
首都圏中学模試センター 35周年記念祝賀会
社名を「ONETES(株)」へ変え、飛躍を宣言
9月22日(月)、(株)首都圏中学模試センターは東京ドームホテルにて「35周年記念祝賀会」を開催した。第一部は「中学受験教育フォーラム」で、「中学受験の過去・現在・変化・未来」と題し、同社の北一成氏、鈴木達也氏、野尻幸義氏、代表取締役社長の山下一氏が続けて登壇。
2026年3月には社名を「ONETES(株)」に変更することが発表され、新時代の中学受験に対応する、未来の「テストセンター」へと変化することを宣言した。
第一部 中学受験教育フォーラム
中学受験の過去
首都圏中学模試センター 取締役教育研究所長 北 一成 氏
1986年から2025年までの40年間の中学受験者数の推移や新設校・共学化校の記録、関連する出来事などを記した年表を見ながら、過去を振り返った北氏。
「1985年に大きな動きがあったと記憶しています。麻布中が2月1日・2日の2日間入試から2月1日の単日入試となり、他校との併願が可能になりました。このことはその後の単日入試にも大きな影響を与えたと思います」と話す。
1991年には受験者数が5万1000人となり、第1次中学受験ブームのピークを迎える。しかし、1992年にバブル景気が弾け、2000年には4万100人と、ピーク時から1万人以上減少した。同年には共学の慶應義塾湘南藤沢中等部が開校。この頃から私立中学の新設、再開校、共学化がさらに進んでいった。
2002年に学習指導要領が改訂され「ゆとりのカリキュラム」が実施されると、ゆとり教育への不安から再び私立に注目が集まり、第2次中学受験ブームが到来。2007年の受験者数は5万500人となった。しかし、その翌年2008年にリーマンショック、続いて2011年に東日本大震災が起き、またも経済的な影響で中学受験者数は減少に向かう。
そして「現代までにつながる動きとして、2015年に三田国際学園と開智日本橋学園が校名変更し、共学化したことがありました。ここから21世紀型の教育、新しい学びを広げていこうという動きが拡大していったと捉えています」という。
そこから2023年まで9年連続で受験者数は増加。2021年度から始まった「大学入学共通テスト」で問われる思考力・表現力・判断力、英語の4技能の力を身に付けるため、中高一貫校への期待はさらに高まった。また、2015年以降は中学入試の多様化が加速。適性検査型や英語入試など「新タイプ入試」が増えていった。
「2023年は第3次中学受験ブームが3回目のピークを迎え、受験者数は5万2600人になりました。ピークは超えたとはいえ、2025年は5万300人と、たった300人しか受験生は減っていません。いまだに中学受験ブームは続いています。私立中高一貫校の新しい学びに対して、保護者の期待が寄せられていると感じています」と語った。
中学受験の現在
首都圏中学模試センター しゅともし教育研究所フェロー 鈴木達也 氏
鈴木氏は「入試最新情報」「模擬試験の志望者数から見る最新の志望者動向」「2026年入試以降の中学受験者数はどうなるのか」の、3点について語った。
「ここ数年、算数理科の2科目入試、国算理社英から1科もしくは2科の得意科目を選ぶ選択型の入試が増えました。また、プレゼンテーションやグループワークといった社会に出てから必要となる力を問う入試や、英語資格の加点優遇制度を導入する学校も増えています。このことから、受験生の得意なところ、長所を見る入試が非常に増えていると思います」
志望者動向は、同社の合判模試(7月6日実施)の志望者数で増加している学校ベスト20から考察。ランクインしたのは、十文字中学以外すべて共学校で、共学校に受験生の目が向いていることがわかる。ベスト20の学校は偏差値やエリアも様々で、「多様な視点、様々な選択肢から、学校選びをしていることを改めて感じます」と鈴木氏は話す。
今後、一都三県の児童数は減少していく。2026年以降も受験者数を維持するには、受験率を現在の18.1%から19%〜20%に上げる必要がある。そうした課題解決に向け「受験生、学校と塾の橋渡し役として、これからも協力をさせていただきたいと思っています」と話した。
