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    2024年入試 首都圏中学入試の結果と分析

森上教育研究所 私学中等教育・中学受験研究会セミナー
2024年入試 首都圏中学入試の結果と分析

2024-04-01

私立中学に魅力を感じる受験生、ますます増加

(株)森上教育研究所(森上展安代表、東京都千代田区)主催による第479回中学受験研究会・私学中等教育セミナー「2024年入試 首都圏中学入試の結果と分析」が2月19日(月)、順天堂大学7号館小川秀興講堂(東京都文京区)で開催された。
演題は第1部が「入試問題出題傾向の変化について」、第2部が「入試状況の変化をさぐる」、第3部が「受験生動向からみた今春入試大手塾分析」である。同研究所アソシエイトの高橋真実氏の司会のもと、中学入試の権威が、今年の中学入試を紐解いた。

[第1部] 入試問題出題傾向の変化について

まず、今回のセミナーの会場となった順天堂大学のアドミッションセンター(入学センター)事務室次長を務める梶原恭介氏が同大学の高大連携などについて語った。同大学は現在、関東圏を中心にした27の高等学校と連携協定を締結。出張講義などを通じ、高校生たちの視野を広げて学習意欲を高めるとともに、キャリア形成に大きく貢献している。

[国語分析]
平山入試研究所 小泉浩明 所長
地図やグラフを見て考える問題も

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小泉氏は首都圏の国立・私立中学を中心に103校の215問題を分析。問題を把握するための視点として文種、問題文のテーマ、頻出作家を割り出した。
文種は説明的文章が46.5%、物語文が41.9%を占める。テーマの頻出度は「友人(友情)」が最も多く13.9%、続いて「言語・コミュニケーション」が8.1%、次に「父母子」が5.7%となっている。
最頻出作家に関しては市橋伯一、如月かずさ、重松清、信原幸弘、真山仁、村上雅郁の6名を挙げた。
その後、「国語の『深化』と『広がり』」と題して、人間関係や事情が分かりづらいといった読みにくい問題文、興味深い問題文、2つの問題文からの出題、地図やグラフを見て考える問題が多かったことを指摘。地図やグラフを見て考える問題では「次のテレワーク人口の割合の変化に着目し、そこから読み取れることを一つあげ、四十字程度で書きなさい」という問題が大宮開成で出題されている。小泉氏はこうした問題を紹介し、中学入試に文章だけでなく資料を読み解く力がますます要求されていると述べた。
また、ことわざを問う逗子開成の問題、川端康成の「雪国」や清少納言の「枕草子」の冒頭部を問う慶應義塾中等部の問題を紹介。知識の重要性も力説した。

[算数分析]
みんなの算数オンライン 竹内洋人 主宰

取り組みづらい立体の問題も

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まず、竹内氏は豊島岡女子学園、開成、駒場東邦、栄光学園の過去8年間の合格者平均を紹介。開成の今年の合格者平均は68.6%で、昨年と比較して21.3%マイナスとなっている。開成に関して竹内氏は「開成らしい難しさであり、立体の問題は絶妙に取り組みづらく、全体として捨て問はない」と述べた。
続いて桜蔭や筑波大学附属駒場、武蔵、雙葉、灘、栄東などの難関校を中心に問題を解説。慶應義塾普通部の平面図形の問題については「このように対象図形を利用すれば解ける問題は、この学校で例年出題されています。そのため、問題を見てひらめいた受験生もいたかもしれませんが、図形を反転させると、正五角形と正三角形が出てくることに多くの受験生は気づかなかったと思います」と語った。なお、同様の問題は「算数オリンピック2006トライアル」おいても出題され、正当率は15.5%だったという。
最後に竹内氏はこの慶應義塾普通部の問題と合わせて「実力アップの糧になる受験生にぜひ解いてほしい2024入試問題」として、雙葉、香蘭女学校、栄光学園、品川女子学院中等部、巣鴨(算数選抜)、広尾学園などをピックアップ。例えば、渋谷教育学園幕張の問題に関しては「正答率の低い典型問題に少しひねりを加えた問題で構成されている。入試演習に最適」と述べている。

