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    受験者数が過去最多となった今年の首都圏中学入試を紐解く

(株)森上教育研究所 2023年入試 首都圏中学入試の結果と分析
受験者数が過去最多となった今年の首都圏中学入試を紐解く

2023-04-03

(株)森上教育研究所(森上展安代表、東京都千代田区)主催による第473回セミナー「2022年入試 首都圏中学入試の結果と分析」が2月18日(土)、3時間半にわたってアルカディア市ヶ谷私学会館(東京都千代田区)で開催された。演題は第1部Aが「入試問題出題傾向の変化について」、第1部Bが「入試状況の変化をさぐる」、第2部が「受験生動向からみた今春入試大手塾分析」だ。
同社アソシエイト高橋真実氏の司会のもと、大手進学塾の中学入試担当者など受験の権威が、首都圏で人気を集めた中高一貫校の増加率や問題の傾向などを解説。今年、受験者が過去最多となった中学入試を紐解いた。

第1部 A [入試問題出題傾向の変化について]

国語は読解力を試す問題が増加

第1部A「入試問題出題傾向の変化について」では、まず、国語の問題について平山入試研究所(東京都日野市)代表の小泉浩明氏が解説。首都県の国立・私立中学校を中心に75校における150に及ぶ国語の問題を分析。これらの問題の概要を把握するための視点として①文種(文章の種類)②問題文のテーマ③頻出作家があると述べた。まず①に関しては随筆が増えてきたことを指摘。②に関して、中学入試のテーマは「友人友情」が多く見られたが、この割合が今年は半分くらいに減るとともに「言語やコミュニケーション」の割合も減少したと語った。③に関しては頻出作家が古田徹也氏、伊勢武史氏、寺地はるな氏の3名が最も多かったという。
次に「国語の『深化』と『広がり』の変化」について語った。「深化」については2点ある。1点は読みにくい問題文が増加していること。出題校は、渋谷教育学園幕張や中央大学付属、早稲田などだ。この読みにくさとは「人間関係や事情が分かりづらい」「物語の設定や問題文の書き出しに違和感があって感覚的に読むのが難しい」「題材が分かりづらい、方言など表現を読むのが難しく分かりづらい」ことが挙げられるという。
「これからは読解力を試す問題が増えてくると思います。そのために今までにないような面白い問題が出題されるのではないかと期待しています」(小泉氏)
もう1点は、2つの問題文からの出題である。同じ作品から分けて出題する、あるいは異なる作品から出題して、共通の部分や違う部分を問うものだ。出題校は昨年と同数の9校。芝浦工業大学柏や市川、世田谷学園、早稲田、東洋英和女学院、洗足学園、湘南白百合学園などである。
「最後に『広がり』については文章や問題文、作家や作品の多様化が見られます。また、独立問題として思考問題数が増えてくると思っていましたが、この数は横ばい、または減少して、小問題の中で出題されるのではないでしょうか」と指摘した。

作問者の意図を読み取ることが重要

慶應義塾大学湘南藤沢中等部の条件付き記述問題

慶應義塾大学湘南藤沢中等部の条件付き記述問題

同じく国語の問題を「設問編」と題して教育研究グループ「エデュケーションフロンティア」の海老原成彦氏が解説。「新傾向問題の動向」「条件付き記述問題の多様化」「先鋭的な知識問題」「記号問題と抜き出し問題の新たなかたち」「最難関中の記述問題から考える文章読解の本質」の順に述べていった。
「新傾向問題」は、図やイラスト、それから統計資料の意味を読み取る問題や、架空の会話文を通して題材の理解を問う問題。
「条件付き記述問題」は、題材を読んだ上で自分の意見や自分の体験を述べる問題。慶應義塾湘南藤沢中等部の問題がそうであり、「問題文を読んで『この人の意見に160字以内で反論しなさい』という問題が出題されている。
「独りよがりな考えではなく、より客観性を持った説得力のある論理を構成しなければならない問題といえます。こういった問題を解くことで、学力を引き出すだけでなく、子どもの能力開発にもつながる大きな可能性があると思います」(海老原氏)
「先鋭的な知識問題」の例としては、攻玉社の問題を紹介。年賀状の『卯』『申』『子』という文字が表す動物を用いて作成できる四字熟語やことわざ、故事成語を選ぶ問題である。

