
2025年 すららネット秋季セミナー
ウィザス×リード進学塾×すららネットによる
パネルディスカッション
「10年後は学習塾は半減する?学習塾の未来地図を描く」
AIを活用したICT教材「すらら」の開発・提供を行う(株)すららネット(湯野川 孝彦代表取締役社長 東京都千代田区)は、10月25日(土)にオンラインで「すららネット秋季セミナー」を開催。「すらら」を活用して学習塾経営の最前線を走る、リード進学塾の石田氏とウィザス(第一ゼミナール)の小西氏をゲストに迎え、湯野川氏とともにパネルディスカッション形式で行われた。
学習塾を取り巻く市場環境を踏まえ、10年後の未来を予測する2つのテーマ「子どもが3割減少する中で生き残る塾の条件とは?」「塾の先生に求められる資質とは?」が掲げられた。未来を見据えた経営のヒントが散りばめられたセミナーは、多様な経営スタイルや新たな取り組みも含めて価値ある情報提供の場となった。
パネリスト
株式会社ウィザス 学習塾事業本部 教務統括部 統括 小西 邦幸 氏
プロジェクトリーズ株式会社 リード進学塾 専務取締役 石田 栄治 氏
株式会社すららネット 代表取締役社長 湯野川 孝彦 氏
(以下 敬称略)
――はじめに、自塾のご紹介をお願いします。
小西 創業50年を迎えたウィザスは、2025年春から小学生の指導を中心に「すらら」を導入し、授業と連動した家庭学習の見える化を図っています。子どもたちは「すらら」のゲーミフィケーション要素に夢中になっている印象です。今後も小学生における活用を推進し、集団指導を中心に家庭学習と確認テストのやり直しに力を注いでいきたいと考えています。
石田 リード進学塾は岐阜市で創業35年、新校舎の展開により増収・増益を続けてきました。昨今は愛知県でも校舎展開を進め、生徒数はのべ1万名を突破して、2025年も中1生から高3生までの全学年が昨対増です。〝クラシカルな進学塾〟を標榜し、社員による5教科5人の専門科目講師の指導で地域・県内の一番塾を目指して集団授業の提供を行っています。
湯野川 すららネットはICT教材開発のみならず、教育現場の課題解決に向けたコンサルテーションを担い、チャネルの垣根を越えて民間教育や学校、放課後等デイサービス、家庭学習、海外にもサービスを提供しています。
最近では「認知特性別学習教材シリーズ」を開発しました。発達障がいをはじめとした障がいを持つ子どもに向けて脳の特性による得意な学び方を診断し、自分に合った学び方ができるものです。
また、「すらら にほんご」は海外にルーツを持つ子どもたちを含めた外国人の方々が日本語を学び、インドネシアやスリランカ、エジプト、カンボジアをメインに国内外で広がりを見せています。
10年前、個人指導塾が台頭
合格実績至上主義の時代
―― 10年ほど前に見ていた未来予測を振り返ってお話いただけますか。
石田 「すらら」を本格導入した2018年頃は、教育デザインの変化についてさまざまな場面で未来予測がされていました。私自身、進学塾の定義の見直しが進むと考えて、ICTツールの研究など新しい教育の形を模索していました。
伴走できるパートナーを探す中で、中学生をメインターゲットとした反転学習による「すらら」の導入をスタートしました。新中1生から導入を開始しましたが、学年が下りていくほどICTに関するリテラシーが上がり、コロナ禍によって時代が加速度的に動いた印象です。
小西 当時は〝合格実績至上主義〟が強く、大阪エリアも合格実績のある塾が教室展開をしていました。保護者にとっても合格実績こそが塾選びの裏付けであり、〝この塾に通わせていること自体がステータス〟という感覚がありました。
