
新中1~中3生のための SRJ主催 オンラインセミナー 新年度準備でスタートダッシュ
1月17日(日)・31日(日)、株式会社SRJ(堀川直人 代表取締役)は、新中1~中3生と保護者に向けた無料オンラインセミナーを実施。中学校の教科書改訂に伴う学習内容の変化や定期テスト・高校入試対策のほか、17日には「朝礼だけの学校」校長・藤原和博氏、31日は(株)サイタコーディネーション代表・江藤真規氏による特別講演が行われた。
教育を取り巻く環境が加速度的に変化する中、いま親子で共有すべき視点やコミュニケーションのヒントが満載のセミナーをリポートする。
教科書量増加・英語教育の改革で中学校の教科書はどう変わるのか
(株)エデュケーショナルネットワーク/向井菜穂子 氏
日常生活での活用を主眼に 中学教科書改訂の最新情報
2020年4月、コロナ禍の休校によって教室で一斉に教科書を開くことができなかったため、大転換期の変化を実感しにくいままに小学校の教科書改訂が行われた。これを皮切りに、2021年度は中学3年間分の教科書改訂が実施される。
教科書と入試が変わるタイミングについて、向井氏は「新中3生は高校も含めて4年間にわたり、教科書改訂の初年度を走りながら大学入試を迎えることとなります」と述べた。
具体的な各教科の教科書内容について、向井氏はこう解説する。
「すべての学習の基盤として国語が位置づけられます。グラフ・図版・資料などあらゆる情報を読み取り、活用することを目標に〝情報の扱い方〟という単元が新設され、語彙の強化も重視されます。また、数学・理科の教科書は日常生活の中で数学的・理科的な考え方を積極的に活かせるよう工夫され、英語・社会はSDGsをキーワードに世界的な課題の解決を随所で意識させるつくりです」
小学校英語の習得が大前提 新中1生は英単語の負担大
英語の教科書については、小学校英語の影響が非常に大きいと向井氏は強調する。
「中1生の場合、小学校の英単語習熟度が1学期の中間テストに影響すると考えられます。現行の高校英語の内容の一部が中学に下りるため、文法学習は全体的に前倒しとなります」
大変なのは中1生だけではない。
「中学3年間の教科書で扱う単語総数は小学校で既習の単語も含めると、平均約2300語ですが、発信語彙1000語のうち約半数が小学校で学習済みの扱いです。新出単語も難しく、テーマも環境問題や科学技術の発展などSDGsを意識した専門性の高い文章が頻出しています。会話や発表などアクティビティを重んじる一方で、定期テストでは文法も決して疎かにはできません」
全教科を通して定期テストは、今まで以上に思考力や表現力を問う応用問題が増える可能性も指摘する。さらに、高校入試について、
「新中3生は特に理科・英語で過去問にはない単元が出題される可能性を前提にした対策が必要です。全国的に英文や理科の問題文、社会の図版の読み取り量も大幅に増えて、正確な知識を素早くアウトプットする力と、長文を読み取って理解する力が試されます」と向井氏は述べた。
春休みシーズンに新中1生は小学校までの学習内容の見直しを、新中2・3生は旧学年の総復習を行った上で、新学期を迎えてほしいと参加者に呼びかけた。
特別講演① 親子向けセミナー
AIやグローバル化が加速する社会で必要な力とは。
そのためにいま何をすべきか
「朝礼だけの学校」校長/藤原和博 氏
〝生きる力の逆三角形〟を人生のあらゆる局面で活用
著書「10年後、君に仕事はあるのか?」(ダイヤモンド社)が145万部を超えるベストセラーとなった藤原和博氏。
「どんな仕事でもAI・ロボットとの協業の時代を迎えます。人間のどんな仕事がなくなり、どんな仕事が人間に残されているのでしょうか」と語りかけ、親子でのディベートを促した。
これからの時代に求められるのは、〝生きる力の逆三角形〟だと藤原氏は語る。
「〝情報処理力〟は正解を早く導き出す知識や技能です。一方、〝情報編集力〟はネットワークで他者の知恵をたぐり寄せ、納得解を紡ぎ出し、仮説を立てて決定・行動する力です。頭を切り替えながら2つの力をバランスよく身に付けることが大切です。そして、これらを下支えするのが、家庭教育をベースとした〝基礎的人間力〟です。人柄やキャラ、感情的な動きも含めた、いわゆるヒューマン力です」
