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SRJ全国大会2019 言葉と共に成長できる ICT教育を目指して

2019-11-01
SRJ・堀川直人 社長

SRJ・堀川直人 社長

9月9日(月)、(株)SRJの全国大会が東京・高輪にて開催された。「言葉と共に成長できるICT教育を目指して」と題した今回の大会では、同社が2020年3月にリリースを予定している新システムの紹介、ならびに国立情報学研究所社会共有知研究センター センター長・教授の新井紀子氏による基調講演が行われ、全国から約300名あまりの塾・教室関係者が集まった。

新システム
「TERRACE」総合的な能力開発を目指す

会場には300名あまりの塾・教室関係者が集まった

会場には300名あまりの塾・教室関係者が集まった

全国大会が開催されたのは、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号が関東を直撃した翌日。交通機関の乱れにより多くの来場者の到着が遅れ、やむなく参加を取りやめた塾・教室関係者もいたなか、堀川直人代表取締役は開会の挨拶で厚いお礼とお見舞いの言葉を述べた。そのうえで堀川氏は、新システムの開発に先駆けて、この日登壇する新井紀子氏の著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』との出会いがあったことに触れ、「読解力の重要性について改めて考えさせられ、速読という我々のサービスを通して子どもたちに正確に速く読み取る力をいかにつけさせるか、トレーニングの質的なものを考えるにあたって新井先生のお考えのなかに多大なるヒントが隠されていた」と述べた。さらに、新システムは「読解力を科学的かつ本質的に見直したうえで開発したもの」、かつ、「総合的な能力開発トレーニングを搭載したポータル」であるとし、その名称が「TERRACE(テラス)」であることを発表した。
「テラスというのは母屋から庭に張り出したスペースのことですが、母屋がいわゆる〝学力〟であるとすると、テラスは〝総合的な能力〟という新たな付加価値であり、このスペースで子どもたちの可能性を引き出していきたいという思いを込めてつけました。また、〝一隅を照らす〟という意味合いも含んでおり、最新のICTと自立学習型能力開発ポータルとをかけ合わせて、子どもたち一人ひとりを照らしていきたいという思いも込めています」(堀川氏)

〝速読解力〟をコアとした第三の教育・学びを目指す

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さらに堀川氏は、正確に速く読み解く「速読力」を木の〝幹〟に例え、その〝根〟は「基礎的読解力」であるとし、幹と根との関係を強化することを強調。「新システムTERRACEのトレーニング(新・速読トレーニング、新・解くトレーニング)では、主語・述語や修飾語・被修飾語の関係をおさえたり、図表を見て答えたり、複数の文章から解を導いたりといった本質的な読解力を鍛えていく。基礎的読解力に根ざした速読力を身につけることで、新しい入試に対応できる学力、さらにはこれからの社会で活躍できる力を育てたい」と力強く述べた。
また、木の〝枝葉〟として、「思考力トレーニング(新・脳力トレーニング)」、「多読力トレーニング」、「速習トレーニング」、「表現力トレーニング」のカテゴリーに分かれた多様なコンテンツを展開することを発表。新システムにより多角的な能力開発を進めていく方針を示し、「第三の教育・学びのポータルをつくっていきたい」と述べた。
「昨今の入試問題は複合的になっています。例えば、英語の問題文に時事的な内容が採用されたり、理科の問題文が長文化したり、社会の問題に数学の要素が入ったり…ということが散見されます。教科指導・学習が第一の教育・学びだとすると、これからは教科の枠を取っ払った第二の教育・学びが必要になります。そして、我々が目指すのは、その先の〝教育エンターテイメント〟とも言える総合的な第三の教育・学びなのです」(堀川氏)

最後に堀川氏は、国語4技能対策や新・速読英語のコンテンツを2020年夏にリリース予定であること、英語ボキャブラリーでは「Rakuten Super English」、英語スピーキングでは「Terra Talk」と、他社と連携したサービスも展開予定であることを発表。
「TERRACEにはプラットフォームとしての機能ももたせ、多彩なコンテンツやサービスを追加していきたい」としたうえで、「TERRACEではいろいろなコンテンツが増えるが、コアになるのはあくまでも〝速読解力〟。ここが一番大事だと考えている」と改めて強調し、挨拶を締めくくった。

速読解力をベースに思考力・表現力を鍛える

続いて、SRJの山田征輝氏が、新システムTERRACEについてより詳しく説明を行った。まずはTERRACEの特長として「速読解力の深化と進化」を挙げ、新井氏の提唱する「読解力向上に必要な6つの技能」(係り受け、指示語・照応、同義文、推理・推論、図表の読解、定義と具体例)を鍛えるための「全体把握力トレーニング」、「理解力トレーニング」について例題を挙げながら紹介。「ショート、ミドル、ロングの3ステップのセンテンス学習で、段階的に読解力向上を図る」とした。
さらに、学習指導要領でも明記されている育成すべき「資質・能力」に関して、TERRACEでは「速読力・読解力」をベースに、「思考力」、さらに「表現力」をピラミッド型に位置付け、思考力を鍛えるために「新・脳トレ」をリリースすることを発表した。新・脳トレには、東北大学教授で(株)NeU取締役CTOの川島隆太氏の推薦するエビデンスのあるトレーニングを追加し、推論、ワーキングメモリ、処理速度、言語理解、思考力、空間認識力などを鍛えるコンテンツを提供する。

