
教育資源としての民間教育 第25回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
イノベーションの先の未来を生きる子どもたち
学校の足りていないところを補うカタチで、塾はその存在意義を明確にしてきました。
学校が多くの生徒を集団で教えるがためにどうしても生まれる吹きこぼれや落ちこぼれなどを塾は顧客として急速に広がっていった時代があります。
塾は、そこで個別最適化を専売特許のように、学校の不足を補うカタチで世の中に市民権を得ていったわけです。今の業態としての個別指導というよりは、一人の先生が様々なカタチでの個別対応を施したり、またやがては学校さながらの集団授業でも、レベル別や目標別のような独自の集団授業を磨き上げて、これも一つの個別最適化した授業として存在してきました。どれもこれも学校のやれないことを、塾が取り組んできたわけです。
現在、さかんにGIGA スクール構想という言葉を耳にすると思いますが、これはインターネットを使うことで、学校の中で個別最適化を実現させようということです。
これは長時間にわたり学校に滞在する子どもたちにとっては、集団であっても個別最適で進むわけですから朗報とも言えます。一方でこれまで学校が出来なかった個別最適を専売してきた塾にとっては、うかうかしているとその存在意義が薄まっていくことも考えられます。
その時、塾はどうであるべきなのでしょうか?
個別最適の専門家として、学校の中に入って教員の方々と協働していくことも一つかもしれません。また個別最適した学びの仕組みを歩いていく子どもたちの心に寄り添ったり、学習の目的や志を育むなどのモチベーティングに重きが置かれるのかもしれません。または学びを社会課題につなげていくPBL(プロジェクトベース ラーニング)を提示していくことなのかもしれません。
いずれにせよ時代が激変する中で、イノベーションなく生き残れるのは滅多にないことです。イノベーションが得意な人も、イノベーションが苦手な人も居ることでしょう。ただし、子どもたちはイノベーションの先の未来を生きるわけですから、そのことを思えばイノベーションの苦手な人も頑張って未来を見なければいけないのかもしれません。
塾で子どもたちと関わる大人ほど、世の中を俯瞰して、未来への風を感じ、ビジョンを持って理念を明確にする必要性が増してきています。
この国の未来をつくるのは、塾の業界人の矜持かもしれません。