アジア教育ビジネスレポート EDUtech_ASIA 2024

2025-02-03

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昨年11月5〜7日、シンガポールにてEDUtech_ASIAが開催された。教育者とEdTechプロバイダーのためのアジア最大の会議と展示会。日本からのセミナー登壇者や展示企業もあり、半日かけて展示会場を周ってみた。大手製造・IT企業の教育への進出は、年を追うごとに増え、キャノン、サムスン、ハイセンス、マイクロソフト、Googleなどがブースを設けていた。そしてAI、ロボット、プログラミング、メタバース&ゴーグル、3Dプリンターなどずらりとラインナップが揃っていた。
中でも生成AIの教育利用と低年齢教育への注目が高かった。

AIと教育

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AIでは、Googleの生成AI「Gemini」への注目が断然に高かった。実際に日本の学校現場においても、安心安全に生成AIを活用できる環境づくりが始まっている。また教育だけでなく、この「Gemini」の力を借りてアップデートされた「Googleマップ」は、様々な新機能が実現され、今や私たちの生活は、AIに取り囲まれ始めている。
生成AIは今や巷に溢れかえる。Perplexityは、最新のAI技術を活用した検索エンジンであり、インターネットから最新情報を効率よく探し出し、質問に対して的確な回答を自動生成してくれる。ChatGPTは対話型AIの代表的な存在であり、自然な対話を通じて情報提供や問題解決に強い。その特徴として高い文章生成能力と柔軟な対話力があり、教育では難解な概念の説明や作文の添削に利用され、個別指導のサポートツールとして活躍している。

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語学学習の動向を調査した年次レポート「DuolingoLanguage Report 2024」によると、「ChatGPT」の利用者の伸びで、2023年は日本国内における語学学習者のうち6.1%が利用していたのに対して、2024年は10.9%と1割を超え、学習方法の中で最も伸び率が高いという。
しかし、現在のAIは事実に基づいた情報を生成できるレベルには達していない。文脈上よく用いられる前後関係の語句を並べて、もっともらしい意味の文章を作るのが現在のレベルだ。その文章も、見る人が見れば不自然な違和感を覚える。従って、AIへの過度の過信は危険だ。
AIの発展は、第1波予測AI、第2波生成AI、そして現在、第3波としてエージェントAIの時代が到来している。生成AIは汎用性に優れ、大量知識を事前学習、言葉で対話・指示、文書・画像の生成などに強みがある。エージェントAIは自律性を持ち、人の指示を作業分解、計画・実行・試行錯誤、複雑な問題を解決することまでできる。コーチング系エージェントAIにより、個々に最適な学習プランまで作ってくれるようになる。

才能か環境か

昨年に続き、遺伝子と教育を結びつける企業の出展もあった。遺伝と生活環境は、どちらが子どもの成長に影響を与えるのか。慶應大学の安藤寿康教授の研究によると、私たちの指紋のパターンや身長は、かなりの高い確率で親から遺伝しているという。確かに親子の背丈は似ていることが多い。同じように知能や学力、性格、才能のパラメータも、遺伝との相関が分かっている。例えば9歳児において、国語の学力は遺伝と環境の影響が同等で、家庭環境や教育環境が言語能力の発達に大きく寄与している。
才能も同様に遺伝子の影響を大きく受ける。一番遺伝子の影響を受ける才能の一つがなんと数学だ。数学は、遺伝子からの影響を80%も受ける一方、環境からの影響はたった20%。続いて、音楽は遺伝70%、環境30%。音楽家の家庭に生まれた子どもたちは、音楽に触れる機会が多いから才能がさらに伸びるわけだ。同様に遺伝が強いのがスポーツ(70%)。これも頷ける。続いて美術(65%)、外国語(60%)、記憶(65%)となり、これらの才能は遺伝の影響が高いものの環境も重要だと言える。アートスクールや語学学校、そして学習塾がこれらに該当する。
性格や感性も遺伝子の影響を受けるが、その程度は50%ほど。だから協調性や外向性、モチベーションや感情のコントロールなどは、意識的に伸ばすことが可能だ。今後、教育においてこの分野がどこまで関わってくるのか、とても興味深い。

アート教育の重要さ

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知育玩具(おもちゃ、タブレット)やアート教育、そしてジャングルジムやスポーツトレーニングなどのアクティビティが多く出展されていた。この分野での出展数は、日本で開催するイベントに比べてかなり多いと感じた。
「サイエンスとテクノロジーしか学んでいなければ、学んだ内容は誰もが同じになってしまう。確かにサイエンスとテクノロジーは、最適化、効率化、低コスト化といった部分には貢献するでしょう。しかし問題が非常に大きかったり、複雑だったり、例えば気候変動のような問題に対処する場合に、サイエンスやテクノロジーのような直線的な思考だけで問題を解決することは、不可能。そんな創造力を培うために、美意識とかアート思考、デザイン思考といったものが重要になってくるのではないか、と実感している」。これは台湾史上最年少の35歳で閣僚(政務委員デジタル担当)就任したオードリー・タン氏の言葉。

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STEAM教育の「A」はアート(芸術)を指し、アートは単なるお絵描きではなく、欧州では演劇が義務教育だったり、海外でのビジネススクールでもアート教育を実施している。アートを通じて子どもたちの自由な発想力や想像力を育むことができる。これにより、問題解決能力や新しいアイデアを生み出す力が強化される。そのほか、自己表現力や多様な視点や物事を多角的に捉える能力の向上が考えられている。美術の能力は、後天的に鍛える余地が十分あることは前述した通り。美術のスキルこそアートシンキングで高めることができる。そのために芸術に触れる、絵を見たり描いたりと。私も専門学校の授業にて、演劇のプログラムを始めたところだ。
世界の幼児教育市場規模は2023年に2589億米ドルで、2032年には5363億9000万米ドルに達すると予測されている(Business Research Insights 調べ)。アート教育以外にも知育玩具の細かな動きだけでなく、感覚を磨き、身体を鍛えるスポーツプログラムもあり、こちらは日本企業からの出展であった。幼児の教育は、今後ますます注目すべき分野になってくるだろう。

(経営教育研究所 今野 篤)


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