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モノグサ(株)教育関係者向けセミナー
数学教育の未来を考える AI時代の教師のあり方

2023-05-01
名城大学 教職センター 竹内英人教授

名城大学 教職センター 竹内英人教授

2023年3月25日(土)、教育関係者向けセミナーの「数学教育の未来を考える〜AI時代の教師のあり方〜」がAP新橋(東京都港区)を会場に午前10時から午後5時にわたって開催された。主催は、解いて憶える記憶アプリ「Monoxer(以下、モノグサ)」を開発・提供するモノグサ(株)(竹内孝太朗代表取締役、東京都千代田区)。このセミナーでは、数学の権威者10名が登壇。来場者は数学に関して効果的な指導法から、オンライン指導、最先端コンテンツまで様々な視点から今後の数学教育について知見を深め合った。また、最後にモノグサ(株)代表取締役である竹内孝太朗氏(以下、竹内CEO)も講演。
今回はこれらの中から、大学受験のための数学の参考書「Focus Gold」の著者であり、名城大学教職センター教授を務める竹内英人氏(以下、竹内教授)と竹内CEOの講演をご紹介する。

■竹内教授が「共通テストから見る正しい数学の学び方」をテーマに講演■

会場の様子

会場の様子

『ChatGPT』の進化に衝撃

「ここ2、3週間の新聞報道でお分かりのように『ChatGPT』から最新バージョンの『GPT‐4』が登場しました。このニュースを知って私は衝撃を受け、『教師はAIに授業を奪われてしまうのか』というサブタイトルをつけて、当初予定した今日の講演の内容を少し変えたのです」
竹内教授は冒頭でこのように述べた。「ChatGPT」は、ユーザーが入力した質問に対して自然な対話形式でAIが答える革新的なチャットサービス。アメリカのAI研究所OpenAIによって開発され、2022年11月に公開された。
「この『GPT‐4』が具体的にどのような授業をするかは後ほどご紹介します。私はこれを見て驚きました。私たち教師はまだAIに勝てますが、来年の今頃はわかりません。しかし、私たちが職を失うことはないでしょう。
まず、学力の三要素のうち『知識・技能』はデータベースの面から見ても私たちはAIに負けています。『思考力・表現力・判断力』は、まだ私たちのほうが上回っていると思いますが、近うちに抜かされるかもしれません。それくらい『GPT‐4』は進化しているのです。しかし、『学びに向かう姿勢』を生徒に身につけさせることだけは私たちは負けないはずです。これが、AIに勝つための生命線になると思います。『数学ってこんなに面白いんだ!』『先生が褒めてくれたおかげで数学が大好きになったよ』。こんな言葉を生徒から引き出せるのは人間だけでしょう」

「数学不安」から「数学ファン」へ

次に竹内教授は授業力について語った。「生徒ができなかったことができるようになったり、知らなかったことを知ったり、分からなかったことが分かるようになったりしなければ、授業力としての評価はゼロに近いと私は考えています。
私は著書の中で『数学不安から数学ファンへ』を合言葉にしています。数学が苦手な生徒は授業中に教師にあてられないかと不安を抱えています。こうした生徒の小さな努力を認め、褒めてあげて少しでも数学を好きなってもらえる授業をしよう。そんな気持ちでこの言葉を考えました。数学の教師は数学が大好きですから、問題が解けなくても、誰かに褒められなくても数学の勉強が楽しいのです。その楽しさは自分の頭で考えることから生まれます。正解や不正解ではなく、考えることに数学の一番の価値があります。いかにして自分の頭で考えられる生徒を育てられるか。いかにして生徒を学びへの自立に誘うことができるか。AIにできなくて、私たち教員ができることは、この2つを常に考えながら授業をすることだと思います」
続いて竹内教授は「GPT‐4」の機能を具体的に紹介した。竹内氏の友人が「GPT‐4」に「暗記が数学学習の敵であるのはなぜか?」を聞いたという。すると4つの項目に分けた答えが返ってきたそうだ。
例えば1つ目は「理解の欠如」。「暗記によって公式や解法を覚えるだけでは,数学の背後にある概念や理論の理解が不十分になります。これにより、数学的な思考力が育ちにくくなります」と答えたという。4つ目は「モチベーションの低下」。「過度な暗記による学習は、生徒にとって単調で退屈に感じられることがあります。これにより、数学に対する興味やモチベーションが低下し、学習効果が低くなります」と答えたという。これらの言葉が一瞬にして返ってくるのだ。
「なお、記憶アプリの『モノグサ』は暗記ではなく、解法を記憶・定着させて活用するためにつくられています」

