
2025年SRJ経営勉強会「競合から協業へ」の視点に
基づいてノウハウ・ナレッジ・ネットワークを活かす
6月5日(木)、(株)SRJ(代表取締役社長 柏木 理氏 東京都中央区)は、fabbit 会議室丸の内にて「グループ経営・中長期計画」や「多角化戦略」に関する会員対象の勉強会を開催した。
はじめに、柏木社長は「本日の講演で紹介されるさまざまな戦略や事例をもとに、皆さんと一緒に教育の未来を考える場となることを期待しています」と開会の挨拶を述べた。特別ゲストとして招かれたのは、昨年ウィザスグループと資本業務提携を結んだ(株)カルぺ・ディエム代表取締役社長西岡 壱誠氏。ドラマ『ドラゴン桜』の脚本監修を手がけた、いま注目の現役東大生起業家だ。
今回の勉強会では3名が基調講演に登壇した。(株)茨進(茨城県土浦市)代表取締役社長 金澤 匠時氏、(株)ウィザス(大阪市中央区)学習塾カンパニー長 堀川 直人氏、(株)学習受験社ガゼット(福岡県福岡市)代表取締役社長 吉田 知生氏による講演の模様をリポートする。
[第1部講演]
グループ間のシナジー創出と個別指導のマニュアル化を推進
(株)茨進 代表取締役社長 金澤 匠時 氏
各事業会社が単独ではなく統一感のあるグループ展開
(株)個学舎の代表取締役会長兼、(株)市進ホールディングスの執行役員を務める金澤氏。茨進は個太郎塾や市進学院のノウハウも活用し、茨城県内に165教室を展開する。
「市進ホールディングスの教育部門では、学研教室やパンセフロンティエルを導入し、小学校低学年の集客に注力しています。また、高校生専門の大学受験予備校『Oar(オール)』を新規に立ち上げて、市進予備校とともに高校生の指導に重点を置いています。既存の個太郎塾の教室内に高校生専用ルームとして『Oar(オール)』の看板を掲げたことにより、高校生の集客にも成果を上げています。
グループ全体の大方針として、〝中学受験や高校受験は大学受験のための通過点である〟という認識のもと、職員全員が大学受験に精通することを目標に取り組んでいます」
各事業会社においては市進ホールディングスの一員として、統一感のある展開と専門性を磨いた各部門のリードが最大の強みだと金澤氏は話す。
「低学年や高校生指導などグループ各社横串で連携したプロジェクトを組み、各社を代表するメンバーがプロジェクトの方針を決めます。例えば、進路指導や進学に精通している市進学院は、中学受験の指導法やカリキュラムについて全塾をリードする存在です。一方、個太郎塾を併設する市進学院では、個別指導部門は(株)個学舎のフランチャイジーとなってその方針に従う形となっています。
また、桐杏学園で小学校受験を終えた保護者に宿題を補助的に担う個太郎塾や市進学院の案内をしたりと、卒業生がグループ内に留まるように連携を強化しています」
市進ホールディングスは介護・福祉部門も含めてグループ内の人材交流や人材活用、さらにグループからキャッシュアウトさせないしくみ作りに力を入れている。自身の強みに応じて仕事を選べる利点は、採用面の強みとして大いに活かされていると金澤氏は明かした。
フランチャイズ展開
教務力向上を支える具体策
続いて、金澤氏は個太郎塾のフランチャイズの成長の軌跡を紹介した。昨今、首都圏を中心に加速度的な勢いで教室数を増加させている。
「フランチャイズ展開のカギを握るマニュアル化・しくみ化を強く意識しています。直営店の社員は先進的な実験台の場であることを自覚し、パイロット的な役割でマニュアルを作り込み、FCオーナーにそれを最大限活用いただいています。社員の独立も多く、他業種からの参入でも3か月後には開業できるシステムを構築しています」
マニュアル化の最大の目的は教務力の向上だ。授業マニュアルには、1問1問に対して教材同士が紐づけられている。つまり、「この設問が正解したら、この問題集のここに導く」というルートがすべて構築されているのだ。
「講師の力量によって宿題の量や授業の難易度にばらつきが生じることを防止するため、〝講師が勝手に動けない〟ように制約を設け生徒の学力の最大化を図るしくみ化を図っています」
