
教育資源としての民間教育 第9回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
教育は学習者のためのもの
教育の目的が、一人ひとりが幸せに生きていくためのもので、その総和として社会がより良くあり続けていくためのものであるならば、「教育は誰のものなのか?」と問うとき、それは学習者のものであり、多種多様な学習者にとっての未来や志に添った学びの自由が存在するのではないでしょうか?
もちろん、基礎基本は自由な挑戦や思考を深めるためには必要不可欠であります。しかしそのような基礎基本に学習者がその先の目的を持って取り組むことが出来ているのか?学習者の学ぶ意志や目的は十分な状態でいるのか? という視点もまた重要ではないかと感じます。「基礎基本=絶対服従の我慢してやること」では本来ないはずです。
「寄らば大樹の陰」という言葉がありますが、昨今では何が大樹なのか、これからもずっと大樹なのか、絶対的な未来が見えにくくなってきていて、それよりも子ども自身の個人の力、個人の興味関心、個人の得意なことは何なのか?保護者としても「わが子の個性は何なのか?」という視点が、若い保護者を中心に少しずつ大きくなってきているように思います。
入試にしても、思考を表現することが問われ、そこに自分という個がないと対応しにくい状況が生まれ、「あなたならどうするか?」「あなたには何が出来るのか?」というものが問われ始めると、現在の大人がかつて子どもの頃「一人だけ勝手なことをしちゃダメよ、ちゃんといい子にしていなさい」「みんなに迷惑をかけないように、みんなに合わせて行動するのよ」と言われて、あまり考えることもなく聞き分けよくしていたことは何だったんだろうかとさえ思う時があります。「自分たちの修学旅行の頃はがんじがらめだったのに、今の子どもたちは自由だなあ」などと思う保護者も少なくありません。
目的のない学びから目的のある学びへ、興味関心と共に得意を伸長していく学びへ、と経済産業省はその重要性を重視する提言を発表しています。未来をたくましく生きていかねばならない子どもたちに、自分自身がワクワクする興味関心から学びが生まれ、基礎基本とマイプロジェクトの間を行ったり来たりする実践的な学びの姿を提言しています。現状の学校教育だけではなかなか実現しにくいその姿を、この国の教育を様々な形で支えてきた民間教育にこそその実現に向けた力を発揮してほしいという強いメッセージを発信されています。
民間教育は一様ではなく、様々であるからこそ力強く、現に意見も取り組みも様々であると思います。それだけに学びの自由化の中で、個々が、未来と幸せと興味関心と志等々のために目的を持ってワクワクして学び輝いていける社会全体での学びのプラットフォーム化に、民間教育業界にも関心が寄せられています。
変わるべきでないこと、変わっていかなければならないこと、川の流れのように、業界全体で情報を共有して、良い存在感をこれまで以上に社会で示していけますよう、全国学習塾協会を様々な形でお支えいただけますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。