中学受験の変化
首都圏中学模試センター 教材企画ディレクター 野尻幸義 氏
野尻氏が語ったのは、中学受験の変化という形で教育から見る日本社会の現状。「各校の先生方からよくお聞きするのは外国籍の生徒が増えているということ。反対に帰国生はコロナ禍で海外から撤退する企業が増えたことから、徐々に減少しています」
首都圏中学模試センターのHPにはマイページがあり、そこには学校説明会などに行った際、メモが書き込めるようになっている。野尻氏はそこに書かれたワードで多かったものを紹介した。
2018年は「偏差値」「共学」「納入金」「進学率」「生徒さん」が多かった。2019年以降はそれらに加えて「校風」や「給食」が増加。2023年は「生徒」の割合が大きくなっている。文化祭などでその学校に通う生徒と触れ合うことが多くなったためと思われる。「校風」や「生徒」の増加からは、保護者が我が子と学校のマッチングを意識していることがうかがえる。
「今年の6年生は小学校1年生時にコロナ禍での入学を経験し、新しい学習指導要領のカリキュラムを受けてきた子どもたちです。この年代が一つの節目になるのではと思います。AIが日常生活にも普通に使われる社会になり、保護者の働き方も変化してきました。時代の変化に対応できるような学力や能力を育ててもらいたいと保護者は期待しているのだと思いますので、今後とも先生方とともに中学受験を盛り上げていきたいと思います」
中学受験の未来
首都圏中学模試センター 代表取締役社長 山下 一 氏
来年の3月1日にONETES(ワンテス)(株)に社名を変更する首都圏中学模試センター。山下一氏は「ONEには唯一無二、一人ひとり、誰一人取り残さないという意味があります」と話す。
TESはTalent Empowerment Service(タレントエンパワーメントサービス)の略で、タレントは一人ひとりが持つ、かけがえのない才能や個性。エンパワーメントはその子が持つ本来のチカラを解き放ち、可能性を最大化するための支援。サービスは学校・塾・家庭をつなぐ架け橋となり、学びと進路を共に描く、という意味が込められている。
これまで中学受験ブームはピークを超えると、女子校の志望者が減る傾向があった。しかし現在はそれがなく、むしろ中堅女子校の志望者が増えている。山下氏はその変化を捉え、「今までの価値観や評価軸が通用しなくなるような、構造的な変化が始まっています。評価軸次第で、人間の能力の評価が変わる時代が来る。新しい中学受験に対応するため、従来の模擬試験会社から新時代のテストセンターへと進化する必要性を感じ、思い切って社名を変更しました」と語る。
同社は中学入試の未来予測として、「偏差値マッチング」から「多次元的マッチング」へ根本的に変化すると予想する。すでに同社では、点数や偏差値に変わる新しい学力の基準「思考コード」を開発・活用している。
「子どもたちには様々な才能があり、色々な可能性を秘めています。今までのような面接方法ではなく、AIによってじっくりとその子どもの魅力を最大限に引き出すような面接方法が出てくるのではないか。実際、対話型AIを使い、社長のアバターと面接する企業も出てきています。
他にも、科学的な根拠をもとに最短で合格できる方法の研究や、学校との相性なども含めて何らかの方法で受験生と学校をマッチングさせる方法を考えていきたい。先生方にも協力していただきながら、新時代を作っていきたいなと思っています」と語った。
第二部の祝賀会では、来賓の挨拶として、全国私立学校審議会連合会会長で八雲学園中学校高等学校理事長・校長の近藤彰郎氏、日本私立中学高等学校連合会長で富士見丘学園理事長・富士見丘中学高等学校校長の吉田晋氏、(株)中萬学院取締役相談役の中萬隆信氏が登壇。
乾杯の発声は(株)学研教育ホールディングス代表取締役会長で(株)市進ホールディングス代表取締役会長の下屋俊裕氏が務め、盛大に祝賀会が開催された。





