マニュアル化・しくみ化の根本に据えているのは「内申アップ至上主義」と「一点豪華主義」だ。
「内申アップ至上主義は、成績データを必ず毎回集めて社員の評価にも活用する戦略です。内申アップと在籍増の相関が伴うことで、オーナーに対してマニュアル順守の説得力が増します。
また一点豪華主義とは、生徒の短期的な目標を3か月ごとに更新し、〝毎日英単語を10回練習する〟といった努力を認める取り組みです。相対評価でなく絶対評価で『ほめる』、生徒が努力するように先生が導く、これこそが塾の役割です。私たちは、努力を積み重ねた自信が生徒の財産になると信じて疑いません」
[第2部講演]
50年間の感謝を感動に「原点・創新」祖業の誇りを
(株)ウィザス 学習塾カンパニー長 堀川 直人 氏
〝強みの普遍化〟によるファン拡大で地域No.1に
ウィザスグループ全体の売上は221億円、連結売上高は前年同期比6・3%増となっている。第一学院高等学校が売上げを牽引して95億円、生徒数は1万名弱。第一ゼミナールをはじめとする学習塾カンパニーは売上げ80億円、生徒数は約2万名だ。
堀川氏は1年3か月ほど前から(株)ウィザスの学習塾カンパニー長として第一ゼミナールをはじめ5つの学習塾のマネジメントを担い、塾事業の再建に邁進している。
「着任以来、教室の美化や掲示物の工夫などよりよい学習空間づくり、競合や業界を知り情報の風通しを良くすること、そして笑顔と本気の共創を目指し、講師と社員の一体感の醸成などに意識的に取り組んできました。
50期のカンパニー運営テーマは『共創・協奏・競争』です。1/1の教育による笑顔と本気の共創、協奏はシナジー、そして地域での競争です。〝強みの普遍化〟による地域No.1の成果とファンの拡大を目指します。
極論を言えばNo.1またはNo.2でなければ生き残れないと危惧しています。特に、集団指導塾については一層厳しさを増す経営環境に切迫感を抱き、今後ますます淘汰されていくと確信しています。
〝地域の支持につながるNo.1とは何か〟を改めて考えてみると、生徒の成長をどれだけ誇れるか、そして勝てるビジョン・方針・組織を作れるか、その信念がどこにも負けないことに尽きると思います」
機能的価値と情緒的価値を高めるしくみ化に注力
2011年に創業した個別指導「まなび」は、2021年にウィザスにグループインした。グループ内の既存の個別教室も「まなび」ブランドに転換するなど教室数・生徒数ともに増加し、ウィザスグループが50周年を迎えた今年、生徒数7000名を達成した。
「個別指導『まなび』の強みはターゲティングの明確化です。ボリュームゾーンである中階層の中学生にターゲットを限定し、適正な価格帯で、教室数や生徒数、生徒自身の成長も含めて成長率をブランディングしています。
そして、ドミナント戦略で特定の地域への出店を強め、年間10~15の新規教室を展開しています。グループイン時は35教室でしたが、現在84教室にのぼります。さらに効果的な生徒募集や高品質な運営を標準化していく取り組みに力を尽くしていきます」
ウィザスグループは50期の方針を「地域No.1拠点に向けたしくみ作り・人創り(完遂文化)」と掲げる。
「学習塾における役割・価値は何か。1つは機能的価値、つまり成績を上げること。第一志望合格率がブランド力となります。2つめは情緒的価値です。これが地域No.1を決める重要な部分です。意欲喚起(成長実感)や目標設定、褒める文化、仲間の存在、生徒の知悉という情緒的価値によって、子どもたち自身が目標の達成を繰り返し、自信につながり、結果的に成績が伸びます。
相互リンクする機能的・情緒的価値を高めるしくみを構築し、生徒の満足度を上げる取り組みの見せ方や付加価値、LTVをいかに伸ばすか、さらにインナーブランディングの考え方を磨き上げることが不可欠です。
現場の意見をボトムアップさせて教務・運営・マーケティング面の改革を進めているところです。祖業の理念と矜持を胸に刻み、50年の節目に改革を推進していく考えです」
[第3部講演]
1拠点に集中投下の決断攻めと守りのブランディング戦略
(株)学習受験社ガゼット 代表取締役社長 吉田 知生 氏
