
ウイングネット春セミナー 2025
変わる学び・変わらない理念
新課程入試と多様化時代に求められる戦略と戦術
4/20 大阪4/27 東京で開催
株式会社ウイングネット(荻原俊平代表取締役社長 東京都)が主催する「ウイングネット春セミナー2025」が、4月20日(日)にAP大阪茶屋町(大阪府大阪市北区)で、4月27日(日)に秋葉原UDXギャラリーNEXT(東京都千代田区)で開催された。
第1部は推奨講演「新課程で入試はどう変わった?」と題し、それぞれの地域に特化した内容でパネルディスカッションが行われた。第2部は「パフォーマンス拡大」をテーマとしたグループディスカッション、第3部はウイングネットからのご提案「新システムと新コンテンツによる受講戦略・夏期講習講座設計」が実施され、全国から塾・予備校関係者をはじめ、総勢250名を超える教育関係者が会場に集まり、意見を交わした。
[第1部 東京会場]
新課程で入試はどう変わった?
~ウイングネット講師が語る 新課程受験情勢と受験戦略~
(株)ウイングネット常務取締役 平塚正樹 氏
市進予備校・ウイングネット英語講師 丸山大地 氏
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新課程入試の設問文字数は去年と比べ減少
東京会場の第1部では、(株)ウイングネット常務取締役の平塚正樹氏と、市進予備校やウイングネットで英語の講師を務める丸山大地氏が登壇。今年から高校の新教育課程に対応し、7教科21科目に再編された大学入学共通テスト(以下、共通テスト)について分析した。
まず共通テストの概況について。志願者数は49.5万人であり、現役志願者数は45.5%と過去最高である。一方、大学受験者数は67.1万人。その中で実際に受験した生徒の数は46.2万人で、受験率は93.3%となった。
また、平均点は英・国・数の基幹3教科が600満点中350点で、前年から6点増えている。6教科8科目は1000満点中、理系が633点、文系が620点、どちらも平均点は去年と比べて上昇した。
各教科の新課程に変わってからの出題の違いについては、全体的に設問に関する文字数の減少が挙げられる。特に英数国基幹3科目にこの減少が見られた。
「新課程において、情報を読み取って、それをどう表現するのかを評価することが理念とされているのですが、なぜか、文字数が減っています。
今年の英語の問題は5600語であり、去年の6300語から700語減りました。リーディングに関しても、読まなくてもよい部分を飛ばすと文章量が減っているのではないかと思います」(平塚氏)
「リーディングは、字数が減った分、受験生にとって考える時間があったと思います。英文を読む力、書く力を伸ばした受験生は点数を取れたでしょう。
リスニングに関しては、去年と大差はありませんでしたが、語彙が少し難しくなった印象があります」(丸山氏)
「リスニングは去年までが易しかったので、難しくしようとした意図があったのかもしれません。国語に関しては試験時間が10分間延長されて図表の読み取りの問題が加わり、90分になりましたが、その問題は易しくなっていました。設問の選択肢も5択から4択に減らされていて驚きました。これまでの問題では、選ばなくてもいいような選択肢が含まれていたので、今年はそれを抜いたのでしょう」(平塚氏)
新設科目である情報Ⅰの平均点は69.2点
数学に関しては、数学ⅠAは選択問題がなくなり、すべて必答になった。数学Bと数学Cは大問4問から3問を選択。また、試験時間が60分から70分に10分間延長されている。
平塚氏は「数学Ⅱが少し難しく、BCの配点が少なくなり選択問題は易しかった」と述べた。
理科社会の内容に変化はない。
「歴史総合に関しては、近現代史がポイントになると言われていましたが、実際には世界史寄りの問題が出されました。設問の時代を判別するのに、日本史だけを学んでいる受験生にとっては難しかったと思います。また、公共と政治・経済の受験者は急増しました。
新設科目の情報Ⅰは易しく、平均点は69.2点でした。来年は難化してほしいと思います」(平塚氏)
続いて英語と数学における平均点の度数分布について解説。英語のリーディングの平均点は57点だ。「リーディングの平均点が60点を超えられなかったのはショックでした。英文を読み切れれば、点数は取れるはずなのです。今の高校生は読む訓練を積まずに、文法の勉強にかじりついているのではないかと思いました」(丸山氏)
共通テスト利用の私大は900校
続いて、新課程入試の総括へと移った。
「今回は少し易しすぎた印象があります。また、選抜試験として機能させようとしていること、学力が低下して、二極化が起きていることが要因ではないでしょうか。2022年には数学の試験が難しすぎて、平均点が大学入試センター試験を含めた過去最低となり、4割を切った『22年ショック』がありました。この時、上位層はきちんと選抜できたが、中位~下位は選抜として機能せず、学力差を反映できなかったように感じましたが、今回の共通テストを見ていると、『平均点50点』の共通テストの理念は今後どうなっていくのだろうと考えさせられます。
