
教育資源としての民間教育 第38回
公益社団法人 全国学習塾協会 安藤 大作 会長
災害時の子ども支援にかかる連携と協力に関する包括協定
原稿の締め切りを気にしながら遅い筆を運んでいる本日は、2021年3月11日。
東日本大震災から10年目の今日でもあります。
死者15,000 人以上、行方不明2,000 人以上の未曽有の大災害。
しかし、むろん被災者はこれだけにとどまるものではありません。例えば、被災した子どもたちには多くの困難が襲いかかります。 何もする気が起きない、集中力が下がる、学習に向き合えない等の「無気力、学習意欲の低下」。指しゃぶり。暗闇を怖がる、おねしょ、おんぶ抱っこの要求等の「退行(赤ちゃん返り)」。騒がしくなる、暴力的になる等の「気分の高揚」。音や光に過剰に反応しドキドキする等の「過敏反応」。そのほかに不眠や体調不良など、これらは、被災という異常な状況に対する正常な反応といわれています。
こうしたことがベースにあって、さらに子どもたちに具体的な苦難がのしかかります。
ある中3生男子。
自宅が全壊して避難所生活。
学校の休校期間は1カ月。
勉強道具が流され、受験生だけど勉強ができない。段ボールの上での勉強。経済的に塾へも行けず放課後わからないことを教えてくれる人もいない。
日中面倒を見る大人がいないため、時間があれば寝床でスマホ。
「少しそこどいてもらっていいかな?」の言葉がけに突然泣き出す小4女子。
ふとしたきっかけでフラッシュバックを起こし自傷行為をしてしまう高1女子。
子どもたちは大きなストレスを抱え、被災体験による精神的な不安や学習の遅れは、子どもたちの未来を大きくゆがめかねません。
そのために子どもたちには少なくても3つの支援が必要です。「自由に遊ぶなどストレスを解消できる安心安全な環境」「学習の遅れが起きないよう、塾や公民館などオンライン等も活用した学習環境の提供」
そして「こうした居場所づくりや子どもたちへのヒアリングを通じた心のケア」。
こうした懸念や課題に学習塾は何ができるでしょう。
公益社団法人全国学習塾協会では、令和元年10月に三重県、認定特定非営利活動法人カタリバの三者間で、「災害時の子ども支援にかかる連携と協力に関する包括協定」を締結しました。
協定の主な内容は次の通りです。
① 災害時における子ども支援の活動場所の確保
② 災害時における活動支援人材の確保
③ 災害時における子どもたちの情報の共有及び子どもたちへの情報 伝達
④ 平常時からの官民連携・協力会議の設置と事前協議
いつかは分からない、でもいつかは来る子どもたちの苦難に備えて──。
私たち協会は、子どもたちの未来のためにこうした公益的な活動の輪をこれからも広げ、続けてまいりたいと思っております。