ガゼット福岡は利益率20%
50万円の高単価を実現
学習受験社ガゼットは、福岡で小学校受験塾、沖縄で中学受験塾を展開する。幼児教室「ガゼット福岡」は福岡県最難関校の福岡教育大学附属小学校福岡校に21年連続No.1、単独合格者数は48名にのぼり、文字通り地域No.1の実績を誇る。
2020年時点では福岡エリアの4拠点で展開し、在籍数190名、売上げ1億1000万円であったが、2024年に1拠点に集中投下させた。これが功を奏し、在籍数は350名、売上げ1億6500万円と飛躍的な成長を遂げる。現在、利益率20%を達成し、50万円の高単価を実現している。
「もともと価格・実績ともに高くもなく低くもなく、ポジショニングマップ上は中心に近い基軸にあったため、顧客印象は薄く、経済的価値や実績で差別化ができない状況でした。そこで、横軸に模倣困難性、縦軸に希少性を定め、ポジショニングマップの右上に位置する基軸で、顧客印象の強いブランド化を目指す決断を下しました」
〝このままでは絶対に負けてしまう。すべてを打ち壊そう〟と腹をくくった吉田氏。1拠点に絞る集中戦略に出たが、模倣困難性や希少性を高めるリソースがあったわけではない。〝意識的に〟創出したのだ。
攻めの戦略と守りの戦略
単価向上はフェーズを精査
経営において攻めと守りの戦略を区分する重要性を吉田氏は強調し、「攻めの戦略が発揮されない状況を経営者自身が作ってはいないだろうか」と会場の参加者に問いかけた。
「攻めの戦略とは会社が何をしたいか=WANTです。目指すポジショニングを意思統一するためのアプローチとして〝自分事化をしくみ化〟し、模倣困難なビジネスモデルを生み出すべく専門性と独自性の高さを目指しました。
2つめのポイントは〝俯瞰的環境の構築〟です。ガゼット福岡ではブランド会議にアウトソーシングを活用しています。例えば、取締役や広報部長が責任者の場合、部下のメンバーがそれを否定するケースはほぼなく、攻めの戦略の〝~したい〟が発揮されない環境です。
ケースバイケースですが、広報サポート業者に委託した場合には、その提案に対してメンバーは驚くほど根本的な部分から否定します。つまり、俯瞰的な環境が生まれる状況となり、攻めの戦略はもちろん、効果性の検証など多数のメリットがあります」
専門性が高く独自性が低いエリアの業務を標準化することができれば、チームは強くなる。また、専門性も独自性も低いエリアの業務は、いかに効率化させるかが肝となる。
「一方で、守りの戦略も不可欠です。完遂力・効率化を目指して事業の成長性と投資判断を常に考える必要があります。成長性とは単価向上が可能か、利益率が上がるかの2点が重要な指標です」
現業で単価向上・利益率向上するためには、どのフェーズを改革して完遂するか、フェーズごとに見極めることが重要だと吉田氏は述べた。
「『メイン授業・講座』『テスト・教材』『オプション(特別講座・講習会)』の3つのフェーズに分けて考えることが有効です。例えば、毎年500円ずつ月謝をアップするために授業時間を調整したり、前期と後期で価格を変更したりする工夫が必要です。実際に、ガゼットでは読解力検定の費用は2700円×年3回として単価向上につなげています。
また、『重点指導項目』資料を顧客に配布しています。合格者と不合格者で正答率の差をエビデンスとして提示し、マザーリング資料と連動させて保護者の納得感を得た上で、ドリルの購入を呼びかけることが効果的です」
最後に、(株)SRJ取締役の松浦淳志氏が閉会挨拶を行い、「経営者は不安や迷いが尽きません。こうした学びや共有の場が非常に有効だと思います」と締めくくった。










![[左] 昨年ウィザスグループと資本業務提携を結んだ(株)カルぺ・ディエム 代表取締役社長 西岡 壱誠 氏 [右] (株)SRJ 代表取締役社長 柏木 理 氏](http://www.juku-kyoiku.com/wp-content/uploads/2025/08/2025_08_p30_nishioka_kashiwagi.jpg)


























