• Home
  • 新着情報
  • 小林由香氏の誌上セミナー 人が辞めない、人が育つ塾を目指して

小林由香氏の誌上セミナー 人が辞めない、人が育つ塾を目指して

2021-05-06
アイウィル株式会社 代表取締役 塾経営・人事戦略コンサルタント 小林 由香

アイウィル株式会社 代表取締役 塾経営・人事戦略コンサルタント 小林 由香

人を育てるのは難しい

私は人事コンサルタントとして、主に人事戦略、人材育成、組織風土改革などのテーマで全国の学習塾のサポートを行っています。生徒集客のアドバイスやコンサルティングも行いますが、どちらかというと生徒集客や募集戦略を通じて、人材を育てたり組織を活性化させたりすることがメインテーマです。人事コンサルタントとして活動して18年目になりますが、しみじみ「人を育てるのは難しい」、「組織の文化を刷新するには時間がかかる」と痛感しています。
多くの場合、塾長とミーティングを重ねて人事制度を作り、社内に発表したあと、その運用フォローを行いつつ月1回の会議で直接的に指導を行うスタイルをとっていますが、制度がその塾に定着し、目に見えて成果が表れてくるには、どうしても時間がかかります。

何をどのように評価するかを〝見える化〟させる

ある塾では、組織のムードが沈滞化しており、「何か提案すれば提案した者にその仕事が押し付けられるから発言したら損」、「出る杭は打たれるから〝今まで通り〟〝前年通り〟にやる方が得」、「目立ってしまって教室長でもさせられたら大変!」といった感じで、塾長がいくら口で「積極的に意見を出してほしい」「誰か〝我こそは!〟という者はいないのか?」と促してもさっぱり効果なし……。
さあ、出番です! この塾に人事制度を作って、「従来と同じ仕事の繰り返ししかできない社員は評価しない」、「新しいことにチャレンジして失敗しても加点する」、「イベントなどの企画の多い社員は評価する」、「会議での発言などの参加意識も評価対象とする」などということを目に見える形で徹底し、ようやく変化が出てきました。面白いもので、新人事制度が定着し始めると、「教室長はやりたくない」と逃げ回っていた社員たちが教室長に立候補し始め、教室長が目指すポストに大きく変わったのです。
何をどのように評価するかを〝見える化〟して、年齢や勤続年数ではなく等級やポストに応じ、評価に基づいて処遇を決定するということが浸透し始めると、組織が変わるという好例ではないでしょうか。
ここで重要なのは、評価の基準が塾長の頭の中にあるだけでは効果がない、ということです。どの塾でも、塾長は当然、人材評価の基準を自身の中には持っています。何も考えずに昇給やボーナスを払っている経営者などいません。しかしながら、目に見える形で評価基準が存在し、社内で共有されているかどうかが、成否の分かれ目であると言えましょう。

人を育てるモチベーションツールとしての人事制度

2021_5_p55_rinen

別のある塾では、社員が一人だけしかいないため、「ウチのような小さな個人塾には人事制度など必要ない」と当初塾長は思っていたようです。しかし、私の講演に参加する機会があり、「小さな塾だからこそ、採用戦線で不利にならないよう、せめて人材を処遇するルールや仕組みくらい持っておきたい」と思うようになったそうです。
たった一人のために制度策定を決意した塾長には頭の下がる思いですが、このケースは私にとっても非常に勉強になりました。なぜならば、一人しかいないその社員は、「入社以来、自分がどの程度成長し、この先どの程度の努力が必要なのかわからなくて悩んでいた」と打ち明けてくれたのです。一人しかいないからこそ、「自分自身の現在地がわかり、振り返ったとき自分の成長が確認でき、先を見たとき目指すべき次の目標が見つかる」指標が必要だったということです。このクライアントを担当して以来、小さな塾であろうとも、人を育てるモチベーションツールとして、人事制度は必要なのだという思いをますます強くしたものです。

