
全国学習塾協同組合(AJC)が関西支部兵庫設立を記念し、スタートアップセミナーを開催
公益社団法人の全国学習塾協会と並び、塾業界の二大業界団体である経済産業省の認可団体・全国学習塾協同組合(以下、AJC。森貞孝理事長)がこの度、関西支部兵庫を設立。そのPRを兼ねたスタートアップセミナーを4月24日、神戸の私学会館にて開催した。
代表幹事に元ユーデックの川東義武氏
AJCは平成4年に設立された塾の業界団体だが、塾の公益性を追究する全国学習塾協会とは一線を画しており、各塾の経営にプラスとなる共同購買や共同広告制作等を行う相互補助組織だ。東京や千葉での加盟塾は多く点セミナー等も頻繁に行われているが、関西には活動拠点がなく、関西支部の設立を望む声は以前から多かった。
そこで白羽の矢が立ったのが(株)ユーデックの創業者、川東義武氏だ。
川東氏は大学在籍中に塾の講師をして以降、のちに上場することになる塾の立ち上げに参画。ユーデック設立後は模擬テストや進学情報誌の発行、私立学校の学校案内制作などを通じ、約40年にわたって塾業界の発展に尽力してきた。その人望と実績を買われ、関西支部の代表幹事を任されることになった。今回のセミナーは告知後に申し込みが殺到し、一時はキャンセル待ちが出るほどの人気に。塾関係者、私学関係者、教育関連企業から計131名が参加し盛会となった。
森貞孝理事長がIT導入補助金活用呼びかけ一次公募交付申請は6月4日まで
川東氏の挨拶のあと行われた森貞孝氏による講演は「AJCの役割とこれからの教育」について。AJC設立のきっかけとなったのは、氏がかつて学習塾協会の理事長をしていた折り、会員募集の際に寄せられた塾経営者からの声だという。当時は塾が「必要悪」とさえ言われ、塾の地位があまり高くなかった頃。学習塾協会が通商産業省(当時)に認可されたことを受け、「塾業界の地位向上になります」と各塾を回ったところ返ってきたのは「うちの塾にどんなメリットがありますか?」「入試情報を得られますか?」「教材の情報が得られますか?」といった実利を求める声だった。通産省でその話をしたところ「それは学習塾協会の役割ではないので協同組合をつくってはどうか」との助言を受けたことから、AJC設立へと至ったのだという。
その後は「各塾の経営にプラスになること」に注力し、組合賛助企業(印刷・制作会社)のプロデザイナーによるデザインチラシを格安で利用できる共同広告事業や、様々な情報を得られるようにと大規模な教材展の開催、定期的な勉強会、補助金申請のサポートなどを行ってきた。中でも補助金申請においてAJCの指導を受けた塾の申請通過率は驚異の9割超え(通常の通過率は1割程度)だという。
今、一番のオススメは経産省が業務プロセスの見直しやIT化による生産性向上を目指し、中小企業向けに行うことになった「IT導入補助金」による直接支援(平成29年度補正500億円、約13万社)だ。この「IT導入補助金」の特徴は、先に経産省側で審査を行い「IT導入支援事業者」を選別。塾はそれらの事業者が提供する多彩なITツールの中から自塾のニーズに合ったツールを選択することができるといったもの。
最大50%の補助金が支給されるが、補助金交付申請の際のサポートはIT事業者が行うことになっているため、非常に利用しやすくなっている。
第一次公募交付申請の締め切りは6月4日(月)となっているので、「利用を検討中の塾はぜひとも急いで欲しい」とのこと。
このほか、自民党による「民間教育に関する国会議員連盟」を発足させたと報告があった。これまで学習塾出身の民主党議員・大島九州男氏による議員連盟は存在したが、「与党での議員連盟もないと何も通らない」として、森氏が自民党議員諸氏に長年働き続けた成果だという。
少しでも学習塾にとって良い環境へ、良い法整備へと今後も活動していくとのことで、出席者らにAJCへの賛同と加入を呼びかけた。
未来で活躍する人財と教育の役割講師/和田孫博氏(灘中学校・高等学校校長)
大学入試改革が実施される2021年春以降、求められるのは文科省が定義する「学力」の3要素だ。すなわち「基礎的・基本的な知識・技能の習得」、「これらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力など」、「主体的に学習に取り組む態度」の3つがこれである。今の子どもたちが生きていく20〜30年後の日本では急激な少子化が進み、
社会も大きく変わっている。競い合いは助け合いへ、内需は海外へシフトし、労働力は外国人に依存するようになる。AIが人々の仕事を奪うとも言われている中、活躍できるのはICTを駆使できるグローバルな人財だ。外国語が重要なことはもちろんだが、単に外国語ができるだけでは意味がない。東京大学の総長であった濱田純一氏は学生に「タフでグローバルな東大生であれ」と学部教育の総合的教育改革のスローガンとして強調されたそうだ。ここでいうグローバルも「海外で活躍できるという地理的意味」ではない。真のグローバリストに必要なものは「未知の世界に出たとき、対応できる力」、「異文化コミュニケーション」だ。そのため、まずは自国文化を理解した上で他の文化を知ることが重要とのこと。多様な人々と協働するための、主体的に学ぶ姿勢、知的好奇心、自主性、自立心、自分を省みる批判的精神を身につけるには私学の中高一貫校が圧倒的に有利とのことで、灘校で実際に行われている事例紹介をし、講演を締めくくった。
全国学習塾協同組合への加入について
■出資金:1口20,000円(脱会時に定款に従い返金)
■会費:1カ月2,000円(年2回分割納入)
■加入特典(一部抜粋)
・研修や講演を通じての組合員同士の交流会
・法務、労務、保護者対応など個別相談窓口
・AJC会員だけが加入できる塾保険
・組合誌の発行
・大規模教材展の実施
・保養所など福利厚生の充実
・小学校英語用オリジナル映像教材の提供 など