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(一社)日本青少年育成協会 フィンランド PISA型学力育成の現状

2022-04-01
(一社)日本青少年育成協会 国際交流委員会 林隆樹 委員長

(一社)日本青少年育成協会 国際交流委員会
林隆樹 委員長

時代とともに多様な教育の課題に向き合い、社会貢献の一助となる事業を担う一般社団法人日本青少年育成協会(増澤空会長)。事業の1つである国際交流委員会では、「自立力」「語学力」「国際力」「教養力」を育み、日本と世界に貢献できるグローバル人材の育成に努めている。その国際交流委員会が『海外の教育を知ろう』という勉強会をウェビナー形式で開催した。
シリーズ第1回目は、PISA* 調査で常に世界トップレベルの学力を誇るフィンランド。ゲストスピーカーには、フィンランドの教育ツアーのプランニング及びアテンドの経験がある(株)なるほどゼミナール(山中孝光代表、熊本県熊本市)高坂翔輔氏をお迎えした。

初めに、(一社)日本青少年育成協会 国際交流委員会 林隆樹委員長が挨拶。「国際交流というと語学というイメージになりがちですが、そうではありません。学校や学習塾ごとに理念や教育方針が違うように、現地の文化や教育制度は異なります。経済大国になることを目指している国もあれば、人間の幸せとは何なのかを教えている国もあるでしょう。世界を知ることで日本を考えるきっかけになります。今日はそんなお話が聞けると思います」と述べ、ゲストスピーカー高坂翔輔氏が講演を行った。

PISA型学力の育成の現状
(株)なるほどゼミナール 高坂 翔輔 氏

(株)なるほどゼミナール 高坂翔輔 氏

(株)なるほどゼミナール 高坂翔輔 氏

本日のテーマは「PISA型学力の育成の現状」ということで、フィンランドの「Me & My City」( ミー・アンド・マイシティ)という職業体験プログラムの実施内容についてお話します。
現在、学習塾 株式会社なるほどゼミナールに勤務しています。フィンランドの教育ツアー(2014 ~ 2019 年まで計9回、のべ120 名と同行)のプランニングおよび現地アテンドにも従事していました。
フィンランドに興味を持ったのは大学卒業後、フィンランドが学力世界一になったというニュースを耳にしたのがきっかけでした。聞けばフィンランドには学習塾がないという。また、「テストの点数を上げるためにやる勉強は教育ではない」と話す先生の言葉にも衝撃を受け、フィンランドと日本の教育はどこが違うのかを調べ始めました。

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森と湖の国と称されるフィンランドは、面積約34万㎢。日本の約9割の広さに人口約550 万人が暮らしています。首都はヘルシンキ(約60 万人)で、公用語はフィンランド語とスウェーデン語です。消費税は24%(食品は14%)と高いですが、医療は18 歳まで無料で、学費は就学前教育から大学院まで無料です。不況が続き、人口が少なく天然資源も乏しいフィンランドは、教育への投資を拡大し教育改革を推し進めてきました。教員のステイタスが高いことでも知られています。
フィンランドの教育機関に訪れるたびによく耳にする言葉は「LEARNING BY DOING」。教室の中で先生から言葉で教えられただけではなく、それを自分の体で体験し理解していく教育制度がつくられていて、「実体験に勝る学びなし」を実践しています。

6年生の職業体験プログラム「 Me&My City」

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私がフィンランドを訪問して感じたことは、日本では、学習する内容を暗記し、INPUT する機会が多いのに対し、フィンランドでは学習する内容を表現する OUTPUT の機会が学年に応じて用意されているということです。例えば、6 年生と9 年生( 中学3 年生) は、「Me & MyCity」という職業体験プログラムがあります。そのうち本日は、6 年生のプログラムについてご紹介します。
「Me & MyCity」は、ミニチュア都市で働き、消費活動や納税を疑似体験をするプログラムで、WORKINGLIFE( 社会人生活)、SOCIETY( 社会)、 ECONOMY( 経済)、ENTREPRENERSHIP( 起業家精神) の4 つがテーマになってつくられていて、現在、フィンランド全体の6 年生の約8割にあたる人数が毎年参加をしています。ミニチュア都市は、日本の「キッザニア」のイメージに近いと思います。プログラム名に「MyCity」とあるように、その街に実在する企業や公共サービス施設が箱型のブースに設置され、机や販売用の商品などが置かれています。
このプログラムは、1 クラスごとの参加が基本で、Me&MyCity による教師への研修→教師による全10 回の事前学習授業→ミニチュア都市での1日体験→リフレクションという順序のラーニングモデルになっています。「Me &MyCity」のミニチュア都市で体験をする前に、教師の役割は2 つあります。1つは、学校で経済や金融、税金、公共サービス、広告など世の中の仕組みを基礎知識として、全 10 回の授業をします。もう1つは「雇用主」です。当日用意される企業や専門職のリストから、あらかじめ「あなたはどの職業に就きたいですか?」とアンケート調査をしており、生徒の希望が重なったときは、教師が採用面接官となり、「なぜその企業で働きたいのか?」と問いかけ、面接をして採用します。つまり、就職活動さながらの体験をするわけです。

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ミニチュア都市での1日体験当日は、1人に1 台、タブレット端末が用意され、それぞれの活動のスケジュールやタスクリストがタブレットに示されるようになっています。タスクをクリアすると チェックを入れ、進捗状況がオンライン上で共有されます。ただただ職業を体験するだけではなく、社会人としての1日の生活を体験するわけなので、休憩時間にランチをしたり、銀行へ行ったり、投票や納税も行います。
生徒のサポート役として、メンターがいます。このメンターは教育学部の学生が担当しています。メンターに対するトレーニングも行われていて、メンターは生徒に何かを聞かれたらすぐ答えを提供するのではなく、問いで返すようなトレーニングを受けるとのこと。「未来の教師」にとっても、まさに「LEARNING BY DOING」なのです。
1日体験プログラムを終えたら、学校で改めてリフレクションを行います。1日体験プログラムを終えたら、学校で改めてリフレクションを行います。リフレクションによって、「外国人のお客様がいるから英語のコミュニケーションが必要だ」とか「物を売るなら計算がしっかりできたほうがいいよね」など学習内容の重要性に気づくきっかけにもなっているそうです。座学と体験を通して、スキルもモチベーションもスパイラルで向上できる仕組みづくりをしているといった印象があります。 
今回の事例は一例にしかすぎませんが、フィンランドの教育機関を見学して塾講師である私自身が考えることは、これまでの私は一方的に子どもたちに教える時間を作りすぎてきたかもしれないということです。最終的には、子どもたちが自分で勉強できるようになってほしいので、子どもたち自身が勉強する時間を計画したデザインが必要だと感じています。input に偏らず、input とoutput のバランスが考えられているところが、日本とフィンランドの大きな違いのひとつだと思います。

質疑応答の時間には、教員の労働環境やフィンランドの教育制度が目指している未来の社会についてなどの質問が挙げられた。最後に林委員長が「このような勉強会を今後も続けてまいります。学びを深め、目の前にいる生徒さんと向き合っていただきたい」と締めくくった。


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