攻玉社の先鋭的な知識問題

攻玉社の先鋭的な知識問題

「記号問題と抜き出し問題の新たなかたち」では、一つの選択肢が170字前後もある本郷の問題などについて解説した。
「最難関中の記述問題から考える文章読解の本質」に関して海老原氏は筑波大学附属駒場の問題にまつわるエピソードを紹介。出題された作品を書いた作家・岸田奈美氏自身が問題を解けなかったが、編集者は全問正解したそうだ。編集者は「編集の仕事は文章の一文一文に意図と効果を見つけることなので解けた」と語ったという。
「岸田さんはこの編集者の方の話を聞き、『入試問題をつくる作問者の役割も編集者のそれと同じだと思います。国語の入試問題を解くことは、作家の意図を考えるのではなく、問題を作った人の意図を読み取ることなのでしょう』とおしゃっています。受験生にもこのような読み取る力が求められていると思います」(同)

算数では「説明できる」学びを

続いて「みんなの算数オンライン」を主催し、算数オリンピックの顧問を務める竹内洋人氏が算数の問題について解説。
まず、開成、武蔵、駒場東邦、東邦大学付属東邦、渋谷教育学園幕張、豊島岡女子学園、栄光学園をはじめとする難関中の数学における受験者平均、合格者平均の2015年から2023年までの推移や問題の傾向を紹介した。
例えば駒場東邦は、合格者平均点が上昇していること、その理由が昨年の問題が難しすぎたことと述べ、トピックとしては連続する整数の和の問題の出題を挙げた。
次に2023年入試における算数問題の全体概要について。
「特に大きな変化はなく例年通りでした。多かったのは、ニュートン算の出題です。また、典型問題を少しアレンジした問題が目立ち、これが合否に直結したと思います。そして、まだまだ少ないですが、データの活用分野の問題が目に付くようになっています。これから徐々に問題のバリエーションの幅が広がるでしょう。
さらにフィボナッチ・トリボナッチ、テトラナッチを利用する場合の数の問題が減り、その分だけ、フィボナッチの剰余系問題に置き換わりました」(竹内氏)
続いて「一度は経験しておきたい問題」として鎌倉学園(算数選抜)や品川女子学園中等部のあみだくじに関する問題を、また「今年一番難しかった問題」として栄光学園のサイコロを扱った問題を紹介した。
その後、浅野、早稲田実業学校中等部、頌栄女子学院、市川、湘南白百合学園(算数1教科入試)などの問題について解説。さらに「実力アップの糧になるため、ぜひ、受験生に解いてほしい問題」として、開成や普連土学園(算数1科)、豊島丘女子学園、明治大学付属明治、栄東(東大特待Ⅰ)、東邦大学付属東邦の問題を勧めた。
最後に今後の指針として5点を挙げた。①これまで通り定番だが正答率の低い問題が合否を分けること。②「書き出す」「試行錯誤する」その経験が問われること。③入試問題特有の複雑さに早い段階から慣れておきたいこと。④立体は「切断」に加えて「影」も対策が欠かせないこと。⑤複雑すぎる算数問題に少し歯止めがかかりつつあるかもしれないので、基礎基本を正しく身に付け、人に「説明できる」学びを心がけたいことだ。

第1部 B [入試状況の変化をさぐる]

