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新しい学校の会 オンライン教育シンポジウム 通信制高校の果たす役割

2022-05-02

「いわゆるひきこもりの社会参画と通信制高校の果たす役割を探る」
通信制高校卒業生1600人調査結果を同時発表
主催 新しい学校の会(運営協力 ライセンスアカデミー)

生徒一人ひとりに合わせた柔軟な教育を実践する「新しい学校の会」(桃井隆良理事長、略称・新学会)は、2022年3月18日(金)、第18回教育シンポジウム「いわゆるひきこもりの社会参画と通信制高校の果たす役割を探る」をウエビナー形式により開催した。来賓の衆議院議員 下村博文氏の挨拶に始まり、通信制高校卒業生1,600人アンケート調査結果を発表。
続いて池上正樹氏(KHJ全国ひきこもり親の会理事・ジャーナリスト)の基調講演が行われたあと、「ひきこもりの現状から解決の糸口を探る」をテーマに、有識者によるパネルディスカッションが繰り広げられた。3時間におよぶ教育シンポジウムから、主な内容を紹介する。

[来賓ご挨拶]
衆議院議員 下村 博文 氏

衆議院議員 下村博文 氏

衆議院議員 下村博文 氏

大変な努力をされながら、全国の通信制高校で子どもたちを教えている皆さんに対して心から敬意を表します。小泉内閣のとき『学校を変える!「教育特区」』という著書を上梓しました。当時、規制緩和を進める中、教育においても柔軟な制度設計ができるのではないかということで特区制度が導入され、その中のひとつが通信制高校でした。通信制高校においては株式会社立も認める流れになり、きっかけとなったのが「新しい学校の会」です。
最近の調査で、小中学生だけでも不登校が20万人弱。休学中の子どもを合わせると約30万人の小中学生が学校に行っていません。このような現状の中、通信制高校が果たす役割は大変大きいと思います。
一昨年NHKで「こもりびと」というドラマが放映されました。ドラマで描かれていた、いわゆるひきこもりの人は、現在16歳から64歳で115万人とか。15歳以下の不登校の子どもは約20万人。65歳以上は、コロナ禍でもあり、孤立し辛い思いをしている人たちも多い。日本全体では精神的な病も含めると一千万人いや二千万人くらいいるかもしれません。こうした問題に政治が光を当てなければなりません。一昨年、私はひきこもりの社会参画を考えるPTを立ち上げ、国会議員の自民党の議員、関係省庁、すでに実践されていた荒井先生にも民間有識者のオブザーバーとして参加いただきとりまとめ、第3次補正で62億円の予算を計上しスタートしました。今年から自民党内にひきこもり支援推進議員連盟を設立。関係者の方々、当事者の方々、関係省庁にも来ていただき、さらにオンラインでも様々な意見をうかがいながら、引きこもり対策に尽力しています。
115万人いると言われるひきこもりの人たちに対して、政治で何が支援できるのか、もっと支援すべきことは何か。どんな立場や状況であっても本人が頑張ろうと思えば社会で認められるよう、仕事そのものも多様化させます。ひきこもりの人たちが辛い日々ではなく、何らかの形で社会との接点やつながりがあり、「役に立っているんだ」という自己肯定感に満ち、幸福感が持てる多様化社会を目指します。そのためにも、大きな役割を果たす通信制高校がさらに広まっていくことを心から期待し、応援させていただきます。

会員校卒業生の実態調査、卒業生の〝今〟
「新しい学校の会」事務局(山口教雄 氏)

【調査の目的】
柔軟な学び方ができる通信制高校を選んだ卒業生の進路実態を調査し、在校生並びに卒業生の有用な社会参画の方向を探る。調査方法はWEBアンケート調査と電話ヒアリングを併用。

【調査対象】
卒業2年後(2019年度卒業生)ならびに7年後(2014年度卒業生)の通信制高校卒業生(新学会加盟13校)

【有効回答数】
合計1,625人
・卒業2年後卒業生1,045人、在籍生徒数約2万4200人 卒業者数約9960人 回答率10.5%
・卒業7年後卒業生580人 在籍生徒数約1万8000人 卒業者数約7200人 回答率8.1%

【調査時期】
2021年12月1日~2022年2月14日

【調査協力】
ライセンスアカデミー

【調査のまとめ】
〈卒業時進学者〉

退学者は、卒業後2年後までに12%、7年後までに21%。専門学校より大学進学者の中退率が高いようであり、大学選択時のミスマッチが推測される。退学理由は体調不良・療養中が多い。母校に「メンタル面の相談窓口」を期待する声もある。

