨拶に立った会長の安藤大作氏が、全国学習塾協会は37年前に開設。4月から公益社団法人として12年間、民間教育の果たす役割を広く推し進め、協会の存在価値を高めることができたと述べた。また、教育を取り巻く環境の変化に触れ、民間教育の果たす役割がますます大きくなっていることに言及。「法施行まで1年余りとなった『こども性暴力防止法』の検討会議では委員として重要な役割を担っている。公教育と民間教育の協力・連携がますます必要とされる中、学習塾が長年培ってきた知見と実践を生かし、ルール遵守の徹底とリスクマネジメントに努め、学力向上とともに次代を拓く子どもたちの笑顔を増やせるよう責務に邁進していきたい」と未来を担う子どもたちの健やかな成長と民間教育の一層の発展に尽力していく旨を語り、公益社団法人としての責務を強調した。
続いて来賓が登壇し、協会ならびに運営に携わった教育関係者、そして全国から来場した参加者への感謝の意を述べるとともに、シンポジウム開催への祝辞を贈った。
■来賓挨拶
大島 九州男氏(参議院議員 公益社団 法人全国学習塾協会顧問)
全国学習塾協会は、行政との窓口として重要な役割を担っている。文部科学省は公立高校の再建を目指し、中高一貫校の整備を進めているが、地方に人材を定着させるためには、進路という「出口」をしっかりと整えることが、地域に根ざした教育改革を実現するための第一歩となる。未来を見据えた教育を地域と一体となって推進していくことが、地域の持続的な発展につながる。協会は、こうした振興に今後も力を注いでまいります。
西川 奈緒氏(経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課課長)
社会の変化が加速する中で、子どもたちが主体的に課題に向き合い、新たな価値を創造する力を育むことは、重要な産業基盤の一つとなっている。こうした力を育むためには、学校教育に加え、民間教育機関との「共助」による多様な学びの充実が不可欠である。経済産業省では、教育現場と産業界の知見をつなぎ、未来の人材育成に向けた環境整備を進めており、両者をつなぐ「コーディネーター人材」の育成にも取り組んでいる。協会におかれては、共助のさらなる拡大と多様な学びの創出に引き続きご協力を賜りたくお願いします。
片見 悟史氏(文部科学省 総合教育政
策局 生涯学習推進課リカレント教育・民間教育振興室室長)
学習塾をはじめ、社会全体で子どもたちの教育を支える、地域のさまざまな関係者の協働が求められている。文科省は学校でなんとかしなければならないと思いがちだが、学校にいる時間は1日の3分の1ほどだ。塾で過ごす時間を含めた家庭での教育をどうしていくかが重要。一人ひとりの子どもがどういった教育を受けることが幸せなのか、塾を含め、教育の取り組みを考えていかなければならない。社会全体で子どもを育てていくというマインドの転換が必要だと思います。
久米 隼人氏
(こども家庭庁 こども性暴力防止法施行準備室室長)
教育を通じて子どもたちの未来を支えてくださっている皆様に、心より感謝申し上げます。安藤会長からは、教育の枠を超えて、困難な状況にある子どもたちに対し、地域の居場所として心身のサポートを提供されているお話をうかがっております。こども家庭庁は、『こども真ん中』というスローガンのもと、2年前に設立されました。子どもがどのような家庭環境で育っていても、自ら望む未来へと進むことができるよう、使命感をもって取り組んでいます。政策のひとつであるDBSでは、各省庁にまたがる調整を担い、施行に向けた体制づくりを主導しています。安心できる仕組みを整えることで、子どもたちの安全を守り、未来の発展へとつなげてまいります。
来賓祝辞に続いて、協会副会長中村建吾氏が祝電を披露した。
第35回全国読書作文コンクール
優秀者表彰式
功労感謝状贈呈
自主基準遵守塾表彰式
続いて、第35回全国読書コンクール優秀者表彰式が行われた。全国学習塾協会では、未来を担う児童生徒に、良書との出会いを通じて感動することの素晴らしさを体得する機会を提供し、豊かな感性を育むとともに、その感動を文章で表現することで、読書力・文章力・想像力の向上を図ることを目的に、毎年このコンクールを開催している。今年は、小学生の部・中学生の部からそれぞれ大賞が1名ずつ選ばれ、最優秀賞には中学生の部から3名、小学生の部から4名が選出された。付き添いの学校や塾の先生方が見守る中、受賞者には賞状と盾、記念品が贈られた。
次に、全国学習塾協会が定める「学習塾における事業活動の適正化に関する自主基準」を遵守し、学習塾発展に寄与したと認められた塾に贈られる自主基準遵守塾が表彰された。協会では消費者の安心安全のために、学習塾事業を行う上で、事業者が守るべき基本事項として、適切な情報提供や適正な契約など、消費者が安心してサービスを受けるための適切な措置を講じている事業者を審査して認証する「学習塾認証」や消費者の適切な保護のための法律、その他必要とされる知識・技能を取得している個人を認定する「学習塾法務管理者」制度を設けている。学習塾認証取得が4年以上、かつ従業員が学習塾法務管理を取得している塾が表彰の対象となっている。個人情報の保護体制に対する第三者認証制度であるプライバシーマークを取得している2事業者を含め、計34事業者に賞状が贈られた。
最後は、長年、協会の運営に多大なる貢献をした役員就任経験者の表彰である。今年は、協会元理事、永井 博氏(株式会社成学社)に功労賞が贈られた。
閉会の辞は同協会副会長西本雅明氏。今後も協会のさらなる発展に努め、子どもたちの希望となるよう尽力していきたいと締めくくった。