石田 確かに、合格実績を誇る塾が地域で最も選ばれ、〝数は力〟が評価される時代でした。〝みんなが通う塾に通いたい〟という志向のメインストリームとなった塾に、生徒が集中していたイメージです。いまは、保護者の価値観も変わってきて子どもに合わせた多様な指導に期待が寄せられています。
昨今のキーワードは多様化
保護者の価値観も変化
――学習塾を取り巻く市場環境の変化や傾向をどのように捉えていますか。
石田 大学合格実績を見据えた高校受験のための塾選びではなく、あくまでも子どもに合った環境を選択する保護者が増えました。さまざまな教育サービスの選択肢があるため、口コミ等も含めて具体的に調べて主体的に選択しています。
もはや、進学塾は成績上位層2割だけをターゲットにするのではなく、マス層を獲得するための動きが必要です。成績向上や志望校合格という評価軸だけではなく、特に個別指導塾では挨拶や学習習慣、しつけなど、保護者は子どもの目に見える成長を期待しています。
小西 かつてのような「居残りOK」の風潮が弱くなってきたため、個別にサポートできる時間帯を設定したところ、評判は上々です。周辺の学習塾も22時まで開いているのは一部の個人塾だけで、大手塾は軒並み21時半~22時で終えています。中学受験は例外ですが、補習の多さは必ずしも歓迎されず、「日曜日の講座は辞めてほしい」という声など、顧客ニーズの変化を肌で感じています。
湯野川 高度経済成長期からいまも成長を続ける学習塾の特徴は、世代交代が円滑に進んだことでしょう。優秀な2代目が運営する塾や、企業体としてシステマティックに組織づくりを行う塾がありますが、いずれも昔と同じように見えても、実は時代に合わせて多様化に適用しています。昔ながらの創業者が経営方針を変えていない塾は、少しずつ生徒数の減少や後退を余儀なくされる傾向があります。
10年後も生き残る学習塾の条件とは?
――ずばり、10年後の〝生き残り戦略〟をお聞かせください。
石田 〝場の力〟を活かした地域の教育コミュニティや、デジタルとアナログのハイブリットのしくみをいかに作っていくか、そして最終的にどのような教育の形を目指すのかを選択しなければならないと思います。学習塾の指導領域は通塾時間だけではなく、家庭学習も含めた学習管理で差別化を図っていかなければ年々厳しくなり、成長は難しい局面となります。
一方で、塾が再評価される場面が必ずあると思います。少しピボットして通信制教育や学童など学習領域を垂直化することも生き残るための方法です。〝学習塾は何のためにあるのか〟という理念を突き詰めて、〝対面でこそ人の力が活かされる領域〟にこそチャンスがあると思います。
小西 地域や学校、行政の動きにアンテナを張って情報を集め、多様化のニーズをキャッチしながら先手を打つことが求められています。学習塾の価値は、まさしく先生に他なりません。研修システムによって人材力をいかに上げるかが、いままで以上に重要です。
湯野川 多様化の中でもキーワードの類型があります。不登校生が毎年増え続ける中で、「すらら」もフリースクールにおける導入数が伸びました。学習塾が強みを活かして学習支援型の放課後等デイサービスを担うケースも増えています。地方においては公営塾がメインになるなど、自治体との連携も1つの選択肢です。また、地域にもよっては外国ルーツの子どもたちも新しい市場になり得ると思います。
10年後の学習塾の先生に求められる資質とは?
