株式会社 CA Tech Kids
上野 朝大　代表取締役社長

CA Tech Kids・上野朝大 社長

小学生のためのプログラミング教材『QUREO（キュレオ）』を運営する株式会社CA Tech Kidsは、インターネットメディア事業、インターネット広告代理事業を行う株式会社サイバーエージェント（東証一部上場）のグループ会社で、2013年に設立された。次世代のイノベーターを育成するという方針のもと、小学生向けプログラミング教育事業を行っている。
『QUREO』の特色や今後の展開について、上野朝大社長に話を伺った。

2013年からプログラミングスクールを運営

プログラミングをする子ども

「親会社であるサイバーエージェントは、インターネットを活用したメディア事業、広告代理事業を行っている会社です。最近ですと『Abema TV』を配信していると言った方がわかりやすいかもしれませんね」と語る上野社長。
そんなサイバーエージェントが小学生向けプログラミング教育事業を行う専門会社「CA Tech Kids」を立ち上げ、スクールを運営することになったのは、ちょうどプログラミング教育の議論が高まる中、IT企業としてIT企業ならではの社会貢献のやり方がここにあると考えたからだという。2013年のことだ。
「さらにこの6年間で世の中も大きく変わり、特に2016年、プログラミングを小学校で必修化すると発表されてからはプログラミング教育がますます注目され、おかげさまで弊社も注目いただけるようになりました。設立当時は、小学生にプログラミングを教えるという前例のない分野で、ましてや当社は教育事業も初心者でしたから、カリキュラム内容や教材の用意も手探りという状況でした」しかし実際にスクールやワークショップを5年間運営し、延べ3万人以上の小学生にプログラミング教育の機会を提供してきたなかで、手応えを感じるようになったという。「子どもたちのなかには機会と環境があれば驚くようなスピードで成長をみせる子がいます。大人顔負けのスマホアプリをリリースする生徒も出てきました。そうやって出る杭をさらに伸ばす機会を提供する一方、これが都心部の一事例であってはいけないとも考えています」

各地方自治体などとプログラミング教育の推進に取り組むなか、「プログラミング知識を持つ指導者、小学生にとって優れた教材、この2点の不足が課題」と感じたことから、オンラインで学ぶ教材として『QUREO』を開発し、塾事業者などへの提供に至ったという。

生徒は楽しく飽きずに学習でき、先生も指導のしやすい仕組み

成績機能と進捗状況も搭載されている

『QUREO』は「Scratch」（※参照）をもとに開発されていて、テキスト入力不要の「ビジュアルプログラミング」を採用。タイピングができない子どもも英語がわからない子どもも、プログラミングの考え方を学ぶことができるという。
最大の特長は、とにかく楽しく手軽に学習できること。レッスン1回につき1つのゲーム作品を完成させるので、達成感を得やすく、飽きっぽい子どもでも楽しみながら継続的に学習できることだ。
「実際のゲームの素材を使っているのでデザインも魅力的です。お子さんの心には刺さるはず。これもサイバーエージェントの強みといえるでしょう」
全部で60チャプター、480レッスン入っており、週1回のレッスンとしても2～3年はかかるという。
「1レッスンは15分程度ですが、当然のことながら先に進むほど難易度は上がっていきます。授業設計としては、多くの塾さんは1コマ45分から長くても60分に設定していますね」
実際に子どもにプログラミングを教えるのは、PC画面に現れる「アルゴ」というキャラクター。アルゴと生徒の1対1が基本なので、一人ひとりの子どものペースに合わせて進度を調整することも可能だ。

オリジナル作品の発表会

プログラミングの学習とはいえ子どもがQUREOで学んでいるのを見ても、保護者は単にゲームで遊んでいるようにしか見えないかもしれないが、どの程度プログラミングの知識が身についているのかがQUREOでは可視化できるという。
「プログラミング教育の課題の1つとして評価が難しいというのがありましたが、QUREOではそれができます。法人様限定で生徒の学習状況をデータ集約し、正誤判定から成績表を出す機能を搭載しています（特許出願中）。レッスンの進捗や項目ごとに理解度が把握できるので、保護者にデータを見せて説明することもできますし、生徒にアドバイスすることもできますので、保護者も生徒も学習の手応えを感じることができるんです。例えば、この項目でつまずいていたが3カ月経って理解度がAになった、などと保護者にも説得力をもって説明できるので、QUREOを導入している法人様にはとても喜ばれていますね」
プログラミングをするには、座標、関数、変数など、いわゆる数学の知識が必要だが、QUREOで学習するうちにいつのまにか数学力がアップするのも大きな魅力といえるだろう。

※【Scratch】米国マサチューセッツ工科大学で開発され、全世界で2,300万人が利用する子ども向けプログラミング学習ソフト。日本でも小学校や多くのプログラミング教室で使用されている。

全国の学習塾に『QUREO』を広めたい

Tech Kids School 渋谷校でプログラミングを学ぶ子どもたち

CA Tech KidsはもともとがIT企業だっただけに、本格的なプログラミング教育を子どもたちに提供し、技術を使いこなせるようになってもらいたいと考えている。
「当社の直営スクールはあくまでスキルアップに重きを置いているので、3年間のカリキュラムの中で2年目からは大人と同じプログラミング言語を学んでもらいます」と上野社長は語る。
実際、同社が主催した全ての小学生が応募できるプログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix」では、位置情報や天気APIを使ったアプリ、VRゲームなど、小学生がハイレベルな作品を続々出品している。最優秀賞に輝いたのは、独学でプログラミングに取り組む京都の小学生だったというから驚きだ。
学習の機会さえあれば、日本全国にそうした才能を発揮する子どもがいるはずだと考える上野社長は、全国の学習塾にQUREOを導入してもらいたいと語る。
「プログラミングそのものを教えるのはキャラクターなので、先生にプログラミング経験がなくてもまったく心配はいりま
せん。知識の学びや成績表の作成は教材に任せ、先生方には本質的な指導に時間を割いていただけます。研修もありますし、ご要望に応じて募集チラシの作成や体験会の設定など、あらゆることをサポートさせていただきます」