〈卒業時就職者〉
卒業後2年後までに25%、7年後までに44%が退職しているが、転職・復職に動く傾向にある。「何もしていない」層の比率は相対的に低く、前向きな姿勢がうかがえる。

〈卒業時進路未定者〉

卒業後「何もしていない」層が一定の割合で存在し、長引く様子がある。卒業後7年後、この状態を自ら「ニート」「無職」ととらえている。母校に「就職サポート」を望む声もあり、キャリア形成支援が望まれる。

[基調講演]
「ひきこもりの人たちの思いと現実」
 
年の取材活動を通して見えるもの
池上正樹 氏(KHJ全国ひきこもり親の会理事・ジャーナリスト)

KHJ全国ひきこもり親の会 理事池上正樹 氏

KHJ全国ひきこもり親の会 理事池上正樹 氏

NPO法人KHJ(Kazoku HikikomoriJapan) 全国ひきこもり家族会連合会は、1999年設立。日本で唯一の全国組織のひきこもり家族会(当事者家族会)として、現在39都道府県56支部が参加。発足当時、「ひきこもり」は自己責任( 甘え・怠け)、親の育て方の問題として根強い社会的偏見があり、家族も本人もどこにも相談できず、当事者の心情としては「ひきこもらなければきっと死んでいた。ひきこもらざるをえなかった」と言います。
現在、ひきこもりの長期高年齢化が進み、社会的孤立(8050問題) が深刻化しています。ひきこもる原因、きっかけは多様ですが、問題の本質は孤立の悪循環。家族も本人も世間との関係を断ってしまい、自力ではひきこもりから抜け出せない状況になっています。
家の中だけが安心できる「居場所」。安心できない社会から自分の命を守るために待避せざるをえない。ひきこもる行為は自死ではなく生き延びるための選択肢のひとつです。15~64歳のひきこもりは全国推定115万人。人はどの世代でもどの年代からでも、誰でもひきこもる可能性があります。
ひきこもりに至るきっかけはハラスメント、働きすぎ、いじめ、暴力、失職、解雇、介護、虐待、病気、事件、事故、災害…一人ひとり違います。ひきこもる生き方は、多様な社会の選択肢のひとつ。緩やかにつながりを維持していくことで、人は元気になれます。皆と違っても自分らしく生きていける選択肢を尊重できる社会を目指したいと思っています。
KHJジャーナル『たびだち』(季刊誌)では、ひきこもり本人や家族の声を一般向けに届けています。

[左] 新しい学校の会 理事長 桃井隆良 氏 [右] 学校法人 さくら国際高等学校 学園長 荒井裕司 氏

[左] 新しい学校の会 理事長
桃井隆良 氏
[右] 学校法人 さくら国際高等学校
学園長 荒井裕司 氏

パネルディスカッション
テーマ「ひきこもりの現状から解決の糸口を探る」
司会/桃井隆良 氏(新しい学校の会 理事長)

〈パネリスト〉
池上正樹 氏(ジャーナリスト)
安西慶高 氏(厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課 課長補佐)
江口有隣 氏(文部科学省 初等中等局 児童生徒課長)
林 恭子 氏(一般社団法人 ひきこもり UX会議 代表理事)
荒井裕司 氏(学校法人 さくら国際高等学校 学園長)

