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森上教育研究所「2019年入試 首都圏中学入試の結果と分析」セミナー開催

2019-04-01

中学入試受験者数、顕著に増加

2月18日(月)東京都内のアルカディア市ヶ谷私学会館において、(株)森上教育研究所(森上展安代表、東京都千代田区)主催「2019年入試 首都圏中学入試の結果と分析」セミナーが開催された。
セミナーの冒頭は、ゲストによる「教育 VS.AI」をテーマにした15分間のプレゼンテーションが行われ、第1講では今春の中学入試問題はどのように変化したのかを最新の資料で考察。
さらに第2講では、「大手塾分析」のゲストスピーカーにサピックス・広野雅明氏と早稲田アカデミー・千葉崇博氏に加え、今年は日能研関東から長谷川信誓氏を迎えて入試実態に迫った。

「教育 VS.AI」プレゼンテーション

[上] 大迫弘和 氏 [下] 前刀禎明 氏

[上] 大迫弘和 氏
[下] 前刀禎明 氏

冒頭の「教育 VS.AI」をテーマにプレゼンテーションを行ったのは、国際バカロレア(IB)教育の第一人者で武蔵野大学教育学部教授の大迫弘和氏と元アップル日本法人社長で実業家の前刀禎明氏。
「50年前にスイスで誕生した国際バカロレアは、国際的な人材を育成する最も完成されたカリキュラムと言われ、我が国で政府が動き出したのは2013年になります」と語る大迫氏。そんな大迫氏が強調するのは、芸術教育の重要性だ。
「AIが世界を覆っていくだろう状況の中、教育の使命が明らかになっています。それは芸術教育により内面的空間への回帰を促していくことです。『教育にアートを』というムーブメントを起こしたいと思っています」

前刀氏は「ものの見方」という観点からプレゼンテーション。世界経済フォーラムは、社会に出て必要なビジネススキルを提案しています。それを高めるのが、「クリエイティブインテリジェンス」。前刀氏らが開発したアプリでは、このクリエイティブインテリジェンスを磨くことができるとのことだが、それは5つの力で成り立っているという。
「目の前にあるものをよく観察し、そこにいろいろな可能性を考え、自問自答する。そして思いついたことを実際にやってみる。そうすると自分が考えたこととは違うこともある。さらに、そこでとどまらずに自分とは違う視点をもった人、自分とは違う考え方を持った人に相談をしてみる。一番重要なのが、発見したことを創造的に関連づける力です。なぜ今このような話をしているかというと、ご自分の、そして子どもたちの、長い人生の中で自ら『成長』していく力を身につけてほしいからです。言い換えると、ご自分の、そして子どもたちの無限の可能性をどう伸ばしていくかを考え、実践していただきたいと思います」と、前刀氏は述べる。

第1講
私立有名中学2019年入試問題4教科分析

[上] 神尾雄一郎 氏 [下]  竹内洋人 氏

[上] 神尾雄一郎 氏
[下] 竹内洋人 氏

「文章をまとめる」「自分の考えを述べる」等の問題が増加した「国語」

国語の中学入試の考察と分析を行ったのは、神尾雄一郎氏(株式会社ジーワンラーニング代表、NPO法人ロジケーション・ジャパン理事、開成中高弁論部監督)。
今年の首都圏中学入試では、特徴的なものとして、以下のような出題があった。

(A)「授業において生徒が学習する場面を想定した」問題(芝浦工大柏 一回 三・問二)
(B)「テクスト全体の構成や展開、表現の仕方等を評価する」能力を測る問題(豊島岡女子 第1回 二・問八)
(C)「情報を編集して文章にまとめる」能力の評価に関わる問題(世田谷学園 第1次 問十一(2))
(D)図表などをもとに、複数の情報を統合し構造化して考えをまとめる」能力を測る問題(春日部共栄 第二回午後四・問一・問二)
(E)「テクスト全体の要旨を把握する」能力を測る問題(公文国際学園中等部 A日程 3・問2)
(F)「テクストの精査・解釈を踏まえた自分の考えの形成」能力の評価に関わる 問題(吉祥女子 第1回 二・問八、フェリス女学院 [2]・問5、雙葉 一・問 二十一)
(G)「テクストを踏まえ、条件として示された目的等に応じて、必要な情報を比較したり関連付けたり」する能力を測る問題(灘 一日目 一・問6、城北埼玉 第1回 二・問9、西南学院 二・問7)

このうち(A)(B)は「平成31年 大学入試センター試験 国語」でも出題されている。「今後は契約書や議事録といった実用的な文章を題材にした問題が増えていくのではないかと思います」と神尾氏は予測する。