[社会分析]
文教大学 早川明夫 氏

読解力はすべての教科の土台になる

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全般的な出題傾向として、早川氏は「問題の難易度は昨年よりも易化の傾向にあり、難問・奇問はほとんどなし」と述べた。設問形式に関しては、正誤問題が多く、正確な知識に基づいた読み取りが必要と力説。また、一行記述の問題も含めて記述問題が出題されたのは、共学校、男子校、女子校を合わせて81%であると語った。例えば、関東大震災の「復興計画では、公園を整備することのほかに、道路の幅を広げて街並みを整備する区画整理が大規模に行われました。これらの事業を行った理由を関東大震災で多くの人が犠牲になった原因を踏まえて答えなさい」という原因・理由を問う問題が普連土学園で出題されている。
そして早川氏は主題内容の傾向として、表・グラフ、分布図、地形図、資料、絵画、写真、文章など様々な資料の読解力、考察力、批判力、さらには読み取った結果をまとめて表現する力が求められていると力説。本郷では地形図と人口、面積、府県庁所在地人口、林野率、工業生産(出荷額)総額などから、7つの府県名を応える問題が出題されている。最後に早川氏は、文章や資料の読解力はすべての教科の土台となると語った。

[理科分析]
Tサイエンス 恒成国雄 主宰

時事問題が多く出題される理科

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全体の傾向として上位校は易化、中堅校が難化していること、知識問題が減少傾向であること、思考・データ処理が増加傾向であること、出題傾向に偏りがあったことなどを語った。偏りに関しては「溶解度」「光」「音」「気象」「地質」の出題率が大幅に上がっている。「気象」については「暑さに関する問題」が増加。「地質」については「地震」が増えている。問題に時事問題が反映されているのだ。
「地震」に関して出題されたのは、東洋英和女学院、西武学園文理、攻玉社、開智など。地震の問題が多かったのは「昨年が関東大震災から100年目を迎え、9月1日の防災の日にこのことがニュースで大きく扱われたことがきっかけになったに違いない」と恒成氏は語った。9月は入試問題の作成時期に取りかかる時期と重なっているからだ。また「今年1月1日に能登半島地震が発生した時点では入試問題は完成しているはずなので、これが入試問題に影響するのは来年以降でしょう」と恒成氏は推測している。
ただし、昨年の5月5日に能登地方に発生した最大震度6強の地震は、関東大震災100年目と合わせて、今年の問題に影響していると指摘。獨協埼玉では、昨年5月5日の能登地方の地震に関する問題が出題された。
「暑さに関する問題」については昨年の猛暑の影響を受けているのではと推測。WBGT(暑さ指数)に関する問題が横浜女学院や細田学園で出題されている。
さらに恒成氏はこうした時事問題に関連して「よく問われた用語」を紹介した。「アカミミガメとアメリカザリガニ」「線状降水帯」「ヒートアイランド現象」「食物連鎖」「カーボンニュートラル」「エルニーニョ」「ラニーニャ」「ハザードマップ」「南岸低気圧」「トリチウム」「猛暑日」「酷暑日」などだ。なお「アカミミガメとアメリカザリガニ」については2023年6月に条件付特定外来生物に指定されたため、多くの中学校で出題されたという。