さらに、1人でアイディアを絞り出すよりも、他者とのブレストによって脳が拡張される例を示し、「常識や前例から離れてアイディアを出し合う〝情報編集力〟は、イマジネーションを働かせてまったく新しい付加価値を見出すかけ算です。子どもだけでなく、親も人生の決断や子育てにおいて必要な力です」と述べた。
基礎科目の学習によって身に付く〝情報処理力〟に対し、〝情報編集力〟を鍛えるためには遊びが必要だという。「想定外の事件や二律背反の事象が起こる遊びの中で想像力が養われ、クリエイティブな納得解を導くことができるようになります。また、親子や友人とは異なる第三者との〝ナナメの関係〟も大切です。そうしたコミュニティの中で励まされ、勇気をもらいながら人間関係に強い子どもが育ち、豊かな人生を築いていくのだと思います」
人の仕事が消滅する社会で〝稼げる〟人間になるには
藤原氏が唱えるキャリア教育論のキーワードは〝稼ぐ〟だ。
「もちろん職業の貴賎の話ではありませんが、稼ぐという概念を時給に換算して考えてみてください。アルバイトの時給が800円、国際レベルのコンサルタントなら時給8万円で、1時間あたりに生み出す付加価値の差は実に100倍です。時給を上げるカギを握るのは、何でしょうか。それは〝レアさ・希少性・かけがえのなさ〟です。勉強する意味とは、組織を飛び出しても稼げることをゴールに据えて、自分にしかできないものを身に付け、自分自身をレアな存在にすることなのです」
特別講演② 保護者向けセミナー
これからの教育に欠かせない!親子対話の作り方
(株)サイタコーディネーション代表/江藤真規 氏
子どもの成長や可能性を伸ばすために対話が有効
「どうしても親の目は子どもの弱みに向いてしまいがちですし、関係性が近いだけに最適な距離を見つけて対話するのは難しいと、私自身も子育ての経験から痛感しています」
江藤氏は愛娘2人を東大現役合格させた母親の視点も含めて、こう前置きした上で親子対話の重要性を語る。「親子の信頼関係を構築し、対話を通して子どもを受容・共感・共通理解を示すことは、ストレスマネジメントにもつながります。また、表現力や思考力、課題発見・課題解決力も培われ、学習上の効果も期待できます」
子育てで大切なのは、親が短期と長期の視点をパラレルで備えることであり、それによって子どももゆとりを持って物事を捉えられるようになるという。
では、勉強しない・やる気が出ないなど短期的な課題がある場合、親子対話はどのように作っていけばよいのだろうか。
「子どもがやる気が出ない理由は、〝できるかもしれない〟を意識させる部分が置き去りになっているからかもしれません。他人ごとを自分ごとに置き換える工夫が必要です。高すぎる目標を設定するのではなく、いまやるべきことに焦点を合わせて時間軸を意識させてみてください。現状を把握するために、子どもの自己分析をサポートし、ストレングス(強み)を発揮させるように紐解いていきましょう」
多様性の時代、親子で対話上手に
一方、子どもの持つ力を引き出し、自分で立てた目標に自力で向かわせたいという長期的な営みについて、江藤氏はこうアドバイスする。
「変動性、不確実性、複雑性、曖昧性に象徴される現代は、いかに日々の子育てに「自分はどうなのか」という視点を入れ込むかが肝となります。『自己決定・自己選択・正解のない人生・個性・強み・夢中・内省』など、シンプルな言葉に落とし込んで考えてみることをおすすめします」
長期的な視野に立ち、対話によって思考力や判断力、表現力を育むための3ステップを江藤氏は提案する。
1つ目は、相手の身になって聴き、理解しようとする〝積極的傾聴〟だ。
「聴く姿勢を示す多様な相づちや、言葉の繰り返しで受容しているというメッセージを伝えたり、別の言葉で言い換えて共通理解を示すことによって、語彙力や表現力が養われます」
次に、対話を深める質問によって気づきや自己決定を導く方法だ。
「子どもが考えるための質問を心がけることで、視点を変えたり、未来を具体的にイメージしたり、気づきやひらめきを促すことができます」
3つ目は、親子で一緒に考え、興味関心の輪を広げて課題発見や課題解決につなげていく段階だ。
「子どもは大人の未成熟な状態ではありません。子どもだからわからない、まだ無理だという決めつけは排除しましょう。SDGsのような全世界的な目標を自分ごととして捉え、家庭での身近な対話や自分との対話を通じて、考える習慣を身に付けることが大切です。ぜひ、1日5分目分を親子対話に投資してみてください」