東京23区は受験熱が過熱気味

第1部B「入試状況の変化をさぐる」では、(株)首都圏中学模試センター(山下一代表、東京都千代田区)学校情報部の鈴木達也氏が、森上教育研究所アソシエイトの高橋真実氏と対談形式で解説をした。
首都圏模試センターの推定によれば、2023年度入試の東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県を合計した中学受験者数は5万2600人(実人数)で過去最多となった。過去最多を記録(当時)した昨年の受験者数は5万1100人であり、今年は1500人も増えている。なお、入試受験率はこの1都3県で割ると18%に迫る勢いであり、「中学受験が小学生にますます広まってきた印象があります」と鈴木氏は語った。この動きに対して「この追い風は地域別に見るとどうでしょうか?」と高橋氏が質問。鈴木氏は資料を示しつつ、各県の今年の私立中学の受験者数(延べ人数)や増減の前年比、6年間の受験者数推移について解説していった。なお、茨城を含めた1都3県とも今年の受験者数は過去最多である。 
茨城県は受験者数5704人で、前年比は106.4%。その背景には同県の公立中高一貫校が2022年までに全国最多の13校になり、私立中との相乗効果によって受験者数が右肩上がりになっていると鈴木氏は分析。埼玉県は受験者数4万4339人で、前年比は103.9%。6年前と比較すると約1万人の増加だ。東京や神奈川から多くの小学生が受験しに来ること、栄東の人気などを鈴木氏は増加の理由に挙げた。
千葉県は受験者数2万6118人で、前年比は106.4%。この春、開校する流通経済大学付属柏が522人の受験を集めたことも大きく影響したのではないかと分析した。
東京都の受験者数は13万1464人で、前年比は103.8%である。
「特に東京の23区内に関しては過熱気味といってもよいほどの受験熱の高さで、男子校、女子校、共学校ともに増加しています。髙橋さんは東京ではどの中学が気になりますか?」という鈴木氏の問いかけに高橋氏は次のように答えた。
「男子校では日本学園や東京都市大学付属などです。女子校では受験者数が増加した三輪田学園、共学校ではサレジアン国際学園世田谷、東京都市大学等々力などが気になりますね」

入試受験者数と受験率の推移

入試受験者数と受験率の推移

日本学園は2026年から明治大学付属世田谷に校名を変更して明大の系列校となる。鈴木氏はこの注目校と人気校である東京都市大学付属の両校が2月1日午前入試を始めたことで、入試日が重なった他校に与える影響が大きかったと述べた。なお、日本学園の今年の受験者数の前年比は536%だ。
サレジアン国際学園世田谷(旧・目黒星美学園)は、今年の春から校名変更して女子校から共学校となる。受験者数前年比はなんと764.6%だ。この学校同様に人気を集めたのが今年4月に開校する共学校の芝国際である。一方、東京都市大学等々力は進学実績の向上から今年、多くの受験生を集め、前年比が124.8%になった。

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また、都内では三輪田をはじめとする伝統的な女子校が人気であることも注目すべきだと鈴木氏は力説。高橋氏が気にしているという三輪田、そして跡見学園、恵泉女学園、実践女子学園、山脇学園の5校は受験者数が2019年に比較して2倍にまでなっている。
「SNSを活用したり、少人数の学校見学会を開催したりするなど、女子校らしいきめ細やかな広報活動が実を結んだのだと思います」と鈴木氏は分析した。
一方、神奈川は受験者が増加したものの、他県に較べて緩やかであった。その中で増加が目立ったのが、他に同じく女子校の湘南白百合学園、横浜女学院、カリタス女子、神奈川学園だという。

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共学校では、青山学院横浜英和が増加率127.4%と人気を集めた。「この背景には青山学院大学の系属校となった1期生の多くが同大に進学した実績があるのではないでしょうか」と高橋氏は語った。
続いて鈴木氏は、英語入試の受験者数などについて語った後、最後に小5合格判定模試受験者数10年推移のグラフを示しながら次のように述べた。

