
音声ガイド&イメージ写真付き
“漢字図鑑” のような電子書籍「ミチムラ式漢字eブック」
漢字学習のねらいは使えて語彙を増やすこと
漢字の読み書きの習得は全ての学習の基礎となる。そのため小学校低学年の段階から漢字ドリルの宿題も多く、令和の時代にも漢字学習のスタイルは昔と比べてさほど変化していない。これに異を唱える「ミチムラ式漢字学習法」は、何度も繰り返し書くよりも合理的に覚えて、使える語彙を増やすために構築されている。
従来開発した『漢字カード』をさらに進化させたQRコード付き『漢字カードplus』や、タブレットでも学べる電子書籍『漢字eブック』は家庭学習に最適な教材だ。開発を手がけた、かんじクラウド株式会社・取締役会長の道村静江氏を取材した。
〝読める〟を何よりも重視『ミチムラ式漢字カード』
小学校では漢字の「書き」が重視され、「読み」の指導は軽んじられていると道村氏は問題提起する。
「1~3年生で教わる漢字は訓読みがほとんどで、その音読みができない高学年の子どもが非常に多いのが現状です。例えば、1年生で習う『男(おとこ)』『女(おんな)』の音読み『男女(だんじょ)』が、ある教科書で出てくるのは5年生、『長男の男(なん)』は6年生です。訓読みだけを覚えても、高学年の教科書に登場する漢語(二字熟語)を読むことが難しいのです。また、過去に習った漢字とつなげて〝仲間〟として覚えていくと、すっきり整理されます」
道村氏は「旧態依然とした〝書いて覚える漢字指導〟が、漢字嫌いを増幅させている」と指摘する。
「『ミチムラ式漢字学習法』は1字を覚えたら、その先いかに語彙を増やすことができるかを軸に据えて開発を進めました。『漢字カード』は両面に記載された読み方と書き方を交互に唱えて、漢字の読み書きをセットで学ぶ教材です。漢字を構成する部分ごとに分解して、リズムよく唱えて覚えられるように工夫を凝らしています」
小・中学校の9年間で学ぶ常用漢字2136字を徹底的に分析した結果、小学校高学年で習う漢字の82%、中学漢字の72%は3年生までの基本漢字と部品の組み合わせで書けるという。
読み書きが苦手な子どもに適した学習法は、道村氏が盲学校に通算28年間勤務した中で、視覚障害者の漢字学習教材を作り続けてきた経験から編み出され、唱えて覚える『漢字カード』が誕生した。
自学自習が進む電子書籍『ミチムラ式漢字eブック』
「漢字の成り立ちやつながり、留意点などを丁寧に調べ尽くしても、アナログな『漢字カード』ではスペースの都合上、膨大な研究・分析データをノウハウとして全て伝えることが難しかったのも事実です」
折しも、GIGAスクール構想によって1人1台タブレットが配られた頃、コロナ禍において道村氏は自学自習のための教材開発に心血を注いだ。それを惜しげもなく詰め込み、学校や学習塾に提供しているのが『漢字eブック』だ。
「漢字ドリルで1文字だけ何度も繰り返し書いても、使える語彙は決して増えません。『漢字eブック』は漢字を通して言葉の世界を広げるために作った電子書籍です。漢字の読み書きを音声ガイドと一緒に唱えてマスターできるように設計し、小学校で習う全1026文字を漢字辞典よりも詳しく解説しています」
成り立ちやその漢字を使う言葉・イメージ写真も網羅し、部品の組み合わせ方を目で見て、耳から聞いた音声を一緒に唱えて漢字を学ぶことができる。
「部品の意味を知ると漢字が覚えやすくなります。高学年の漢字学習をしながら、部品は低学年から何度も書いてきたものだと認識することができます。また、同音や同じ部品を使った漢字の意味を考えながら、使い方を区別するようにも導いています。イメージ写真で言葉の意味が一瞬で捉えられ、イメージしやすいのも子どもたちに喜ばれたポイントです」
50音順の他に、各教科書会社の新出順に並べたものも用意してある。操作性に改良を重ね、解説も極力シンプルに研ぎ澄まし、2021年度にはグッドデザイン賞を受賞。iPad、Windows、Chromebookでも閲覧可能だ。
また『漢字カード』にQRコードを付けた『漢字カードplus』は、『漢字eブック』の簡易版として、スマホやタブレット端末でコンテンツの一部を閲覧することができる。
真の漢字学習のきっかけを学習塾が提供できる教材
「漢字が苦手な子どもたちは耳から入った言葉をひらがなで処理しています。それを漢字に置き換えられるために漢字学習があるべきです。まずは読めること、次は使えることが重要です。使えるとは書けることではありません。漢字を認識し、頭で考えた文章や想いをこの言葉で表現しようと選択できることです。すなわち、選択するためには似たような漢字との違いを見分けられる力が必要ですし、漢字が示す意味を把握した音読み言葉の数を増やしておかなければなりません」
『漢字eブック』は、塾としてのアカウント登録が可能なLentranceで活用されるケースも増えている。また、日本語を学ぶ留学生や外国人技能実習生、海外でも人気だ。道村氏は海外在住の保護者に向けて、月に1度マルチリンガル漢字指導法研究会を実施。漢字お悩み相談も精力的に開催し、4年間で100件以上にのぼる。
「ロービジョンやディスレクシアの子どもたちにも読みやすいフォントにこだわりました。さまざまな特性のある子どもたちの中でも『ミチムラ式漢字学習法』は浸透してきました。
私が考える学び方の基本は小学校教育にあり、漢字は家庭学習の基本です。ぜひ、学習塾で漢字学習のきっかけを提供していただき、子どもたちに好きな学び方を見つけてほしいと願っています。また、『漢字eブック』に詰め込んだノウハウは漢字指導の一助にもなり得ると自負しています」
問い合わせ先
かんじクラウド株式会社
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