■基調講演
核融合研究所工学博士 高畑一也 氏
海水から燃料! 持続可能な未来エネルギー「核融合」
持続可能な開発目標(SDGs)にある「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という目標は、環境負荷の少ないエネルギー源の獲得を求める世界共通の重要課題である。中でも「核融合」は、太陽や星のエネルギー源として知られている。核融合エネルギーは、まるで星の力を地上に呼び込むような壮大な挑戦だ。二酸化炭素を排出せず、海水から燃料を得ることができる理想的な未来のエネルギー源として注目されており、最近の研究はまさにその夢に一歩近づいている。本講演では、核融合エネルギーの基本的な仕組みや実現に向けた取り組みをわかりやすく紹介し、核融合がもたらす持続可能な未来社会についての展望を示すものである。
核融合とは
世の中にある、どんな物質も細かく見ていくと、原子が集まってできていることがわかります。その原子の中心にあるものが原子核です。核融合の〝核〟とは、電子とともに原子を構成している原子核のことを表しています。では、核融合とはなにか。それは、水素のような軽い原子の原子核同士がくっついて、別の重い原子核になることをいいます。くっついた時に大変大きなエネルギーが出るのです。太陽も核融合で燃えています。核融合研究は、地球に小さな太陽を作って、ミニ太陽から出るエネルギーを利用して電気を起こすことを目指しています。
核融合発電と原子力発電の違い
水素のような軽い原子核を高い温度でぶつけて、少し重たいヘリウムのような原子核に変えてしまうことを核融合といいます。そして水素の100倍以上も重いウランのような原子の原子核を2個に割ってしまうことを核分裂といいます。原子力発電所で起こしている反応は核分裂反応です。核融合反応とはまったく異なるものです。どちらからも莫大なエネルギーが取り出せます。核分裂のエネルギーを使って電気を作る発電所は日本に30か所ほどあります。
何と何を反応させるのか
太陽は4分の3が水素からできています。太陽の中心では高い温度(1500万度)、高い密度(鉄の20倍;粒子の数が多い)の中で、水素が核融合反応を起こしてヘリウムとなり、大きなエネルギー(熱や光)を出しています。太陽は地球の約33万倍もの質量を有する巨大なガスのかたまりです。大変大きいので、核融合反応で水素が無くなるまで50億年もかかると言われています。地球は太陽より小さく、太陽のような高い密度を作ることができないので、水素で核融合反応を起こすことは難しい。そこで核融合反応が起きやすい重水素や三重水素、ヘリウムを使います。その中でも最も反応しやすいのは重水素と三重水素です。これをD-T 反応といって近い将来の核融合発電でもこの反応を使います。
なぜ燃料に水素を使うのか
太陽などの恒星の中では、水素がヘリウムになる核融合反応が起こって、光や熱を出しています。つまり星の燃料は水素ということになります。水素は一番軽い原子核で、もっとも核融合を起こしやすいため、核融合発電所でも太陽と同じように燃料に水素(重水素・三重水素)を使います。
核融合発電所の燃料は
核融合発電所の燃料は、海水中に含まれている重水素とリチウムという物質です。核融合で発電ができると、重水素0・1グラム(水3リットル分)とリチウム0・3グラム(スマートフォンの電池3分の1個分に含まれる量に相当)で、日本人一人あたりの年間電気使用量(7500キロワット時)が発電できます。
核融合発電所の燃料は海水です。現在燃やしてエネルギーを作っている石油は、取れる国が限られていますが、海水は地球上にまんべんなくあります。石油が少なくなると奪い合いが起きるかもしれませんが、海水だと、すべての国の人が争うことなく使うことができるのです。
核融合発電所を作るためには多額の費用が必要だと言われていますが、燃料は海水なので安く使うことができます。新しい超電導体が発見されるなど、科学がもっと進歩すれば、発電所を作る費用もかからなくなっていくと言われています。将来はもっと安く電気を供給できるようになるのです。
核融合反応を起こすには
通常の状態では、原子核が単独で存在することはないため、核融合反応が起こることはありません。核融合反応を起こすには、物質の状態を原子核と電子がバラバラにとなるプラズマの状態にすることが必要です。核融合科学研究所では、このプラズマについて様々な研究をしています。
原子力発電より安全
核融合発電が原子力発電より安全な点は、絶対に暴走しないことです。暴走というのは、反応が止まらず温度が上がり続け爆発することです。核融合は、核と核をくっつけることにより反応させてプラズマを燃やしますが、プラズマは燃料が多すぎても少なすぎても燃えません。これをどうやって安定させて燃やすかが核融合の難しいところです。二酸化炭素を排出しないため、温暖化への影響はありません。核融合発電は、持続可能で環境負荷の少ないエネルギー源です。
核融合研究のこれから
世界中の国々が協力して核融合実験炉(ITER イーター)をフランスで作っています。この実験炉では重水素と三重水素を使って実際に核融合反応を起こします。そしてプラズマから10分程度の長い時間、エネルギーが発生することを確かめます。ITERの次は発生するエネルギーを電気の形で取り出すことができる原型炉を作ります。これが核融合発電所の第1号となります。2045年に完成するように設計や研究を行っています。













