今まで以上に私たちができることを

その後、京都大学(文系)で今年、出題された数学の入試問題の解き方について「GPT‐4」が生徒と交わした会話を紹介した。
問題は「nを自然数とする、1個のサイコロをn回投げた場合、出た目の数が5で割り切れる確率を求めよ」だ。
なお、「GPT‐4」はシステムメッセージに設定を書き込むことで、性格や個性を決められる。これは「あなたは常にソクラテス的に答える家庭教師です。あなたは生徒に答えを決して教えませんが、生徒が自分で考えることを学ぶのに役立つように、常に適切な質問をするようにしてください。常に生徒の興味と知識に合わせて質問を整理し、生徒にとって適切なレベルになるまで、問題をより単純な部分に分解する必要があります」と書き込んだ上で生徒とやりとりをした具体例だ。
生徒の「うーん、n回と言われるとよくわからない」という言葉に対して「GPT‐4」は「分かりました。では、もう少しシンプルな例として、2回サイコロを投げた場合を考えてみましょう。2回投げて少なくても1回5が出る確率はどのように計算できるでしょうか」と質問した。生徒が「難しい…」というと「GPT‐4」は「大丈夫ですよ。少し考え方を変えてみましょう」とアドバイスを始めたのである。
「『GPT‐4』は私たち教師のように『前に教えたよね?ちゃんと聞いてなかったの?』とは言いません。また、生徒に間違えを指摘されると『申し訳ありません。私の誤りです』と謙虚に認めます。さらに『その通りです。素晴らしいですね』と生徒を褒めます。『ChatGPT』は『GPT‐4』になってからここまで進化したのです。『GPT‐4』は生徒を叱ったり、上から目線で話したりしません。これなら生徒は安心できます。私は、この会話を読んで焦りを感じました。私たち教師は人間でなければできないことを今まで以上に真剣に考えなければならない時期に来ているのです」

AIの進化は、授業力向上のチャンス

そして最後に竹内教授は今回のテーマである「共通テストから見る正しい数学の学び方」について語った。まず、今年の共通テストに出題された問題を紹介。2次関数に関する①から③までの3問である。
「1時間の授業で、この3問を扱うとき、皆さんならどのような授業プランを立てるか考えてみてください。
①と②は参考書や問題集に必ず載っている『頻出問題』です。③は①と②を組み合わせて作った『応用問題』です。共通テストでは、まず『頻出問題』である①と②を問うたあとに、最終ゴールとして③を問うという流れで作られている問題が多くなっています。いわゆる『誘導問題』です。
重要なのは授業でこのストーリー性をわかりやすく教えられるかどうかです。そのためには徹底した教材研究と高度なプレゼンテーション能力が教師に求められます。共通テストは生徒をテストしているだけでなく、私たち教師もテストしているとお考えください。
これを踏まえた上でさらに大切なのは、『うちの学校の生徒のレベルでは解くのは無理だよ』というようなネガティブな発言を生徒の前でしないことです。教師がそれを口にした瞬間に生徒のモチベーションは下がります。これでは授業力は上がりません。有名な進学校でなくても、数学が大好きな生徒はいます。この3問のストーリー性に気づいた生徒に『よくわかったね。君なら気づくと思ったよ』と褒めてあげたら、その生徒の人生は大きく変わるかもしれないのです。AIにはこのように生徒一人ひとりの個性を見極めて声かけをすることはできないと思います。
数学の教師が目標とするべきなのは、数学によって人間性を育てることです。そのためには授業力をどこまでも向上させることが必要です。『GPT‐4』の誕生は、教師にとって脅威である反面、チャンスでもあります。なぜなら、『GPT‐4』に勝てるように、私たちは授業力を高めようとするからです」