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「こちらも過去最高の数字で、中学受験率の高い学年であることがわかります。依然として中学受験熱の高まりは続き、来年も今年と同じぐらいの規模の受験者数になるのではないかと予想しております」
この言葉を受けて高橋氏は次のように語った。
「他の大手塾様の入塾状況も非常に好調だというお話を伺っていますので、来年も追い風が吹くと期待をしております」

第2部 [受験生動向からみた今春入試大手塾分析]

受験者が増え、厳しさを増した男子校

2月2日午前入試の受験者数推移

2月2日午前入試の受験者数推移

第2部「受験生動向からみた今春入試大手塾分析」では、サピックス広報・企画部 部長の広野雅明氏が男子校の入試と結果と分析について語った。まず、広野氏はサピックス生の今年の志願状況を紹介。午後入試の利用が非常に多くなっていることを指摘し、午後入試の上手な活用がこれから先も重要だと強調した。
そして海城や東京都市大学付属に合格したサピックス生の偏差値の3年間の比較を示し、両校の傾向や特色などについて述べた。
例えば、東京都市大学付属は偏差60以上の合格者が大幅に増え、非常に難化していると指摘。指導のきめ細かさや教員と生徒との距離の近さ、東大や国立大医学部に生徒を送り出している進学実績が保護者の立場から見ると安心できることが人気の高さにつながっていると語った。
東京都市大学付属の併願校として2月1日の午後入試を見ると、駒場東邦、麻布、早稲田、海城、開成、慶應義塾普通部といった超難関校が挙げられるという。
また、卒業生の約70%が明治大学に進学できることになった日本学園にも言及。多くの生徒が受験したが、涙を飲んだ生徒も少なくなかったと述べ、難化がこれから先も続くだろうと予測した。
次に2月2日の午前入試について解説。東京都市大学付属が今年からこの午後入試を行わなくなったため、他の男子校の受験者が影響を受けたことを指摘。その中から昨年と比べて前年比118.9%となった本郷を紹介した。特に今年、開成をはじめとする難関中と本郷を併願する生徒が増え、御三家の受け皿として、ますます成績優秀な生徒が集まっている印象を受けると述べた。
「本郷では自ら学ぶ姿勢を身に付けさせるため、中1の生徒が中2の生徒の勉強を教えるなど縦の絆も大切にしています。こうした校風が保護者の支持を得ている要因だと思います」(広野氏)
一方、神奈川県では、鎌倉学園が大勢の成績上位層の受験者を集めたという。この学校が名刹である建長寺の教育機関として自主自律の精神を大切にしている点が評価されているのではないかと述べた。
続いて、2月3日の午前入試に関しては東京都市大学付属がこの日に午前入試を新たに行ったため、多くの男子校が受験者を減らして苦戦したと広野氏は語った。ただし、逗子開成は昨年比120.3%だったという。

広尾学園小石川の受験者数や倍率の前年比較2月午後入試の受験者数推移

広尾学園小石川の受験者数や倍率の前年比較2月午後入試の受験者数推移

一方、新宿区にある成城は減少したものの、受験生のレベルは上昇したそうだ。
「私が成城の学校説明会を訪れた時、学校は駅のすぐ近くにあるのですが、それでも駅の改札口に案内表示を持った先生が立っていらしたのを見ました。男子校ではあまり見られない光景です。こうした気配りが保護者に安心感を与え、その結果、優秀な生徒が集まるのでしょう」(同)
また、今年の入試で他の男子校に最も多大な影響を与え、今後も与え続けるだのは、芝国際であると力説。同校の一般入試での実質倍率は13.4倍だった。サレジアン国際学園世田谷も芝国際には及ばないものの、一般入試の倍率は2.9倍であり、どちらも厳しい入試になったと広野氏は述べた。
一方、数ある人気校の中で受験者を減らしたのが、広尾学園小石川である。倍率が緩和され、やや入りやすくなったのではないかと期待が持たれたが、合格ラインは高まっていた。
そして最後に広野氏は数々の受験エピソードを紹介したあと、次のように述べた。
「中学受験は過酷な期間といえます。ただ、その中でお子さんたちは大きく成長します。サピックスは、これからも中学受験に臨むお子さんたちを全力で応援し、その成長に少しでも貢献したいと考えています」