――先生に期待される資質については、どのようにお考えでしょうか。
石田 授業だけが先生の構成一部ではなくなっています。傾聴力・共感力を持ち、寄り添って伴走しながら子どもの能力を引き出すファシリテート能力のある先生が理想です。ICTを駆使して情報を活用し、生徒一人ひとりに適した声がけが大切だと思います。
小西 デリケートな子どもが増える中で、部活や習いごと、友人関係、学校の授業に対する取り組み方など1人ひとりの情報把握が望まれています。ウィザスではコミュニケーションシートで生徒の情報を集約し、さらに講師が付箋やメモ書きなどアナログな手法で情報を常に更新し、見える化を図っています。
一方で語弊を恐れずに言えば、クラス指導をコントロールする能力や上手に叱る能力は、この時代だからこそ支持されると個人的には感じます。
湯野川 傾聴力や共感力、寄り添う力の育成は外部の手法を取り入れる手もあると思います。すららネットの新サービス「ほめビリティ」は、不登校児童生徒や発達障がいを持つ子どもと保護者の人間関係を再構築するために開発しました。
また、新しい先生像のビジョンと育成の方法論の2軸が必要です。従来評価された先生とは異なるタイプの先生が頭角を現したときに評価し、組織内の切り替えを進めるギアチェンジができなければ、旧来型の先生につぶされてしまうケースもあります。
生徒情報も生成AIに読み取らせ、1人ひとりに適した個別の接し方がでれば、先生の能力の拡張や生産性の向上、意識改革の面で今後大きなポイントになります。〝生成AIのエージェント機能〟が先生に付加され、ホスピタリティがアップする時代がおそらく来ると思います。
CXとローカルな発信力、〝対面の力〟で差別化を
――10年後に焦点を当てて、先生に求められる資質を予想していただけますか。
石田 生成AIではカバーできない領域として、1つはCX(カスタマーエクスペリエンス)といわれるような、その場に行かなければできない体験型の何かを提供することです。2つめは、地場に根差して多くの卒業生を送り出しているからこそ、地域限定の情報発信がカギとなります。3つめは、場の価値がより上がっていく時代に、いかに場の力を活かすことができるかです。
信頼できる先生に直接褒めてもらえる、あるいは子どもの心を動かす言葉を伝えること。つまり、子どもに合わせたアウトプットを意識して情報を吟味し、人間が担う部分以外はなるべくアウトソーシングする必要があると思います。
小西 学習塾の本来価値である成績向上や志望校合格にフォーカスすることが大前提です。その上で、私も〝場の力〟を確信しています。ICTや生成AIの力を見極めて、生徒・保護者のニーズの多様化に対応する新しいコンテンツを活用することが有益だと考えられます。
湯野川 先生自身が自分の能力を拡張して効率を増すために、生成AIを活用するというマインドセットの変換が不可欠です。多様化する子ども1人ひとりに向き合うことと、ビジネスとしての効率性を両立するためには、ICTを活用した「ハイテク・ハイタッチ」を目指すことが肝要です。
学習塾の本来価値の追求という面では、最終的に就労まで見据えて社会での活躍へと導いていく要素は高いニーズがあります。学習塾や高校、専門学校、大学と連動しながら、子どもたちの未来の活躍に向けた機能を提供していきたいと考えています。
――最後に、聴講者の皆さまからのご質問として多かった2つのテーマ「多様化への対応」と「人間が担う部分と生成AIやICTに任せられる部分」についてご意見をお聞かせください。
小西 低学年層からのサービス提供や学童における英語指導のニーズが高くなっています。学童に学習支援を付加する取り組みは、特に学習塾ひと筋の業態において1つのチャンスになるのではないでしょうか。
石田 バックグラウンドの部分で個別最適化したICT教材を選択するとともに、現場の講師が生成AIを活用して類題作成を効率化し、空いた時間で子どもの目を見て声をかけることは、学習塾ならではの価値提供となります。
経営層やプレイヤーなどそれぞれの立場で毛嫌いせずに活用するべきです。そして、生身の人間として子どもと対峙する時間を設けて、子どもが本当に喜ぶ言葉をかけるコミュニケーション能力を鍛えていかなければならないと思います。
湯野川 生成AIはどんなプロンプトを入れるかが重要です。プログラミング教育に代わって子どもたちに指導する時代がまもなく訪れます。2027年度より学習塾向けに、生成AIを盛り込んだ「Surala-i」をリリース予定です。
学習塾にとって生成AIは、可能な限り早くから活用した方が競争力につながります。簡単な作問や近隣の学校のテストを生成AIに読み込ませて予想問題を作るなど、少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。



































