
AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第96回
塾は今こそ大きく羽ばたくとき
先日地方の塾から、部活が学校から地域の団体に委託されて、保護者の支払う負担が大きくなり、塾費にしわ寄せがきて困っている、という相談があった。
ここ数年生徒数の減少に加えて、指導できる教師も減ってきて、どこでも民間委託が進んでいる。さらに1学年20名もいない生徒数の学校では部活の種類が限られてしまうのが現状だ。
NHKの調査した内容の中で、「むつ☆かつ」という青森県むつ市の取り組みがあった。下北半島のむつ市の人口はおよそ5万人、そこに9つの中学校がある。それを全部まとめて希望する部活で思い切り伸ばしてやりたいという市の考えだ。放課後部活用の無料バスが運行される。生徒がやりたい部活が行われている地域クラブまで送迎する。生徒がICチップを搭載したカードでタッチすると保護者に通知が届く。保護者の送迎の負担をなくし、さらに安全を守る仕組みだ。一方指導者は経験者を口コミで探し、謝礼を支払って、指導を依頼する。
むつ市は年間2億円あまりの予算をかけて保護者の経済的な負担を部活の時と同じ月1000円に抑えている。
今年のむつ市の中学生数は1244人。7年後には1000人を割り込む想定だ。
ここまで地域が子どもたちに多様な経験を持たせたいと工夫する中では、学習塾はほとんど入り込む隙間もないだろう。
さらにこのような取り組みが全国各地で行われるようになる一方で、民間の教育機関を標榜する学習塾が駅前に多数集まって過当競争の状態を続けていていいのだろうか。激しい生徒減が起こり始めている今、学習塾はあり方を変えるときが来ていると考えている。
塾を経営されている方は、手前味噌かもしれないが、子どもを教えることが好きだ、生きがいを感じる、楽しい、などと思う教師が多い。儲かる、ほかの仕事よりずっと楽だ、などと考えて参入してきた人たちは、コロナ以降ここ数年でどんどん撤退してきている。残っている小規模塾は、生成AIの急速な浸透と生徒各自に配られたパソコンの今後の活用や、英語のスピーキングを重視した指導など従来とは異なる指導に加えて、目の前に生徒数の減少を突きつけられている。生き残るためにはどうすればいいか。
今まで続けてきた塾で、地域で生徒たちが評価してきた教科や内容(指導方針や実績)の良い面を残し、他塾で素晴らしい成果を上げてきたところとコラボして地元で安定してどこが参入してきても負けない塾づくりを目指さないか。あるいはそういう拠点つくりを仲間内、あるいはグループで作り上げていくことはできないか。
少子化の時代、学校も統廃合しているが、その学校の部活動もブカツサポートコンソーシアムを企業が立ち上げたことを利用して東京・山形・徳島など地域ごとに工夫を凝らしている。
塾はばらばらのままでいいということはありえない。公教育を支えるだけでなく、ICTの激しい変化にも対応できる人材も豊富なはずだ。
むつ市は部活で市内9校の連携を図って親の負担を少なくし、自由に交流できるように素晴らしいアイデアを考えた。その先は親が安心できる形を作ってからの学校の統廃合であろう。塾は新しい時代に向かって大きく羽ばたく時ではないか。

