「なぜ成り立つのか」という本質を問う問題が多かった「算数」

算数の考察と分析を行ったのは、竹内洋人氏(みんなの算数オンライン主宰、算数オリンピック大会問題選定委員)。
今年の傾向として、点数の取れる問題と取れない問題がはっきりしていて、大学入試改革の影響か、分野横断的な問題、長文問題、会話型・手順穴埋め型で知識不要の問題解決過程を問う問題が多く見られた。ただしこれらの問題が合否に影響はしていないと考えられるという。
また、立体切断問題が上位校のみならず、幅広く出題されたという。
「立体切断問題は難しいですが、トレーニング次第で安定的な得点源に得ます」と竹内氏は語る。
一方で、丸覚えの知識や解法で解ける問題も相変わらず多いという。しかしその知識や解法が「なぜ成り立つのか」、「本質を理解しているかどうか」を問題も多く見られた。丸覚えの知識や解法が役に立たないわけではないが、差がつくのはその一歩先。問題設定はどこかで見たことがあるが、「問いが新しい」という問題も多かった。
合格者平均点の変化をみると、開成は昨年の86.9%から今年は76.0%にダウンし、10.9%の難化。大問4の長文問題以外は比較的オーソドックス。開成特有の面倒で複雑な計算はない。
豊島岡女子は74.0%から66.9%にダウンし、7.9%の難化。問題難易度の差が大きく、ミスができない。立体切断問題は難しいが理解しておきたい。
浅野は76.9%から84.8%にアップし、7.9%の易化。3年連続の易化で、過去5年で最も高い。〝標準的な問題を正確に解く力〟を磨くことが最優先とのこと。
鷗友は56.7%から72.2%にアップし、15.5%易化した。昨年、一昨年と比べるとシンプルな問題構成になっている。
浦和明の星は75.4%から82.8%にアップし、7.4%易化した。難問はないものの、この問題構成で82.8%も取るのはすごいこと。こういう力がやはり必要だ。受験する・しないにかかわらず、演習に取り入れたい良問揃い。
桜蔭は、最後大問4が難しく、実質的には1枚目の大問1、2が合否を分けたかもしれない。ただし、得点できそうでできない厳しい内容。
女子学院は、例年であればパッと見て解けそうな問題があるはずだが、今年はそのような問題がない。かなり平均点が下がり、算数では差がつかなかったのではないかと思われる。
「定番問題だけれども正答率が低い問題が合否を分けていて、今後もこの傾向は続くのではないかと思います。公式や解法テクニックを覚えるだけでなく、『なぜ成り立つのか』という本質を理解しましょう。そういう問題が出ています」と竹内氏は語る。

資料の読み取り、時事問題等が増加した「理科」

[上] 古谷広高 氏 [下]  早川明夫 氏

[上] 古谷広高 氏
[下] 早川明夫 氏

理科の考察と分析を行ったのは、古谷広高氏(JESDA/日本教育システム開発協会)。
今年は全体の傾向として4分野(生物・地学・化学・物理)まんべんなく出題されているが、なかでも生態系・食物連鎖、天体・大地、力学、水溶液がよく出題されているという。出題内容の傾向は、資料分析、グラフの読み取りなど、適性検査型と呼ばれるような問題が上位校で出題されている。また、身の回りのものを題材にした問題が多く出題されている。
古谷氏が注目した学校や問題は、まず麻布の大問2。コーヒーに関する問題で、身近なものを科学的にとらえる問題だ。しっかりとリード文があるので、情報を整理できれば解くことができる。
駒場東邦の大問4は、小笠原諸島の在来種と外来種の交配に関する問題。在来種を守る取り組みを考える問題などは、これまでに適性検査で出題されている。
開成は、例年に比べ、資料の読み取りに関する問題が増加している。

このような問題に対する指導方針は、まずは基本事項の確認、各分野の定番問題の習得だ。知識だけでなく、その背景までとらえることが重要だ。身の回りにあるものを科学すること。すなわち身の回りにあるものの原理や仕組みを考えること。そして、グラフについての理解を深める。理科でよく出題されるグラフを学ぶだけでなく、各グラフの適性、読み取り、作成まで学ぶ。自分でグラフを描けるようにしておくことも大切だ。
時事問題は多いので、火星の接近、月食、流星群、地震、火山の噴火、異常気象(台風、豪雨など)、生態系(絶滅危惧種、在来種と外来種)、遺伝子など、その年に起こった出来事はしっかりとおさえておくこと。
実験データの分析・考察、思考力を要する問題は、フローチャート、マトリクス、同型整理など思考を整理するものを身につけておくと役に立つ。
「中学受験のみならず大人になったときも非常に有効な力となります。整理することを知っておけば、覚えるときに分類して圧縮して覚えることができるので、実はそれほど覚えることはないことがわかります。日本語をしっかり読み取れるかどうかがカギになってきます」と、古谷氏は述べる。

