
創業52年の実績を次世代へ
桐杏学園が描く幼児教育の未来
今年で創業52年を迎える老舗の桐杏(とうきょう)学園(千葉県市川市)は、かつて中学受験指導で高い実績を誇った塾だ。時代の変化と教育ニーズの多様化を受け、体制を刷新。より早期の学習基盤づくりに注力するため、幼児教育・小学校受験に特化する方向へと舵を切った。現在は市進教育グループの一員として、長年培った指導ノウハウと人材育成力を活かし、幼児教育分野で着実に成果を重ねている。伝統と革新を両立させた同塾の取り組みや小学校受験を取り巻く環境について、(株)市進ラボ 取締役 眞田 剛氏に詳しく話を伺った。
コロナ禍を契機に、私立小学校への関心が高まった
昭和48年9月、西日暮里にて創業し、幅広い層への指導を行ってきました。現在は体制を刷新し、幼児教育・小学校受験に特化した13教室を首都圏で展開しています。創業翌年6月には幼児教室を開設し、幼児教育分野でも確かな実績を築いてきました。
かつては小学校受験に縁のない家庭が多かったものの、近年は志願者が増加しています。その背景にはコロナ禍の一斉休校がありました。私立校はオンライン授業やタブレット導入などに迅速に対応し、その結果、公立校との差が浮き彫りになったのです。同じ公立校でも中学生や高校生は塾に通っている生徒も多く、学校に代わり塾がサポートできたケースもありますが、小学生はそうはいかず、保護者の不安が高まりました。
コロナ禍では受験も一時停滞しました。試験を延期・中止する学校もあり、保護者の中には「今は受験どころではない」と見送る家庭もありました。以前は対面での授業や集団活動を重視しており、塾としても対応に悩みました。やむなくオンラインでの指導に切り替えたのですが、それが後に功を奏します。少人数授業やオンライン面接練習など、新しい取り組みを進めたことで、教育活動が再開した2021年以降も、保護者の要望に柔軟に対応できる体制が整っていました。小学校受験は知識だけでなく、挨拶や姿勢、聞く態度、他者との関わり方など、日常の積み重ねが試される場です。「子どもの自由な発想に基づいた伸びやかな思考力」を大切に、家庭と塾が同じ方向を向くよう心掛けています。
生活力・思考力を育てる小学校受験の本質
近年、私立小学校の受験者は増え続けています。学習院初等科、田園調布雙葉小学校、立教小学校、早稲田実業学校初等部などの伝統校は依然高倍率が続いており、それほど増減はありません。一方で中堅校と呼ばれる学校では、施設や設備に加え、教育内容で差別化を図る動きが顕著です。国際バカロレア教育や外国語インタークラスの導入など、独自性のある教育を打ち出す学校が増え、保護者の関心が広がっています。
小学校受験で重視される、知識、思考力、表現力、人間性や協調性についてですが、文科省の教育要領にも、これらは幼児期に育むべき力として明記されています。幼児教室では学習面の指導を行いますが、日常生活でのしつけや習慣は家庭で支える必要があります。たとえば「ありがとう」と感謝を伝えられるか、順番やマナーを守れるかなど、日常の小さな行動から子どもの成長や家庭の姿勢が見えてきます。小学校受験は勉強だけでなく、生活習慣やコミュニケーション、能動的に行動する力を育てる機会でもあるのです。家庭での言葉遣いや挨拶、簡単な手伝いなどが子どもの行動に反映され、学校での評価にもつながります。ペーパーテスト、運動、絵画・制作、行動観察、面接などの試験では、生活習慣やコミュニケーション能力も含めて評価されます。幼少期に身につけた習慣は、小中高大に進んでも活きるので、家庭と学校が協力し、子どもを褒めて励まし、失敗を恐れず挑戦させることが重要です。失敗を経験することで子どもは成長し、自ら考え行動できるようになるでしょう。
受験が差し迫ってくると、間違えるのを恐れる子どもが答えを書かなくなることがあります。親が熱心になりすぎて、子どもが動けなくなってしまうこともあります。間違えても次に活かせるよう、前向きに教えることが大切です。また、授業で学んだことを定着させるには、家での解き直しが欠かせません。解き直しによって、子どもは理解し、成長します。家庭の協力なくしては成り立たない部分でもあります。
子どもの成長を支える塾の役割と保護者の関わり
家庭での時間が十分に取れない共働き家庭も増えています。だからこそ、塾のサポートが重要になります。子ども一人ひとりには個性があり、得意・不得意もさまざまです。私たちはその子の良さを引き出し、「入学後に伸びる子」を育てることを目的としています。コロナ以降はオンライン面接も増え、画面越しでの印象や声のトーン、話すテンポなど、細かく意識する練習も必要になりました。
受験準備は、保護者が自分の子育てを見つめ直す機会にもなります。試験では保護者も面接を受けるため、「どんな家庭でありたいか」を言葉にして考えることになります。こうした変化を間近で見られるのは、指導者として大きなやりがいです。一方で、情報量の増加で不安になる家庭もあります。SNSで他の家庭と比べて焦ってしまうこともありますが、大切なのは「わが子に合ったペース」を大事にすることです。子どもたちは柔軟で、最初は緊張していた子も少しずつ自信を持って発表したり、リーダーシップを発揮したりします。「先生、できた!」と笑顔で駆け寄る子どもの姿に、この仕事の醍醐味を実感します。これからはAIやオンラインツールの活用も増えるでしょうが、人と向き合って学ぶ価値は変わりません。小学校受験を通して、子どもたちが「考える力」「伝える力」「やり抜く力」を身につけ、自信を持って次のステージへ進めるよう、丁寧に支えていきたいと思います。


