何が評価されているかわからないと自信喪失につながる可能性も

最後に、人事制度がないために、危うく組織が崩壊しそうになった例を一つ紹介しましょう。
その塾は、いわゆるカリスマ塾長の経営する塾で、塾長の方針はきちんと社内に徹底され、処遇も地域の他社(同業・異業種を問わず)と比べても見劣りしない水準で、一見すると大きな問題や危険性をはらんでいるようには見えませんでした。
しかしながら、あるとき一人の優秀な社員を塾長に次ぐナンバー2のポジションに抜擢したところ、それが仇になり「退職したい」と言い出したのです。嬉しいはずの抜擢人事であり、喜ぶべき好待遇であっても、「何が評価されているのかわからない」「次は何をやればよいのかわからない」という中では、「自信がない」という結果につながってしまうのです。
逆に、公開された目に見える評価基準で定期的に評価を受け、その評価のフィードバックを受けると、自分のどの行動が評価され、自分のどの点が強化ポイントであるかが理解でき、それをクリアして上のポストに登用されるのは嬉しいものなのです。
定期的な評価を行わず、抜擢や好待遇だけで人のモチベーションを上げるのは限界がありますし、逆に、成長度合いに応じてポストを与えたり評価を処遇に反映させたりすることなく、人にヤル気を出させたり成果を上げさせることも無理があると言えるでしょう。

人事制度の整備は、自社で働く人材を大切にすること

私は常々、「人事制度を作るのは、社員の勤務成績をつけてボーナスの金額を決めたり昇給昇格の資料にするためだけではない」と言い続けていますが、自社オリジナルの人事制度を持つことで、経営理念の浸透、経営課題の解決、人材育成・組織活性化を実現することを目指しています。
私がクライアント先で人事制度を作る際は、その塾の理念や現在抱えている課題をヒアリングしてから、その理念の実現と塾長の頭を悩ませている課題を解決することを目指して制度策定にあたります。ですから、その組織の目指す姿がキャリアマップに映し出され、等級ごとに求められる姿勢や成果を記した等級基準書に反映され、人事評価の項目やウエイトを見れば経営メッセージが伝わるのです。そして、どういう人材(どのような仕事ぶりでどのような成果を上げた社員)がどのような処遇を受けられるのか、評価を処遇にリンクさせています。これを日常の仕事に落とし込んで使いこなしていけば、人材は育つし組織の文化が望ましい変化を遂げることは間違いありません。
人材育成と言うと研修を思い浮かべる人が多いと思いますが、研修だけで人を育てるには限界があり、研修と評価をリンクさせながら成長を促す方が効果的なのです。
人事というテーマは、生徒集客や売上アップなどと違ってどうしても後回しにされがちですが、生徒を集めるのも、生徒の成績を上げるのも、売上を上げるのもすべて「人」であり、「人」に関する問題は避けて通れません。
人事の制度を整えるということは、自社で働く人材を大切にすることにつながります。働き方改革が叫ばれる昨今、ぜひ、一歩を踏み出してほしいと思います。

人が育ち組織が活性化する学習塾向け人事制度の作り方

3Book.jpg

一般企業とは事情の異なる学習塾業界に完全特化した人事制度の考え方や作成ノウハウを、プロの人事コンサルタントが徹底解説。
人事制度で「理念の浸透」「経営課題解決」「人材育成」を実現しよう!
塾長必携、社員を一人でも雇ったら読む本。

小林由香 著 塾と教育社 刊
A5 版160 頁 2,640 円(税込)

※お申し込みはこちらから

seminar_qr


ウイングネット


PICK UP


                         スポーツマネジメント通訳協会
                         ベスト塾
                         FLENS
                         コエテコbyGMO

全国学習塾協会ITコンソーシアム塾ツール

河合塾One

東京保健医療専門職大学

琉球リハビリテーション学院

麗澤中学・高等学校

麗澤瑞浪中学・高等学校

つくば開成学園

FREEMIND空カンパニー

コンパス

塾シル!

レキシとコトバの先生

塾ナビ

家庭教師

中国語資格HSK 中国政府公認・世界共通規準

塾と教育 twitter


塾と教育

株式会社 塾と教育社
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン807
Copyright © Juku To Kyoiku Sha. ALL Rights reserved.