昨年に引き続き易化、標準化した「社会」

社会の考察と分析を行ったのは、早川明夫氏(文教大学)で、共学校61校、男子校41校、女子校36校、計138校を分析した。
全般的な出題傾向は昨年に引き続き易化、標準化の傾向にあるという。
「138校を分析して改めて感じたことは、国語の力が問われるということです。問題自体は基礎基本が大半ですが、用語の意味が正確に把握されていないと解けません」と述べる早川氏。
選択肢問題で解答を複数にしたり、解答数を示さなかったりする問題形式が増加している。例えば「正しいものを2つ選
び、記号で答えなさい」「誤っているもの(正しいもの)をすべて選び、記号で答えなさい」など。
「よりよい働き方を実現するために、雇われて働く人同士が自分たちで作る組織を何といいますか。漢字4文字で答えな
さい」(桐朋②)、「主権とはどのような権利ですか。簡潔に答えなさい」(普連土①、類題・逗子開成②)、「日本国憲法に明記されている国民の義務として正しくないものを次のア〜エから一つ選び、記号で答えなさい」(吉祥女子①)など、憲法上の権利や義務を問う問題も多い。
また、資料の読み取り問題が増加傾向にある。圧倒的に統計資料が多く、特に新規作成の資料が増加している。さらに、記述問題の大半は原因・理由を問うものとなっている。
時事問題は多い。直接的な出題も多いが、時事問題を切り口、ないしは念頭においた出題が増加傾向にある。
入試対策としては、何よりも子どもの「はてな?」を大切にすること。「はてな?」から」「なるほど」へ。「はてな?」「なぜ?」「どうして?」を念頭に教科書や本を読むこと。「なぜ名字や地名は漢字2文字が多いか?」など、身近なもの、当たり前といわれていることにも疑問を持って、様々な視点(立場)から考える。
さらに、歴史を知ると「モノの見方や考え方」が変わるので、歴史を知ること。絶えず社会のアンテナを張り、小学校の教科書を精読することも重要とのことだ。

第2講
受験生動向からみた今春入試 大手3塾分析

[上] 広野雅明 氏 [下] 千葉崇博 氏

[上] 広野雅明 氏
[下] 千葉崇博 氏

[男子校]
サピックス/広野雅明 氏
(広報・企画部部長、小学部)

2月1日の入試では特に男子が昨年よりも大きく増え、午後入試も積極的に受ける子どもが増えた。その影響として2月2日の受験では、1日に受けた学校に合格したときは、出願したにもかかわらず受験しなかった子どもが結構いる。そして1日あけて3日に再チャレンジする。どの学校も、昨年に比べて午後入試の受験率が高まっている。
【麻布】上位の人数が増え、そこが激戦になっている。
【海城】昨年より上位の生徒が受験。試験問題が非常に難しかった。
【早稲田】志願者は減ったが、難易度はまったく下がっていない。
【栄光】今年は激戦だった。
【本郷】試験問題が難しかった。年々難化している。
【浅野】試験問題が非常に難しかった。
【明大中野】サピックス生では受験者が急増。難易度が高くなっている。

サピックス小学部を卒業する小6生のうち、約5%の子どもたちが小1から通塾。4%が小2から、小3からが昨今増加し約30%を占めている。小4からが前半と後半合わせて47%、小5からは10%強、小6からは今や3%ほどになっている。
「中学受験というのは、お子さんにとってもご家庭にとっても相当大変なことでございます。ただしその努力をしたという事実こそが一番お子さんを成長させると思います。学校様は、こういったお子さんの努力の成果が反映できる入試問題を作成していただきたいと思います」

[女子校]
早稲田アカデミー/千葉崇博 氏
(教務本部 副本部長 兼 中学受験部長)