続いて話題は、表現力へ。アクティブ・ラーニングの手法を取り入れ、教育改革実践家・藤原和博氏によるキャリア教育「よのなか科」をコンテンツとして採用することを発表したところで、なんとご本人が登場。颯爽と現れ壇上に上がる藤原氏の姿に、会場は大きなどよめきと拍手に包まれた。

藤原和博氏が登壇!
「これからの時代に求められるのは〝情報編集力〟」

[左] 教育改革実践家・藤原和博 氏 [右] 日本ゲーミフィケーション協会 岸本好弘 代表理事

[左] 教育改革実践家・藤原和博 氏
[右] 日本ゲーミフィケーション協会
岸本好弘 代表理事

藤原氏は、自らが提唱してきた「生きる力の逆三角形」を紹介。これは、「基礎的人間力」を下向きの頂点に、「情報処理力」(知識・技能)と「情報編集力」(思考力・判断力・表現力)からなる逆三角形で、「よのなか科」はこのうち「情報編集力」を鍛えるものであると述べた。
「情報処理力というのは、正解がある問題に対応する力、いわゆる基礎学力のこと。一方、情報編集力というのは、正解のない問題に対して、頭を柔らかくして仮説をいっぱい出し、その仮説に基づいていろいろとやってみるなかで修正しつつ、納得解を出していく力。これからの時代は、この情報編集力が求められる」と藤原氏。グループワークで聴衆を巻き込みながら、「自分自身で未来を拓いていくためには、情報処理力ではなく情報編集力が必要である」ことを主張した。
「よのなか科」は、(株)リクルートが運営する「スタディサプリ」内に51課題分の動画コンテンツがあるが、TERRACEではこのすべてが視聴可能になることが決まっている。藤原氏は、「動画を見るだけでも課題設定の方法がわかると思うので、先生方にはぜひ参考にしていただきたい。
45分の授業のうち5分でもいいので考える時間をつくり、できれば授業の最後に200字の意見文を作成するところまでやっていただければ、効果が高い」と活用法をアドバイスした。

最後に藤原氏は、「これまで20年間あまり、情報処理力から未来を切り拓く情報編集力へとシフトすべしと、公立の学校長を務めたり全国を行脚したりして訴えてきたが、一つ、私が誤解していたことがある」とし、「塾・予備校というのは情報処理力ばかりを鍛えているイメージがあったが、実際は民間の教育者の方が情報編集力への理解があるし、実際に情報編集力も高い。今後は塾・予備校と協働し、子どもたちの未来を拓くためのエポックメイキングをしていきたい」と力強く宣言した。さらに、「僕の期待に応えてもらえる?」という呼びかけには、会場から大きな拍手がわき起こった。

ゲーミフィケーションで楽しく能動的に学び続ける

再びマイクが山田氏のもとに戻り、従来の「みんなの速読」からの進化やTERRACEのID使用料、さらに今春リリースした「みんなの速読英語」の動向や速読英語の新システムのコンセプトなどについて解説があった。
TERRACEの特長の一つが、ゲーミフィケーションを活用して楽しく取り組める仕掛けがされていること。ここで、スペシャルゲストとして一般社団法人日本ゲーミフィケーション協会代表理事の岸本好弘氏が登壇し、「ゲーミフィケーションが目指す楽しく能動的な学び」と題して講演を行った。
「ゲーミフィケーションとは、学びなどの身のまわりのことにゲームの要素を入れて、対象者を楽しくやる気にさせること。若い世代との親和性が高く、最初の一歩を踏み出すために非常に有効」と岸本氏。一方で、「楽しいというのは手段に過ぎないので、最終的には、学習者が自分の持っている力に気づいて成長すること自体が楽しいと思う、内的モチベーションが高まる状態に持っていくことが重要」と強調した。
さらに、ゲームを面白くする6つの要素として、「能動的な参加(やりたいときにでき、難易度が選べる)」、「称賛の演出(ステージをクリアすると大げさに称賛される)」、「即時フィードバック(ボタンを押すと反応する)」、「独自性の称賛(自分なりの攻略法が見つけられる)」、「成長の可視化(主人公のレベルや能力、見た目が変わる)」、「達成可能な目標設定(ちょっと頑張れば倒せる敵が出現する)」を提示。これらの要素を大学の授業に盛り込んだところ、学生の集中度やモチベーションが向上したという実践研究結果を発表した。最後に岸本氏は、「TERRACEのシステム構築にはゲーミフィケーションの6要素が含まれているので、学習者の内的モチベーションを高め、楽しく継続することができるだろう」と述べ、講演を締めくくった。

基調講演
「人工知能がもたらす人間と社会の未来」

国立情報学研究所 社会共有知研究センター センター長・教授
一般社団法人 教育のための科学研究所 所長・代理理事
新井 紀子 氏

意味を理解しないAIが、東大に入れる日が来る!?

