
語学市場における学研グループの成長戦略と最新動向
7月28日(月)、(株)学研ホールディングスは東京都品川区の本社にて報道機関向け説明会を開催した。同社代表取締役社長・宮原博昭氏、同社執行役員・清水修氏、同・谷口正一郎氏、(株)桐原書店代表取締役社長・門間正哉氏の4名が登壇。
学研グループ中期経営計画の柱の1つを担う語学事業について、市場動向を踏まえた全体戦略や、AIを活用したオンライン英語学習など最新の取り組みに関するプレゼンテーションが行われた。
中期経営計画「Gakken2025」
語学事業の狙い
説明会の冒頭、宮原氏は次のように挨拶した。
「学研グループの中期経営計画の中で語学事業を重視する理由、それは語学のマーケットが世界に開かれているからです。第2外国語として英語を学習する人たちが全て対象となり、教育系コンテンツの輸出を加速させる余地が十分にあると捉えています」
一方、世界の潮流は義務教育年数が12年間であるにもかかわらず、9年間に据えたまま幼児教育・保育の無償化や高校無償化を実施する日本の方針は、「子どもたちの学力の向上が見込めない」と宮原氏は鋭く指摘した。
また、「大学入試の動向に見る語学学習のニーズは、総合型選抜や学校推薦型選抜の利用が急速に拡大している中で、英語の資格取得が有利となる」と述べ、学研グループが語学を軸に特化していく方針を示した。
学研ならではのREAL Spiralで成長を目指す語学事業戦略
続いて谷口氏が登壇し、語学市場全体の環境とグループの成長戦略について語った。「語学マーケットを取り巻く環境は、円安・人口減少・グローバル化・インバウンド・AIなどさまざまな課題がある中で、海外に展開する素材として語学は欠かせない事業です。
日本企業の海外進出意欲も、コロナ禍を経て復調傾向にあります。特に、北米マーケットで再チャレンジの意欲を示す企業が非常に多く、学研のオンライン英会話『Kimini』や資本・業務提携相手であるオンライン英会話大手のレアジョブの『レアジョブ英会話』など英語研修のニーズが高まっており、アプリによる学習も拡大しています」
同社グループ調べによると、AI英会話アプリの検索は急激に増えている状況だという。
「AIはそれをサービスとして扱うケースとコンテンツとして活用するケースに2分されます。私見ではありますが、今後は後者が一般化すると予想されます。オンライン英会話市場の成熟化に伴い、今後いかに差別化を図るかがポイントとなります」
さらに、学習者のニーズの変化について、
「中高生の英語のレベルが過去最高に達し、CEFR‐B2(英検R準1級・TOEIC785)を目指すニーズが拡大している」と谷口氏は言及した。
「学研グループ全体で学習者を伴走し、AIをコンテンツとして活用する事業環境の構築を図っていく方針です。AI英会話は一般的にオンライン英会話よりも継続率が低いことが課題ですが、確実に市場規模は広がっています。まさに、オンライン英会話の再編期に差しかかっていると言えます。AIや体験型コーチング機能を付加してコンテンツを深化させることが大きな事業戦略になると認識しています」
学研グループの語学戦略は、書籍・オンライン語学・学校・塾・教室・病院・企業などチャネルの多様性が差別化の要因であり、各チャネルでプレゼンスを確保している点が強みだ。
「〝オンライン英会話〟の基盤を〝オンライン英語〟の基盤として広げ、多国籍講師を増やして差別化し、トップシェアを狙うことが重要な戦略です。さらに、学校や医療現場などグループの持つ〝ヒトの魅力〟でオンライン英語へと集客する取り組みや、TGG(TOKYO GLOBALGATEWAY)の施設において、フィジカルな体験によってリテンションを拡大する戦略を実現していきたいと考えています」
こうした既存事業のスパイラルとともに、学習者の気づき・励まし・行動・学びのサイクル〝REAL(RealizationEmpowerment Action)Spiral〟で差別化を図るとし、2030年まで新規拡大・リテンション強化・グローバル展開・事業拡大を図っていく意向を明らかにした。
高校向け英語教科書を軸にして切り拓く家庭学習DXの新時代
来年創業60周年を迎える(株)桐原書店は、高校向けに英語と国語の教科書や学習教材、小論文添削などを提供し、市販の市場以上に全国の高校に直接採択される商材が多い。昨年、(株)Gakkenのグループ子会社となった。