女子の難関中の根強い人気が続く

その後、早稲田アカデミー教務本部長・中学受験部長の竹中孝二氏が早稲田アカデミー生を集計対象としたデータをもとに女子生徒を対象とした入試の結果と分析について語った。まず、竹中氏は全体の女子校の入試概況について解説したあと、11月に実施される帰国生入試の活用を女子の帰国生に勧めた。広尾学園小石川や三田国際、渋谷教育学園幕張などの帰国生枠の入試である。合格を手にして自信をつけて、1月からスタートする一般入試に余裕を持って臨むことができるからだ。
続いて入試の各日程別に受験率上昇校における受験生の増加数と増加率について解説した。
1月は増加数で見ると1位が開智、2位が栄東、3位が埼玉栄、2月1日午前は1位が桜蔭、2位が芝国際、3位が香蘭女学校となっている。2月1日午後は1位が芝国際、2位が品川女子学院、3位が大妻多摩だ。なお、2月1午後の増加率を見ると神奈川学園が1位となっている。竹中氏はこの神奈川学園を「学校の指導が手厚く、入学時の偏差値以上の難関大学を目指せる学校として魅力を感じてチャレンジした受験生が多かったのではないでしょうか」と分析した。
2月2日午前を増加数で見ると1位が品川女子学院、2位が芝国際、3位が白百合学園。2月2日午後は1位が香蘭女学校、2位が芝国際、3位が実践女子学園中だ。
「1位の香蘭女学校は、130年以上の歴史を誇る伝統校であり、オンライン英会話や理系教育に力を注ぎ、学年ごとの取り組みや目標がわかりやすく伝えられている女子校です。ホームページをご覧になると、こうした魅力がよくわかると思います」
2月3日を同じく増加数で見ると1位が芝国際、2位が東洋英和女学院、3位が桐光学園。2月4日以降は1位が芝国際、2位が実践女子学園、3位が淑徳だ。
「2位の実践女子学園は伝統校である良さに加えて、面倒見もよく、難関上位層の受験生の併願先として選ばれているのだと考えられます」
その後、竹中氏は御三家をはじめとする難関中の併願校を紹介しつ解説していった。
桜蔭であれば併願校は1月が栄東や浦和明の星女子、渋谷教育学園幕張など、2月1日午前が豊島学園女子学園、渋谷教育学園渋谷など、2月1日午後は広尾学園や田園調布学園、東京農業大学第一、2月2日午後が広尾学園、香蘭女学校、広尾学園小石川などである。続いて竹中氏は桜蔭や女子学院、雙葉、豊島丘女子学園、洗足学園の併願校を紹介した。こうした難関中は今年も根強い人気であり、難化を続けている。 
そして竹中氏は次のように語った。
「私たち塾はお子さんたちが胸を張って新学期を迎えられように最後の一人まで志望校に送り出したいと願っています。受験が終わったから、合否が決まったから、それで終了ではなく、人生はこれから先が重要だと考えております。中学入学後も引き続き、教育関係者の方々と心をひとつにして、お子さんたちの将来の一助になればと思っています」

倍率を高めたチャレンジ志向

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次に栄光ゼミナール教務部課長の藤田利通氏が共学校の入試の結果と分析について述べた。
「今年も全体として実質倍率は相変わらず上昇しており、非常に厳しい入試になりました。今年は難関と呼ばれる中学に果敢にチャレンジして、合格するまで何回も受け続けていく受験生が多いことが、実質倍率の向上につながったのだと思います」