国立情報学研究所 社会共有知研究センター 新井紀子 センター長・教授

国立情報学研究所
社会共有知研究センター
新井紀子 センター長・教授

続いて、国立情報学研究所社会共有知研究センター センター長・教授、一般社団法人教育のための科学研究所 所長・代表理事の新井紀子氏が登壇し、「人工知能がもたらす人間と社会の未来」と題して基調講演を行った。新井氏の著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』は、「ビジネス書大賞2019」をはじめ各賞を受賞し、メディアでも〝衝撃の書〟として大きく取り上げられた。講演は、著書でも語られている「東ロボくん」の話題から始
まった。
新井氏をリーダーとするチームは、「ロボットは東大に入れるか?」というテーマで2011年に10年間のプロジェクトをスタート。AI(人工知能)を搭載した東ロボくんを開発した。
「プロジェクトが始動した当時は、たった8年前ですが、AIという言葉はまだほとんど使われていませんでした。2013年頃に、人工知能学会や言語処理学会で『2021年(プロジェクトの最終年)までに東ロボくんは東大に入れるか?』と尋ねると、約8割の研究者がYESと答えていました。高校生に同じことを尋ねても、7~8割はYESと答えていました。その理由は、AIは日進月歩で進化しており無限の可能性があるから、ということでした。さて、どうでしょうか?」
示唆に富んだ問いかけから始まり、新井氏は「AIとはどういう仕組みのものか」について話を進めた。ビッグデータと深層学習、物体検出と画像認識などについて例を交えて解説し、「AIの特徴は、〝意味は考えていない〟ということ」と強調した。
さらに、2011年にIBMのAI、Watson(ワトソン)がアメリカのクイズ番組でチャンピオンを破ったというエピソードから、AIがいかにして質問に対する答えを導き出すかを紹介。質問文中の特定のキーワードをインターネット上で検索して答えを推測するため、「固有名詞を答える問題には強い」とした。さらに、Apple社のiPhoneに搭載されているAI、Siri(シリ)についても言及。
Siriに「この近くの美味しいイタリア料理の店は?」と尋ねると先述の方法で検索して答えるが、「この近くのイタリア料理以外の店は?」や「この近くのまずいイタリア料理の店は?」と尋ねても、実は「美味しいイタリア料理」を尋ねたときと同じ店を答えること、その理由は、Siriは「~以外の」という機能語や「まずい」という頻出ではない語を理解しないからだと指摘した。

統計と確率で動いているAIの可能性と限界

新井紀子氏の著作 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

新井紀子氏の著作
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

こうしたAIの仕組みを踏まえたうえで、新井氏らのチームは、東ロボくんの開発を進めた。センター試験では正誤問題が多くを占める日本史と世界史にターゲットを絞り、山川出版社の『詳説日本史』『詳説世界史』の情報をインプットして対策。1年間で100点満点中76点、偏差値66.5まで到達した。さらに、某予備校の東大模試では、偏差値50台が出た。東ロボくんにはアームがついており文字も書けるのだが、記述式問題の解答は問題文から推測して妥当だと思われるキーワードを拾い集めたもので、論理的文章としては成り立っていない。それでも偏差値50を突破したのは、「とりあえずそれらしい言葉を寄せ集めて書いたのは、東ロボくんだけじゃなかったということ」と新井氏は苦笑混じりに述べた。

こうして東ロボくんの開発が進み、今や国内の大学の7割には合格できるレベルにまで到達しているという。それでも、「統計と確率で動いていて〝意味〟を理解しない東ロボくんが、東大に入ることはない」と新井氏は断言する。
「私はこの研究を、AIの可能性と限界をはっきりさせるために行ってきました。つまり、ここまではできるけどこれはできない、このレベルの大学には入れるけど東大には入れない、ということを結果として残すためです」(新井氏)

中学卒業時までに基礎的読解力をつけることが公教育の最重要課題

ではなぜ、意味を理解しない東ロボくんが、意味を理解する人間よりも良いスコアを取ることができるのか。新井氏らは「そもそも、中高生は入試問題や教科書を読めているのか?」という疑問を持ち、シンプルな読解問題(リーディングスキルを問う問題)を数千題作問し、1000人以上の中高生に解いてもらった。その結果は驚くべきものだった。
「平均して中学生は約6割、高校生は約7割という正答率で、なかには3割以下の問題もありました。より詳しく見ていくと、正答率が低いのは機能語を正確に読めない人でした。つまり、AIにできないことを、人間もできていないということです。こういう人たちは、解説を読んで勉強する自学自習ができませんし、どれだけ勉強をしても伸びません。結果的に、AIに職を奪われる人材になってしまう。つまり、基礎的読解力が人生を左右するのです」
最後に新井氏は、「中学卒業時までに教科書をきちんと読めるようにすることが公教育の最重要課題である」とし、それは「主人公の心情や作者の意図を読み解くということではなく、シンプルな文章の意味が正確に読み取れるようにすることである」と力強く主張した。
新井氏の講演の興奮が覚めやらぬなか、SRJの佐伯康雄氏の閉会の挨拶で2019年度の全国大会は大盛況のうちに幕を閉じた。


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