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「ひきこもりの社会参加」の実現のためにできること

2021-04-01

(一社)日本青少年育成協会 副会長
学校法人さくら国際高校 理事長
荒井 裕司

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(1)ひきこもりとは

ひきこもりは「自宅にひきこもって、社会参加をしない状態が6ヵ月以上継続していて、精神障害がその第一の原因と考えにくいもの」をいう。(厚労省の定義)
ただし、社会参加とは、「就学、就労しているか、家族以外に親密な対人関係がある状態をいう」自宅にひきこもるというのは、必ずしも「ひきこもり」の人々がみな自宅に引きこもり続けているわけではない。オタクと呼ばれ、自宅でゲームに没頭したり、趣味をひたすら行うような人たちも多いことも事実だが、その割合は意外と低い。内閣府「若者の生活に関する調査報告書」2016年では5%程度。
中には一人でならコンビニに買い物に行ったり、レンタルビデオ店に行ったり、映画を見に行ったり、好きなスポーツ観戦や乗り鉄に行くことができる活動的なひきこもりも存在する。これらの人たちも病気ではないのでひきこもり状態ということができる。

(2)どんな人たちがひきこもるのか?

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今日本の大きな社会問題として取り上げられるひきこもりの現状はどうなっているのか。内閣府の調査等から推定すると、今少なくとも100万人以上のひきこもりがいることになる。
ひきこもりの人たちに聞くとそのほぼ90%が不登校だったというデータがある。不登校ではないものの就職活動などに失敗したり、いったんは就職したものの、人間関係がうまく取り結べずに社会に参加しなくなった人たちもいる。(図①、②参照)
こうしたひきこもり状態は、元来、真面目で、素直でピュア、競いごとが嫌いで、他人の気持ちにも敏感な人が多い。また家族やまわりの期待に応えようと頑張って自らを追い詰めて、自信を失って動けなくなる人も多い。その背景には対人への不安や、恐怖心がある。働くことはおろか、生きていくエネルギーも無い人も多い。ひきこもりの要因は非常に多様である。
またこうしたひきこもり生活が長期化し高齢化することで、精神症状が出てくることもあり、最近の精神科医たちからの報告によるとかなり高い確率で何らかの精神症状があると言われている。ただ、ひきこもりイコール犯罪予備軍といった図式は誤解であり、多くのひきこもりの人たちを守る意味でも絶対に忘れてはいけないことと言える。

(3)ひきこもる人たちへの支援とは

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① ひきこもり状態は追い込まれた状態で、自らの命を守るために社会的に避難した状態だということもいえる。心を安らかにして、食べ物や信頼できる居場所の確保が第一といえ、危険なストレスを回避できる場所が必要。それにはまず、家族が理解してやり、安心して生活できるようにすることが肝要で、決して責めたり、追い込んだりしてはいけない。

② 家族もその焦燥感や行き場のない苦しみで孤立しないようにすることが大切
同じような悩みや苦しみを持つ家族や仲間と情報を交換できる居場所をつくったり、家族会などを開いて共有して、生きていくエネルギーを充てんすることが必要。家族の我が子を思う気持ちと、何とかしたいという焦りに取り込み、「引き出し屋」と言われる人たちが暗躍している。高額なお金を請求し、「監禁」のような状態をつくることでビジネスとして成立してしまっている。家族会での多様な情報を提供し合って、こうした悲劇をつくり出さないようにしないといけない。当事者も結果的に何重もの辛さ、苦しさを味わうことになってしまう。

③ 行政との連携による様々な支援を広げる
当事者の状態をよく理解して、決して家族の希望に合わせた行動を誘導しないこと。様々な社会的資源を有機的に活用する方法を探り実践していく。まず相談することから始まるが、全国67カ所にある支援センターや、民間のNPOや家族会などに勇気をもって相談に行くこと。一人ひとりの状態は異なるが、必ず理解につながり、解決につながる道は開ける。

④ 国や自治体に働きかけて、ニーズに合った支援方法を作り出していく
ひきこもる当事者の辛さ苦しさ、孤独さ、そしてそれを支える家族の不安や辛さは、多様でみな異なっているため、理解してもらうのには時間がかかるかも知れない。しかし、細部に行き届く支援や当事者しか分からない視点をきちんと伝えて組み立ててもらう。一家族の困りごとは共有して家族会全体の課題でもあると自治体に訴えていくことも大切。

⑤ ひきこもりながらの就労を考える
どうしても社会に参加できない場合は、ひきこもりながら起業したり、リモートで仕事ができる仕組みを考えれば、新しい一つの就労となる。企業の障害者枠を一部外部事業枠として、ひきこもりを続ける人への仕事を提供させる仕組みができたらいい。

以上が、今できるひきこもり支援の概略。とにかく支援にはお金とエネルギーと地域や医療機関との協力とネットワークとマンパワーが必要である。ひきこもり支援を長年行っている多くのNPO法人や各団体の苦労は想像を絶する。心から感謝を伝え、国の強力な支援をお願いしたい。支援では福祉をからめて、著しい成果をあげている自治体も出てきている。成功している自治体のノウハウは早く全国に広げていって欲しい。

(4)ひきこもりを未然に防ぐためには

前述のように、ひきこもりの90%は不登校経験者といわれている。不登校を消滅させることができれば、未来のひきこもりは解決できるが、不登校の課題も要因は多様で一筋縄ではいかない(図③参照)。
さらに学校内における暴力発生件数は増え続けていたり、いじめも増加の一途にある。(図④、⑤参照)
SNSによる多くの課題も露呈してきているため不登校が激減するという要素も少なく、現状では可能性は低いといえる。
しかし、現在の教育の仕組みの上にさらに思い切った学びの多様化、学びの自由化が取り入れられるようになれば、不登校の減少も見えてくる。そもそもアメリカなどではホームスクール(家庭内学校)がある。学校に行かない「学びの仕組み」があるのなら不登校という概念もなくなる。楽しく有意義な、それこそドキドキするような学びの場をつくればいいのだ。各省庁の枠を取り払い、地域や企業や農家や様々な職業の人たちの知恵を借りてネットワークをつくって欲しい。新しい教育の仕組みや新しい学びの場をつくったら楽しいことになりそうだし、成果もついてくるにちがいない。もちろん課題はいくらでもあるが、もうそんなことは言ってられない状況になっている。
〝不登校の消える日〟が来れば、ひきこもりの消える日だってあとからついてくる。

<参考>
ひきこもり救出マニュアル
斉藤環 著


東進ハイスクール


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