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藤田氏はこのように述べたあと、各都県別の実質倍率について解説した。まず、埼玉県はやや下がっている。これは安全志向が働いたのではないかと藤田氏は推測した。首都圏の中学入試のスタートを飾る栄東の結果を一覧にすると、1月10日・11日に実施されるA日程入試では男子1.4倍、女子1.5倍、11日は男子1.8倍、女子2.0倍である。
「A日程を受験した栄光ゼミナール生が学ぶ教室分布を見ると、10日は東京の生徒が圧倒的に多く、11日は埼玉県の生徒が多いことがわかります。
県内の受験生が10日に大宮開成を受け、11日に栄東を受けるというパターンが非常に増えているためです」
1月11日には浦和実業学園の適性検査型の入試も行われる。同校には都内の公立中高一貫校を受験する生徒が入試の練習として受けに来るという。聖望学園も同じだ。武南には県内の公立中高一貫校である市立川口の入試を前にして、その受験生が受けに来るという。また、埼玉県に関しては2024年春に開智所沢が開校するので、受験シーンも変わってくるだろうと藤田氏は予測した。
続いて千葉県の入試について。県内の難関中である市川、渋谷教育学園幕張、昭和学院秀明、東邦大学付属東邦の受験結果を紹介して「今年は受験生が増加し、倍率も上がった」と述べた。同時に県内の受験生が県内の私立校を第一志望にするという地元志向も強まったと分析する。
例えば、今春、柏市に誕生することで注目される流通経済大学付属柏については、栄光ゼミナール生の在籍教室分布を見ると千葉県が56%、埼玉県が25%、東京都が19%となっている。進学者も千葉県内の生徒が多く、地元志向の強まりが見て取れると藤田氏は語った。芝浦工業大学柏や麗澤も同様に千葉県の教師の生徒が多い。
神奈川県に関しても、埼玉と同じく安全志向がやや働いた印象があり、午前入試の受験生が減った一方、午後入試の受験生が大幅に増えたと述べた。
また、女子の受験生が増えたと指摘。例えば、青山学院横浜英和の受験者数を見ると前年より男子が少なく、女子が非常に多い。さらに、神奈川の女子の栄光ゼミナール生は女子校よりも共学校を選ぶ傾向が強いという。
続いて東京に関して。受験生数と実質倍率にチャレンジ思考が影響していると藤田氏は力説した。また、神奈川県と同じく午後入試の受験生が非常に増えたという。
東京都内の公立中高一貫校の受検者数はやや減り、私立の受験者が増えているとも語った。

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その後、藤田氏は栄光ゼミナールが、今年の受験を終えた生徒や保護者にとったアンケートの回答を紹介。そして今年の中学入試の厳しさを振り返り、次のように述べた。
「受験生のお母様が『本命の学校の試験で合格点を取れたことは、まさに奇跡としかいいようがありません』と語っていました。私たち塾も、受験生に試験会場で力を最大限に発揮させることの難しさを毎年痛感しています。今年は特に強く感じました。新入生を迎える学校の先生方には、この厳しい入試を経験したお子さんや保護者の方々の気持ちをこれまで以上にしっかりと受け止めていただきたいと思います」

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こうして幕を閉じた森上教育研究所私学中等教育・中学受験研究会セミナー。最後に高橋氏は次のようなメッセージを会場に送った。
「コロナ禍で3年間も会場でセミナーを開催できなかったので、今年は皆様のお顔を拝見でき、多くの方々と直接お会いできるのがこんなに素晴らしいことなのかと喜びを噛み締めています。そんな今日、お集まりいただいた学校の先生方にお願いしたいのは、広報活動の中で共感をこれまで以上に大切にしていただきたいということです。
私の娘は10年前に中学受験をしました。この時期になると、2月3日の受験校でお会いしたシスターの優しい笑顔、5日に受験した学校で誘導してくれた高校生のはじけるような笑顔を思い出します。親子で泣いたり笑ったりする1週間の出来事は、どのご家族の心にもずっと残り続けるのではないでしょうか。だからこそ、受験生やご家族に寄り添う気持ち、共感を大切にすることが、一人でも多くの受験生や入学者を集めることにつながると思います」


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