[第2部] 入試状況の変化を探る
首都圏中学模試センター 鈴木達也 氏×森上教育研究所 アソシエイト 高橋真実 氏

入試受験率は過去最多の18.12%

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第2部は「入試状況の変化を探る」だ。
(株)首都圏中学模試センター(山下一代表取締役社長、東京都千代田区)学校情報部の鈴木達也氏が、森上教育研究所アソシエイトの高橋真実氏と対談形式で解説を繰り広げた。
同社の推定によれば、2024年度入試の東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県を合計した中学受験者数は5万2400人(実人数)だった。過去最多となった昨年よりも200人減っているが、この1都3県で割った入試受験率は18.12%であり、過去最多を更新している。「受験生の体感としては昨年と同じくらい、厳しい入試になったでしょう」と鈴木氏は語った。そして鈴木氏は資料を示しながら、茨城県と1都3県の今年の私立中学の受験者数(延べ人数)やその増減の前年比、6年間の受験者数推移について解説。茨城県は受験者数6558人で、前年比は116.2%、埼玉県は受験者数5万3522人で、前年比は120.6%、千葉県は受験者数2万5825人で、前年比は98.8%、東京都の受験者数は12万5585人で、前年比は95.0%、神奈川県の受験者数は3万4738人で、前年比は96.3%である。
「埼玉県と茨城県の受験者数が増加した要因は、茨城県では開智望中等教育学校が、埼玉県では開智と開智未来、開智所沢がそれぞれ受験数を伸ばしたことだと考えられます。中でもこの春に開校する開智所沢中等教育学校(以下、開智所沢)は5420人もの受験生を集めました。
また、開智は昨年、若干受験者数が減りましたが、今年は1校だけで2267名も増加しました。栄東や大宮開成が揃って受験数が増えたことも、埼玉県の増加に大きく影響していると思います」
鈴木氏のこの分析を受けて、高橋氏は次のように語った。
「開智所沢には生徒さんが武蔵野線で通学できます。そのため、特に多摩地区にある学校の先生がその動向に注目していましたね」
予想以上に都内からの受験生が多く、入学者も予想を越えて都内在住者が多かったという。中央線の西国分寺駅で武蔵野線に乗り換えれば、開智所沢のある東所沢駅まで通えるからだ。
千葉県は減少したものの、その幅は大きくない。東京に近い市川市にある国府台女子学院や昭和学院、和洋国府台女子が受験者数を伸ばしている。国府台女子学院の増減率は121.6%で県内で最も大きい。
東京都では、後半の日程の受験者数が昨年に比べて減少したという。今年、最も人気を集めた男子校は佼成学園だ。増減率は140.7%である。女子校では普連土学園が163.2%、共学校では東京農業大学第一が123.0%だ。なお、足立学園、高輪、巣鴨の3校は2年連続増加している。
「2月1日午前に入試を行った学校の増減を見ると、首都圏模試の偏差値51以上の学校の受験者数の減少が目立ちます。逆に偏差値50以下の学校の増加が目立ちました。この動きは、中学受験がどんどん厳しくなっていく中で最初に合格を勝ち取り、余裕を持ってその後行われる入試に臨もうという受験生の気持ちの現れではないかと思います」と鈴木氏は述べた。
次に神奈川県の状況。男子校では昨年より減少を見せたものの、男子校ではサレジオ学院が106.4%、女子校では横浜雙葉が203.2%、共学校では桐蔭学園が127.7%の増減率である。
「来年以降、中学受験者数はやや減少に向かうというのが現時点での弊社の予測です。一方、私立中学に魅力を感じる受験生が増えてきて、受験率が高まれば高まるほど、2月1日に試験会場に向かう小学6年生の姿は増えると思います」と鈴木氏は最後に語り、「保護者の方々の口コミで私立中学の素晴らしさが広がっているので、私も受験率に関しては大きな希望が持てると期待しています」と高橋氏は述べた。

[第3部] 受験生動向からみた今春入試大手塾分析

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上位層の開成合格者が増える

第3部は受験生動向からみた今春入試大手塾分析」だ。まず、男子校から。最初にサピックス(髙宮英郎代表取締役社長、東京都渋谷区)広報・企画部部長の広野雅明氏が1名あたりの出願状況を紹介した。昨年と比較して、1月校の受験と午後の入試の利用が増えているという。受験校数平均も昨年の5・8校に対して、今年は6校に増えたと語った。
次に2月1日午前の状況について。3年間の合格者の偏差値分布を見ると、開成はサピックス生の上位層の合格者が増えていることがわかる。新校舎の完成や、海外の名門大学進学に向けた取り組みが上位層に評価されたのではないかと広野氏は語った。同じく慶應義塾普通部や駒場東邦、早稲田も上位層の合格者数が伸びている。
2月2日午前では攻玉社と高輪、2月3日午前では成城と筑波大学駒場、2月4日以降ではサレジオ学院と逗子開成が、2月午後入試では巣鴨、東京都市大学付属、獨協と佼成学園が同じく上位層の合格者数が伸びている。
広野氏は、これらの中学の人気の背景について解説した後、サピックスを卒業した生徒が答えたアンケートを紹介しながら次のように述べた。
「子どもたちがチャレンジしたいといった時、合格する可能性が極めて低くても決して止めません。目標に向けて頑張ってきた以上、チャレンジする気持ちを私たちはどこまでも大事にしたいと思っているからです」

