
AJC(全国学習塾協同組合)森貞孝理事長の最新教育情報 第29回
出生数の落ち込みと大学入試改革
昨年にも同じような内容の話をしたが、まさか今年も繰り返すとは思わなかった。この記事を書いている時点ではまだ未発表だが、12月20日に国が発表する出生数の速報値が、90万人を割ることがほぼ確定した。出生数の落ち込みが、年を追うごとにひどくなっている。90万人台を3年で通過して一気に80万人台へ落ち込むとは想定外の激しい落ち込みだ。
元号が令和に変わり、記念結婚や出産の話が一時話題にもなっただけに、出生数の減少は、一時的にリバウンドした後に再度減少を始めるものだとばかり思っていた。多くの方々もそのような展開を予測していたのではないか。
ところが昨年9月、10月の時点で、あと2カ月いくら頑張っても令和元年の出生数が90万人台になることは不可能に近いということがわかってきた。100万人台が11年かかって減少したあと、わずか3年で90万人台を通過して80万人台に落ち込むことになるのだ。特別不景気だということではない。昨年は改元があり、祝賀パレードがあり、記念行事があり、ラグビーのワールドカップがあり、決して悪いイメージが多かったわけではない。
今男性も女性も40代、50代で独身の方が増えてきた。都心の不動産業者に聞くと、需要があるのはワンルームや1DKで、2DKや3DKは新規の借り手は少ないという話だ。10万円未満の家賃で、都心の便利なマンションに住んでそれなりの生活をするサラリーマンにとって、そこそこの生活水準を保ち、余暇を楽しむ中では、結婚や出産は考えられないのか。
もう一つ塾にとっても学校にとっても大きな話題があった。高大接続で議論されていた英語の民間試験の延期である。遅い、間に合わない、いろいろ騒ぎ続けて、国立大学が試験結果を参考にしないという話もようやく収まってから、いよいよ民間試験の受付開始当日の11月1日になってからの延期発表だった。それも数カ月伸ばすのではなくて、2024年の4年先まで延ばすというのだ。そして、延期に決まってから、多くの国立大学は試験結果について参考にしないと言い出している。外から見ていてもかなりごたごたして収拾が難しそうに見える。
ただ延期した場合の英語のテストは当面どうなるのか。リーディングとヒヤリング中心のテストになると一部で報道されているが、高校3年生になる生徒にとっては早く安心して学業に取り組める対応を示してもらいたいと思っているはずだ。英語以外にも新しく変わることになっていた国語や数学の記述式問題の導入についてもここへ来て延期が決定することになった。
さらに高校生のための学びの基礎診断の今後の実施についてはどうなるのか。現在中学・高校に在学している生徒たちにとっては直接入学試験に関係のある部分で先が見通せないような状態が続くのは精神的につらい思いがあるはずだ。今回の教育改革が空騒ぎに終わらないよう関係者は実のある指針を一刻も早く示してほしい。