■モノグサの竹内CEOが「記憶定着は数学においても有効か」をテーマに語る■

解いて憶えると、長期記憶化する

モノグサ(株) 竹内孝太朗 代表取締役

モノグサ(株) 竹内孝太朗 代表取締役

竹内CEOはモノグサ(株)を創立する前、(株)リクルートマーケティングパートナーズでスタディサプリの高校生向け組織立ち上げに携わっている。その体験を述べたあと、次のように語った。
「英語を教える先生と話すと、必ず英単語を絶対に憶えるべきだといわれます。一方で数学は英単語のように絶対に記憶すべきだとは定義されていない気がします。そこで、今日は数学と記憶定着についてお話ししたいと思っています。
スタディサプリの仕事に携わっていた頃、私には最大の課題がありました。同じ予備校の先生方の映像授業をきちんと見ているのに、成績が上がる生徒さんと上がらない生徒さんがいるのです。この差を埋めるにはどうすればいいかという課題です。
そこで私は定着の部分に課題があるのではないかと考えました。繰り返し自学自習をして、その情報をいつでも頭から取り出せる状態にしておかないと、テストで点が取れないことになると結論付けたのです。これは数学に限りません。英語でも社会でも同じであると考えました。
そこで生み出したのが、AIを活用して記憶を定着させる『モノグサ』です。最近の研究によれば、読んだり書き写したりして憶えるよりも解いて憶えた方が長期記憶化して忘れにくいとされています。問題に答えながら『何だっけ?』と思い出そうとすると脳がその情報を長く維持してくれると書かれた論文もあります。つまり、授業で『理解』し、自学自習して『定着』させ、テストで問題を解いて『活用』することで学力が向上すると考えられるのです。こうした学説に従って弊社の『モノグサ』は開発されています。
また『モノグサ』は生徒さんが問題を解く時に一人ひとりの記憶度に合わせてヒントの量を調節してくれます。ぎりぎり手が出るようにヒントを調節してくれるので、最終的にはノーヒントで解けて憶えることができるようになっています。
さらに、この日までに長期記憶化してほしいという期日を決めますと、毎日の学習計画を決めてくれますので、該当する期日には、記憶が定着している状態にすることができます」

数学にはテクニックの定着が必要

竹内CEOはこのように「モノグサ」のアダプティブラーニング機能を紹介したあと、次のように述べた。
「先ほどお話しした『理解・定着・活用』を、弊社は数学の学びの大前提だと捉えています。この3つの中で『定着』の領域に『モノグサ』は大きく貢献します。
数学の問題を解く過程を弊社では『ステップ』と呼んでいます。初見の問題を見て解ける生徒は、昔解いた問題の『論』の展開を思い出してあたりをつけるわけです。『僕はA問題やB問題、C問題、D問題を解いてきた。この問題はB問題に似ているな』と。ここで『ステップ』を『1』と『2』に分けるとすると、『たしかB問題は、あの公式を使うんだったな』が『ステップ1』です。『だったらあの公式に当てはめて解いてみよう』が『ステップ2』です。つまり、数学的重要事実である数学テクニックを『定着』させることが数学には必要なのです」
竹内CEOは、2次関数の最小値を求める問題を例に出し、平方完成がこの数学テクニックであり、これが記憶定着されていれば、問題文を読んで何から何を導くかを適切に選べ、さらにはこのテクニックを適切に使って問題を解けると述べた。
「数学において、こうした解法のひとつひとつ憶えていくことが、英語において英単語をひとつひとつ憶えていくことと同じ位置づけになるのではないかと考えています」