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早稲田アカデミー生の特徴として、2月1日の午前受験した生徒のおよそ45%、半数近い生徒が午後受験をしている。中学受験者数は増えていて、女子校も受験生が戻っているとはいわれているが、やはり共学校に押されていると思われる。
2019年の出願校数は平均7.09校で、受験校数は5.23校。受験校数は昨年と同じだが、増え続けている。受験校数を押し上げる要素は、午後受験率が高まったことと、埼玉・千葉居住者の東京校・神奈川校の受験率が高くなり、88.6%に上がったことが挙げられる。昨年(2018年)は82.4%、一昨年(2017年)は77.3%、2016年は75.5%だったので、近年急激に東京校・神奈川校の受験率が高くなっているのがわかる。
2月1日午前入試の女子校についていえば、吉祥女子の受験者数が相当多くなっている。吉祥女子に限らず、人気を集めている学校はぐんぐん受験者数を伸ばしているが、一方では生徒集めに苦しんでいる学校もあり、二極化傾向がみられる。
公立中高一貫校の中でも人気上昇中の学校があるが、女子は小石川、三鷹、相模原の受験者数が伸びている。特に上位の私立女子校は生徒が奪われかねないので意識しておいた方がいいかもしれない。
今年の入試の特徴として、2月3日以降の入試が激戦だったことが挙げられるが、2月5日の大妻の実質倍率は7.89倍にも上り、注目に値する。
「2月3日以降が激戦となると、いかに1日、2日で生徒が通いたいと思う学校に合格させてあげられるかが、私たちの大きな課題になってくると思います」早稲田アカデミー生(私国立中受験コース・公立中高一貫校受検コースのみ対象)の入塾時期は、小1が1.5%、小2は2.4%、小3は32.9%、小4は27.7%、小5は22.3%、小6は13.1%で、小3からの通塾が最も多くなっている。居住地は東京が62.7%で最も多く、次いで神奈川(15.4%)、埼玉(10.8%)、千葉(9.6%)の順になっている。

[共学校]
日能研関東/長谷川信誓 氏
(関東中学情報部)

長谷川信誓 氏

長谷川信誓 氏

日能研における今年の出願者数トップ3(東京)は、広尾学園が最も多く、東京都市大等々力、開智日本橋学園と続く。出願増加率(東京)は、目黒日本大学で、八雲学園、東洋大学京北の順となった。
神奈川の出願者数トップ3は、山手学院、法政大学第二、神奈川大附属。出願増加率は、山手学院、青山学院横浜英和、横浜創英。埼玉・千葉の出願者数トップ3は、埼玉が栄東、開智、大宮開成、千葉が東邦大付属東邦、市川、専修大学松戸。
出願増加率は、埼玉が浦和ルーテル学院、開智、浦和実業学園、千葉は成田高校付属、昭和学院秀英、麗澤。
公立中高一貫校の出願者数トップ3は、神奈川県立相模原、都立三鷹中等、都立小石川。出願増加率は、さいたま市立浦和、千葉県立東葛飾、都立三鷹中等。
各学校から言われるのは「今年は歩留まりがよかった」。歩留まりが多かった原因は、まず受験生が多かったこと。上位校のみならず中堅以下の学校も受験生が多かった。そして第1志望が多かったことも挙げられる。もう一つは入塾のタイミングが低学年化していること。しかし日能研では小5からの入塾者も結構多いとのことだ。
「5年生から入塾するご家庭の特徴は、志望校へのストーリーがすでに出来上がっていることです。人気のグローバル校1校と都立を受験することが多いです。成功体験をお持ちのお父様が多いので、ほかにいろいろな学校を紹介してもなかなか話を聞いてもらえず、結果として受験校は少なく、1校決まったらそこに進学していきます。」
最近の保護者は、最終的な学校選び、進学する学校は子どもに任せる傾向があるという。子どもが入試問題を気に入ったからとか、入試の際の対応がよかったからとか、予想外の理由で進学先の学校を決めている。だからこそ、子どもたちに決めてもらえるような、子どもたちが通って楽しいと思えるような取り組みを学校にはしてほしいと訴えた。

2019 年 首都圏私立中学入試 受験者数動向分析 〜分類要素による〜

2019_4_p43_pdf

当分析のデータは、複数回入試の中で、最初の入試、午前入試、一般入試、入学者が多い入試などの条件で、最適な入試を1校で1つだけ選んで受験者数を集計。
2018年中学入試受験者数は多少の増加(1.2ポイント増)から、2019年は顕著な増加(4.3ポイント増)になった。原因は、2019年入試では首都圏の小6人口が2018年入試よりも3.5ポイントの増加となったことが大きいと思われる。さらに、中学受験比率前年対比が100.4%の微増ながらも、増加要因となった。
なお、中学受験比率は、「2020 年大学入試改革」と「私立中高のグローバル化」の影響があると思われる。


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