桃井隆良氏(以下 桃井氏) ひきこもりの30%は不登校経験者と言われます。子どもが減少期であるのに不登校の子どもたちの割合が増えている現状、背景を教えてください。
江口有隣氏(以下 江口氏)
不登校の児童・生徒は義務教育段階で8年連続増加、全国で約19万6000人(2020年度)。背景として、平成28年「教育機会確保法」が施行され、「休養の必要性」が明記されたこと、コロナ禍による影響なども考えられます。
桃井氏 実際に通信制高校の生徒たちと関わるお立場として、不登校の子どもたちの割合や様子を教えてください。
荒井裕司氏(以下 荒井氏) 不登校の子どもたちと関わって約40年。まじめでピュアで優しい子どもたちばかりです。「この子たちを支えてあげないといけない!」と思い通信制の高校に行きついた。今の生徒のおよそ70~80%が不登校で、10%ほどは発達障がいの子どもたちです。
桃井氏 林さんは、ひきこもりの当事者の会を主催し、支援を行っていらっしゃいます。どれくらいの年齢の人が多く、女性、男性の割合は?
林恭子氏(以下 林氏)ひきこもりの人は15歳から64歳まで115万人いると言われています。内閣府や様々な調査では7割が男性、女性が3割ですが、私どもの団体が行った調査では女性が6割、男性が4割。大阪府豊中市の調査でも女性が多い。実際には男性も女性も同じくらいなのではないか。2019年から実態調査をもとに白書を作成。最新では「ひきこもり白書2021」で当事者・経験者の声を広く届けています。その調査で、ひきこもりの原因が不登校だと答えた人が32%。大学を出て就職し、そのあとひきこもる人も増えています。
桃井氏 ひきこもりの人たちへの国の支援はどのような状況にありますか?
安西慶高氏(以下 安西氏) 自治体が取り組みやすい環境をつくり、国が予算面での補助をします。広く理解を図るために、今年度からイベントを開催。ひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」をご覧ください。
桃井氏 小中義務教育期、あるいは高校期のいじめの問題も影響を及ぼしていると感じます。この点についてはいかがですか?

[左] 池上正樹 氏 [右] 一般社団法人 ひきこもり UX会議  代表理事 林 恭子 氏

[左] 池上正樹 氏
[右] 一般社団法人 ひきこもり UX会議 代表理事 林 恭子 氏

江口氏 最重要課題として取り組んでいます。毎年深刻な事例が発生し、なんとかしたい。事例を見つけ、軽いうちから対処できるようカウンセラー、ご家族の協力・支援、ソーシャルワーカー等と連携し協働する。SOSの出し方もお伝えしています。
桃井氏 最後に、ご自身の考えるこれからの「ひきこもり支援」の在り方についてお話いただけますか。
江口氏 ひきこもりの問題はいろいろな背景があり、これをやればいいというのではなくそれぞれに応じた支援が大事。魅力ある学校になっているか、いじめがひどくならず解決できるのか。専門家の方によるアセスメントを進め、多様な支援・学びのありかたを探っていきたい。
安西氏 日本の社会福祉制度は、介護、高齢、障害、子どもの分野など縦割りで専門特化してきたため、〝制度のはざま〟にいる人たちの支援を誰が対応するのか、そこからスタートしなければならない。80代の介護に行ったら50代のひきこもりがいたり、世帯の課題も複雑化している。自治体の連携プラットホームにより、行政の枠を超え、これからの地域づくりとして進めていきます。

[左] 新しい学校の会 理事長 桃井隆良 氏 [右] 学校法人 さくら国際高等学校 学園長 荒井裕司 氏

[左] 新しい学校の会 理事長
桃井隆良 氏
[右] 学校法人 さくら国際高等学校
学園長 荒井裕司 氏

林 氏 不登校、ひきこもりへの支援は、〝まなざし〟と〝姿勢〟が大事だと考えます。ひきこもりは悪ではありません。なってはならないものでもありません。そういった状態から引き出す、立ち直らせる、ひきこもらせないように、不登校にならないようにという考え方こそが当事者を追い詰める。支援というと、適応させる、元の社会に戻すという考え方をされる方もいますが、戻る学校や社会は本当に安全で安心な場なのかという視点が重要。大切なのはその子やその人が幸せになることへの支援。学校や社会に戻すことがゴールではなく、「幸せだな、これならやっていけるな」と思うことが一つのゴールだと思う。
荒井氏 私のところでは、22年ほど前に、卒業した子ども、大学や専門学校をやめて行き場のない子どもたちや親から次のステップを踏めるようにとの依頼もあり、「社会参加のための学校」をつくりました。弁当屋やチラシ配りの会社、清掃などの仕事をする会社を立ち上げ、給料を払い、子どもたちだけでグループホームのように自立させる道をつくってきた。民間の支援が必要です。
池上氏 いじめの問題で、いじめそのものは犯罪ですが、むしろ学校の対応が不登校に直結している。事後対応や学校の在り方そのものが、戻れる場所になってないのではないか。卒業しても、本人が戻ってきたいと思えるあり方をみんなで考えていきたい。
桃井氏 卒業だけでなくそのあとのことを考えないといけない。私たち通信制高校も大事な解決の糸口を握っていると思います。本日はありがとうございました。


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