常に自らの力で問題を解けるように

モノグサなら数学テクニックが定着する

モノグサなら数学テクニックが定着する

その後、竹内CEOは参加者に向けて「突然ですが、きんぴらごぼうをつくれない方はいらっしゃいますか?」と質問した。
「きんぴらごぼうをつくる工程を分解していくと、そのひとつにごぼうの皮を剥く作業があります。剥くためには料理テクニックが必要です。ごぼうは繊維質なのでピーラーで皮は剥けません。『ごぼうの皮を剥く』がテストの問題文だとしたら、『ごぼうの固さを利用してゴリゴリと皮を剥く』という方法を適切に選べ、『包丁の背で剥く』という料理テクニックを思い出し、『きちんと皮を剥く』という適切な方法が使えることが正解です。
きんぴらごぼうをつくる作業において、ごぼうを輪切りにしたり、皮をむかなかったりするなど選択肢は数多くあります。『2次関数の最小値を求めよ』という問題を解くにしても、因数分解をするなど選択肢は無限にあります。その選択肢の中から、2次関数なら平方完成を、ごぼうの皮なら包丁の背で剥くという選択肢のひとつを思い出し、それを『活用』しようと思ったら失敗せずに一歩進める状態を弊社では『記憶定着』と定義したいと考えています。解法を丸暗記するというよりは、必要な武器が手にある状態にするというイメージです。
では、模擬試験や受験本番で力が出せない生徒は、どのような状態なのでしょうか。きんぴらごぼうでいえば、先生のお手本を見ながら調理実習をした後で実食し、『今度は家でもやってみよう』という状態になって授業を終えたわけです。ところが、生徒さんの一人が約2カ月後に地元の有名な割烹に行かされ、料理長に『きんぴらごぼうをつくって』と言われて戸惑ってしまいます。調味料や具材が習ったものと少し違っていてつくれないからです。これは憶えたはずなのに模擬試験の力を発揮できない生徒さんの状況と同じだと思います。ICT業界はこうした課題を解決しようと今日まで研究を重ねてきたのです」
竹内CEOはこうした生徒のためのICTツールには「戻り学習」「映像授業」「類似演習」の3つがあると語った。
「きんぴらごぼうに例えるなら『戻り学習』は、ごぼうの性質を『ごぼうの発育動画』を見て勉強し直すことです。『映像授業』は、きんぴらごぼうの調理動画を何度も見ることです。『類似演習』は、シチューやビーフストロガノフといった似たレシピの料理をつくって勉強することです。
これら一つひとつの作業工程の習得により、料理全体もスムーズになります。中でも私たちは、ごぼうを目の前に置いたら、包丁の背で皮を剥ける状態にまで生徒さんを育てられることをICTシステムの『モノグサ』で目指しています。
先生方には、生徒さんが各ステップを進めるように道筋を教え、『モノグサ』で数学の基礎テクニックを定着させて、常に自らの力で問題を解けるようにしていただきたいと思っています」

生徒が成長できる場づくりを

デジタルとアナログがモチベーションに及ぼす貢献度の違い

デジタルとアナログがモチベーションに及ぼす貢献度の違い

最後のこのセミナーのまとめとして竹内CEOは「AI時代の人間の役割」について語った。
「冒頭でお話ししたように学習の過程は『理解・定着・活用』の順に進みます。『理解』は『分かること』です。分数でいえば計算手順に納得することです。『定着』は『できること』で、分数でいえば計算を素早く行うことです、『活用』は『使えること』です。同じく分数でいえば、初見の問題で分数を使おうと思いつくことです。生徒さんが目指すゴールはこの『活用』を成功させることです。
先生方がどうすれば『活用』を成功させられる生徒さんに育てられるのか。そのキーワードが『試行錯誤』です。私はいかに良質な試行錯誤ができる場をつくれるかが、究極的な人間の役割ではないかと思っています。この試行錯誤を生徒さんに促す際に重要なのは『発問』です。『桃太郎が仲間にする3匹の動物は何?』というのは『質問』です。憶えていれば、記憶が再認・再生されます。『発問』は『質問』と違って、思考・推論を誘発する問いかけです」
「発問」には「分岐の調整」「探索の効率化」「意思決定の補助」「情報の結合」という役割があると竹内CEOはいう。例えば「分岐の調整」は素数という概念について生徒に答えさせる時、「奇数偶数で考えてみよう」とアドバイスするなど分岐を減らして生徒が考えやすくすることだ。
「先生方が生徒さんに発展的な演習をさせる時は、この4つをコントロールして一人ひとりに合った『発問』をしていくと、思考や推論ができやすいはずです」
そして新たに「GPT‐5」が登場した場合、人間が勝てるのは「理解・定着・活用」の中でも特に「理解」であり、その一つが例え話だろうと述べた。
「なぜ、今日はこんなにきんぴらごぼうの話ばかりしたかというと、相手にとって理解できる物事に置き換えて説明すると、十分に理解してもらえるからです。この『理解』と『活用』の部分は先生方のほうがAIに優るはずです。
私は今後の授業では、わかりやすさ、正しさ、面白さの面でAIと人間との勝負になると思っています。その中で、面白さが人間の専売特許になるのではないでしょうか。共感には個人差があるため、目の前の生徒をどうすれば笑わせられるかはAIには判断できないはずです」
竹内CEOは最後に「悩める場づくり」やモチベーションの重要性について力説した。
「生徒さんが主体的になるには、成功体験が必要だと思っています。それは悩んだ結果、正解に辿り着けたことから生まれます。生徒さんが悩む環境を創造した上で『発問』できれば、思考力も育成されてくるはずです。また、友人との協働や称賛、叱咤激励が生徒さんのモチベーションを高めます。AIができることはますます増えてきますが、こうした場の設定に関しては、まだまだ人間に分があると私は思っています」


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