
教育資源としての民間教育 第37回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
子どもたちのために私たちが選択すべき未来
少子化社会に関する国際的な意識調査によると、「あなたの国は、子どもを産み育てやすい国だと思いますか」の質問に対して、日本では45.5%が「そう思わない」と回答しています。米国やフランスの2割台からすればその割合は相当に高いです。
子供・若者の意識に関する調査(令和元年度)によると、「あなたは、自分の将来について明るい希望を持っていますか」の質問に対して15~19歳の33.7%、20~24 歳の45.2%、25~29歳の49.3%が「(どちらかといえばも含めて)希望がない」と回答しています。
子どもは、言い換えれば「未来の大人」です。
いまの大人に育てられる子ども、これから大人になる子どもの「未来」を、いまの大人たちなら変えることができます。いいえ、いまの大人でしか変えることはできないでしょう。
内閣府は令和2年7月に「選択する未来2.0 中間報告」を取りまとめました。
そこには「回避すべき未来」と「選択すべき未来」が描かれています。
「回避すべき未来」とは、多様な能力が認められず、働き方も画一的で、新しい発想やイノベーションが生まれない社会。働き方や社会構造が変わらず、所得が伸びずワークライフバランスも実現できない社会、だそうです。
つまり、今までの課題をそのまま積み残していく社会ということでしょう。
いま、アフター・コロナ、ポスト・コロナという言葉がおどっています。
新型コロナウイルス感染症は確かに世界的な災禍ではありますが、同時に、コロナ前に後戻りをしない新しい社会、新しい未来の起点であることに気づきます。
「選択すべき未来」とは、創造力を持ちあわせた多様な人材が次々とイノベーションを起こせる、自由かつ柔軟性に富み、変化を取り入れ、失敗への許容力の高い社会だといいます。
創造力を持ちあわせた多様な人材の育成のために、たとえば…すでに。
オンライン学習成果での在宅出席評価モデルをつくり、不登校生徒も学べる環境づくりが始まっています。ゲーマー中高生からサイバーセキュリティ人材を育成する教育が始まっています。「社会」におけるお金・金融の役割の学びが高大接続の一環として始まっています。
私たちが選択すべき未来は、多様性を尊び、変化を取り入れ、この数年に集中的な取り組みを行い、長年指摘されながら解決できなかった課題を解決するとともに、通常10 年かかるであろう変革を、将来を先取りする形で一気に進める必要があります。
これを信じるならば、容易ではないことかもしれませんが、私たちはもう走り出すときに来ているといえるでしょう。
このような進取気鋭は公よりも民が得意としてきたところだと思います。
このような時だからこそ、民間教育は力も合わせ声も合わせていきましょう。