門間氏は、文教市場のトレンドを次のように説明する。
「高校授業料の無償化に伴い、大学受験競争が激化する中で、先んじて無償化がスタートしたエリアでは私立高校の人気が高まり、各高校では大学入試の実績強化に力を注いでいます。総合型選抜の倍率も増加の見込みで、これまで以上に学校の授業や教科書の重要度が増大しています。
大学入試における英語の重要性が増し、英検R対策意識が高まり、便利なアプリを活用する市場も増大していくと予想されます。
さらに、教材のデジタル化・個別最適化が加速し、紙の教材を中心に多様な学習形式が主流となって、AI搭載教材などの新サービスも続々と登場すると予測されます」
こうした状況を踏まえ、2026年度入学生向けに主に進学校に採択される英語教科書「Heartening New Edition」準拠のe‐ラーニングと学研のオンライン英会話「Kimini」とのコラボレーションによる、業界初のサービスを紹介した。
「学校の授業や教科書を中心とした学習の流れに、e‐ラーニングやオンライン英会話を加えることによって、より充実したものに進化させたサービスです。家庭学習の予習や復習におけるアウトプットの活動として、教科書の内容と連動したオンラインレッスンはこれまで存在しませんでした。そこで、学校の授業の延長線上に実現するオンラインレッスンを設計しました」
高校の英語教科書に完全準拠した「e‐ラーニング+オンラインレッスン」は業界初となる。
「e‐ラーニングによる予習部分は語彙の確認とリーディング練習、復習部分は単語や文法・表現の内容把握の小テストです。教科書を中心として予習・授業・復習・オンラインレッスンの流れを確立するとともに、e‐ラーニングによってインプットとアウトプットをバランスよく配置し、教科書を中心とした学習全体の流れを整理できると考えています」
新しいサービスが提供する価値は、まさに家庭学習のDX化だ。そして、家庭学習を含めた学校教育のDXを推進し、生徒の学力向上や教員の負担軽減にも両面で貢献したいと門間氏は意気込みを述べた。
「この新サービスが、紙の教材からオンライン学習への動線の確立の一端を担うと確信しています」
医療系専門人材のためのワンストップ型語学教育ソリューション
(株)学研メディカルサポート代表取締役社長を務める清水氏は、e‐ラーニング+オンライン英会話+海外研修による事業シナジーで好循環を生む最新の取り組みを紹介した。
「学研のメディカル部門の歴史は古く、医書は50年前、看護書は44年前から取り組んでまいりました。2011年には(株)学研メディカルサポートを設立し、e‐ラーニング事業をスタートしました。
現在、全国8000病院のうち、当社のe‐ラーニングシステムの契約数は約3200病院で、4割にのぼります。2011年の発足以来、14期連続売り上げ増収、12期連続増益、営業利益率は最新5年間平均で37.4%を誇ります」
英語事業展開の第1フェーズとして2025年4月、e‐ラーニング「看護英語コース」を開設し、第2フェーズは6月にオンライン英会話を開講。11月にはエストニアとフィンランドで海外研修を予定している。
「昨年3月に(株)Gakkenが発刊した書籍『医療スタッフのカンタン実践!英会話』の発行部数は、6000部にのぼります。医療従事者向け書籍でこの発行部数は異例の大成功です。これをベースに当社の実績ある主力商品『学研ナーシングサポート』に、「看護英語コース」を開設しました。
続くステップとして、オンライン英会話「Kimini」内に「看護師英会話コース」を共同開発し、開講初月には延べ約350名が受講しました。今後、一層の伸びに期待が高まります。
さらに11月には、e‐Health先進国のエストニアと地域包括ケアにおける先進国のフィンランドに海外研修を設けています」
この先ますます海外人材の採用が増える中で、コミュニケーションを重視していかなければ病院の現場は崩壊してしまうだろう。「社会貢献の意味も含めて英語事業への参入に踏み切った」と清水氏は語った。
「看護英語のe‐ラーニング+オンライン英会話は、他にはありません。ワンストップで英会話のスキルをつけ、現場で活かすことが主目的です。来年4月には、さらにパワーアップしたe‐ラーニングや、研修旅行の第2弾・第3弾を企画しています」







































