登壇者／株式会社未来 代表　安部 映樹 氏
聞き手／株式会社すららネット マ ーケティンググループ　永田 加奈 氏

少子化が加速する中、不登校児童生徒の支援に対するニーズも高まっており、自治体によるフリースクールへの支援も強化されている。AIを活用したアダプティブな対話式ICT教材の開発・提供を行う株式会社すららネット（湯野川孝彦 代表取締役、東京都千代田区）は、企業理念「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」掲げ、学校や塾、その他の教育機関とともに新しい学びの形を創造し続けている。
今セミナーでは、学習塾経営が大きな転換期を迎えようとしている昨今、フリースクールに焦点をあて、株式会社未来の代表 安部映樹氏が登壇。株式会社すららネット マーケティンググループ 永田加奈氏が教育を取り巻く市場環境を概観し、「すらら」の活用で先駆的な不登校支援を実践する「学び舎かなえ」を紹介する。

歯止めがきかない少子化と不登校児童生徒の増加

2024年出生数は速報値で72万人、学習塾倒産は53件（前年比17.7％増）の過去最多を記録。どの塾でも集客や講師および収益の確保に課題感を感じています。一方で不登校児童生徒数も毎年伸びており、収益を上げるためには、小学校低学年くらいからしっかり囲いこんで対応していくこと、また、通信制高校やフリースクールといった学びの多様化にきちんと対応していくことが重要です。
全国の不登校児童約34万人中、学校内外に相談できていない層が4割。急激に不登校生徒児童が増え、学校でも対応が追い付いておらず、受け皿が圧倒的に足りないというのが現状です。
文科省でも、学校に戻すのがゴールにはなっておらず、不登校対策（COCOLOプラン）のもと、学びにアクセスできない子どもたちをゼロにすることを目指した「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」を推進中です。そうした中、通信制高校も進路の一つとして積極的に選ぶ生徒も増えてきています。

「すらら」導入後、コロナ禍を経て「フリースクール未来」を開校
【事例紹介】学び舎かなえ 株式会社未来 代表　安部 映樹 氏

株式会社未来 代表
安部 映樹 氏

2018年に長野県川中島駅前で個別指導塾「学び舎かなえ」を開校。今年8年目に入りました。
「すらら」導入のきっかけは、自由度の高さです。あらゆる学習教材、フランチャイズなども含め30数校研究したうえでの選択です。
2020年にコロナ禍となり、全国一斉休校が1カ月半くらいあったかと思いますが、何か助けになることはないかと思い、2021年通信制高校「川中島高等学園」を開校（提携して分校みたいな形で）。2022年には「フリースクール未来」を開校しました。
塾を始めるときから少子化については5年に1割ずつ減っていく時代になると分かっていました。塾は昼の時間帯、校舎を使ってないのがもったいないのと学校に行かない子どもが増えてきたことが相まって、通信制を始めてフリースクールも始めました。そのおかげで生徒数も直近4年間は150名以上を達成し続けています。
塾の売り上げは2021年から横ばい状態。若干減り気味で今年もほぼ変わらない。塾で年商2000万くらいです。通信制高校が1500万ほどでフリースクールが今年700万くらい、全体としては4000万。目減りせずやってきています。

フリースクール開校はどうすればいいか？

フリースクール開校は何の許可も必要ありません。名乗った者勝ちだと思っています。ただ、行政の認証を受けると助成金がもらえる自治体も増えています。
長野県は助成金とセットで認証制度を日本初で始めました。
長野県は学び型支援と居場所型支援の2つのタイプがあり、学習指導までしっかりやるというのは学び支援。
「学び舎かなえ」は日本初の長野県で学び支援型に1番に認証された日本第一号になります。

すららを活用した学習支援について

多くの不登校の児童生徒と保護者は、学習の空白や進路について不安を抱いています。皆さん、塾をやっていたら、受験対策とか学習フォローをいつもしているでしょう？
そういうノウハウをそのままフリースクールに活かせばいいんです。
また、すららは不登校の児童生徒の学習支援にぴったりだと思っています。すららの「体系図」というものを使って、生徒の現在地を一緒に確認して、学習開始箇所を決めています。分からないところはいつでも復習できるし、得意なところはどんどん先に進めることもできます。
勉強したくない、とずっとスマホをいじっていた子がすららで学ぶ楽しさに気づいて、勉強に前向きになれた子もいます。
皆さん、塾って昼間の時間は建物は空いているでしょう？フリースクールをやらない手はないと思っています。

料金設定・開校曜日・出席扱いについて

未来創りチケット この取り組みは、未来を担う子どもたちの健やかな成長を願う大人とのつながりを創るもの。この趣旨に賛同した大人が食事チケット（1枚200円）を購入。塾舎の1階にある「カフェ和」の店内に掲示。幼児から高校生まで、そのチケットを使って無料でおにぎりとみそ汁を味わうことができる。志望校に合格した子がバイトをして、最初のバイト代でチケット1万円分買ってくれたという素敵なエピソードもある。

フリースクールを何か所か見学に行ったのですが、皆さんが口をそろえて「料金は中3の通い放題コースくらいにした」と言っていたので、学び舎かなえは通い放題コースは3万5000円なので、フリースクールは3万円（税込み3万3000円）に設定しました。
学び舎かなえでは、学校がある日は基本的に開けていて、土日・夏休み・春休みはお休み。時間は10時半～14時半ですが、16時から塾をやっていて、基本的にいつ来てもOKです。
令和元年に文部科学省が「不登校児童生徒への支援の在り方について」の通知を出しました。『すらら』は出席扱いの要件を満たしている教材で、これはすららを使い続けている理由の一つでもあります。今では、学び舎かなえでは、この出席扱いは、生徒・保護者が希望すれば採択率100%です。

目標はあらゆる生徒がハッピーになれる居場所づくり

大切なことは子供たちと一緒に夢を見つけること。やりたいことが見えてくれば自然に勉強に向かいます。子供は何をしても怒りませんが、親には「子供の前では笑顔でいろよ！」と言っています。
私の目標は「あらゆる子供がハッピーになれる居場所づくり」で、今は放デイの開所を目指しています。
ここが揃うと、やっと「あらゆる子供がハッピーになれる居場所」が自分なりに作れたと思っています。