進学した学校はすべて最高の環境

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続いて、早稲田アカデミー(山本豊代表取締役社長、東京都豊島区)教務本部・中学受験部部長の竹中孝二氏による女子校の分析へ。竹中氏は早稲アカ生小6女子の受験校数の居住地別推移、午後入試割合の推移などについて解説。その後、早稲アカの生徒の間で受験者数が増えている女子校を紹介した。その1つが2月1日午前に入試が行われる女子学院だ。今年、同校を受験した早稲アカ生が2月4日以降に併願した学校には、豊島岡女子学園、頌栄女子学院、洗足学園、渋谷教育学園渋谷、広尾学園、市川、大妻、東京農業大学第一、広尾学園小石川がある。
「女子学院のようにコロナ禍が明け面接を実施した学校があり、終了時間によっては午後入試で間に合わない学校があるため、午後をダブル出願した受験生も一定数いたと思われます」
ほかに早稲アカ生に人気があるのは、三輪田学園、横浜雙葉、香蘭女学校だ。竹中氏は、これらの女子校の入試状況や併願校について語るとともに、支持される理由についても考察した。
例えば、女子学院なら伝統ある校舎と自由な校風で生き生きとする在校生、三輪田学園なら法政大学や東京女子大学、津田塾大学との高大連携、横浜雙葉なら校長先生の思いやりのある話、香蘭女学校なら立教大学の高大連携などがあるという。
最後に竹中氏は次のように語った。
「私は、4月に新中学生になる生徒たちに受験後数学を教える機会を得ました。その時、生徒たちにこう伝えました。『これから6年間をかけてどれだけ成長できるかは、みなさんの努力にかかっています。みなさんは中学受験をやり遂げました。ですから、努力できる素質があるのです。みなさんが選んで進学した中学校は最高の環境です。笑顔で明るく元気に通い、再び努力を積み重ねて、光り輝いてください』」

まんべんなく分散して受験する傾向

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最後に共学校の分析。栄光ゼミナール(下田勝昭代表取締役社長、東京都千代田区)教務部課長の藤田利通氏が解説した。
「来年以降は、1都3県を合計すると児童数がやや減少しますが、東京都内の児童数は逆に増加していくことが予想されます。ですから入試受験率の高い状態があと4、5年は続くのではないかと思われます」
こう述べた後、藤田氏はまず埼玉県の入試状況(推定値を含む)について分析した。「日程別に見ると私が注目したのは、2月の状況です。2月の受験前年比は131・1%で倍率は5・16倍です。2月4日に埼玉県にある中学の入試がいくつかあるため、ここに県内に住む中学受験生が集まってきて、倍率が激増したと考えられます。例えば、この日には開智と、新設校の開智所沢で、開智日本橋との併願入試が行われます。これは1回の入試の結果が条件を満たせば、2校の合格が得られる特殊な入試です。ここに受験生が殺到したのです」
一方、栄光ゼミナール内で合格者平均偏差値が高まっているのは埼玉栄や青山学院大学系属浦和ルーテル学院、春日部共栄、開智未来だという。
千葉県では、市川が受験生数は減っているものの、受験倍率が上昇して非常に厳しい入試となっているという。一方、渋谷教育学園幕張や昭和学院秀英は受験生数、受験倍率ともに上昇。特に昭和学院秀英の男子に関しては、栄光ゼミナール内で合格者平均偏差値が2ポイントほど上がっているそうだ。開校2年目の流通経済大学付属柏も高い人気が続いているという。
神奈川県では受験生数が若干減少し、受験率も低下している。これは児童数減少の影響が大きいと藤田氏は指摘した。また、神奈川県の特徴は午後入試が熱いことだという。神奈川大学付属や中央大学附属横浜、青山学院横浜英和などの人気校が午後入試を実施するためだ。
東京都で受験倍率が増えているのが、早稲田実業学校中等部、青山学院中等部、中央大学附属などだ。東京農業大学第一も常に高い人気を維持。多摩大学目黒と日本工業大学駒場も受験生が増加傾向にあるという。北里大学への内部進学が可能になる順天も人気が高い。開智日本橋や広尾学園、安田学園、サレジアン国際学園世田谷、駒込も厳しい入試になっている。進学校では渋谷教育学園渋谷の特に男子が非常に高い倍率だ。
また、2026年には羽田国際が開校するなど、共学校に新しい動きが見られる。
「神奈川県や東京都の傾向を見ると、偏差値が高い学校に生徒が集中するわけではなく、まんべんなく生徒が分散して受験していることがわかります。これは早い段階で保護者や生徒が各校のホームページなどから情報を得て、自分や自分の子どもに合った学校選びができることが背景にあると思います」
こう述べた後、藤田氏は栄光ゼミナールの受験生アンケートを紹介。司会の高橋氏が閉会の挨拶を述べ、セミナーは終了した。


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