この背景には共通テストは国公立大学だけの試験にしたくないのでしょう。入試に共通テストを利用している私立大学は900校近くあります。これらすべての私立大でも機能するためには、易しい問題でも受験者の学力を反映させられることはわかっているので、今後も易しいままでいくのではないでしょうか。英数国の基幹3教科に関しては文字数を増やせば平均点が下がることが今回の結果からも読み取れるため、今後、文字数の増減で平均点を調整することもあり得ると思います。
また、不足するIT人材を増やしたいという狙いがあり、理系を増やしたいので数学や理科を難しく、文系を易しくしているのかもしれません。共通テストは2年をかけてつくられるので、来年の問題はすでにどのような問題にするのかは固まっているはずです。来年は難しくなるかどうか気になるところです」(平塚氏)
入試問題を解きながらインプットを
次に個別試験の全体の傾向へ。①初見の問題を定石に帰着させること(上位校ほど問題が変形される)②得点すべき問題と、捨てるべき問題の判断力③合否を分ける1問の見極め④言語能力(日本語の表現力や読解力・特に「読んで内容を理解する」力)が求められていると平塚氏は力説。また、⑤として私立大は上位校ほど問題に独自色が強く、上位校から中位校まで共通テストの内容、形式が意識されると述べた。
その後、平塚氏は「英語の勉強に関して、定型や定石みたいなものはありますか?」と質問。丸山氏は次のように答えた。
「共通テストに関してはあると言えます。逆に個別試験では、考えさせる問題が増えた印象があり、共通テストと個別試験は別の対策が必要と思われます。
高1と高2では英検を主体にして勉強することが定番で、3年から論述や言語系に移ることが定石だと考えられます。英検Rが非常によいと思われるのは、読んだら解ける、書いたら点になるということで、国語力が不要なのです。ただ、一点、英検R2級に要約が入ってしまいました。要約は若干、国語力が必要ですが、問題に関してはパターン化しているので、フレーズをまとめていけば、国語が苦手な生徒でも対応が可能です。こうして高1と高2の間は純粋な英語をしっかりと身につけ、和訳は極力少なめにし、高3になってから英語を理解し、その英語を日本語に直す勉強をすれば上位校の受験に対応できます」
続いて平塚氏が個別試験に求められる英語の知識とスキルについて紹介。例えば、長文読解には英検対策としての「ベーシックウイング」の「リーディング」、受験対策として「アドバンス 私大英語錬成演習夏期ユニット2」などの同社の映像教材を勧めた。
「知識をインプットするのはいいのですが、すべてを完璧にする必要はない大学受験の場合は内容量が膨大です。そのため、こうした教材あるいは実際の入試問題を解きながらインプットを固めていくという逆の発想にしないと間に合わないでしょう」(平塚氏)
「スポーツと英語は似ています。バタフライを習得するのに、映像を見て学んでから泳ぎに入る人はいないと思います。泳ぎながら、その上達を目指すはずです。英語の勉強も、こうした同時進行が得策といえます」(丸山氏)
その後、(株)ウイングネット本部長代理の飯嶋洋平氏が高校受験の動きについて解説。高校の無償化が進む中、進学先が決まった中学生に塾がどのような新たな価値提供が求められるのか、また、変化に強い生徒になるよう鍛えていくにはどうすればよいかなどを考えていく必要があると述べた。
「そこで、加盟校の先生にお話をうかがいたく、今日は、スペシャルコメンテーターとしてRadar Chart代表の齋藤龍史氏をお招きしました」(飯嶋氏)
Radar Chartは千葉の松戸市で合格実績を誇る自立型の学習「ジム」だ。齋藤氏は次のように語った。
「当塾にとって高校の無償化は追い風です。生徒には『中学でも塾が必要なら、高校に行ったら、もっと必要になるよね。私立の高校が無料なら私立に行って、もっと成績を伸ばそうよ』と言っています。そして『どの高校に入るか』よりも『入った学校でどの順位にいるか』が大切だと伝えています」
[第1部 大阪会場]
新課程で入試はどう変わった?
~新課程受験情勢と受験戦略~
(株)ウイングネット本部長 田中 聖 氏
(株)成基Society5.0 事業部部長
自立学習ゴールフリーLab 責任者 神谷大蔵 氏
(株)創造学園執行役員教務部次長 廣瀬平八 氏
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少子化と私立高校 無償化に向けて
![[左] (株)創造学園 執行役員 教務部 部長 廣瀬 平八 氏 [中] (株)成基 Society5.0 事業部 部長 自立学習ゴールフリーLab 責任者 神谷 大蔵 氏 [右] (株)ウイングネット 本部長 田中聖 氏](http://www.juku-kyoiku.com/wp-content/uploads/2025/06/2025_06_p43_three.jpg)
[左] (株)創造学園 執行役員 教務部 部長
廣瀬 平八 氏
[中] (株)成基 Society5.0 事業部 部長
自立学習ゴールフリーLab 責任者
神谷 大蔵 氏
[右] (株)ウイングネット 本部長 田中聖 氏
「2020年度から導入された新学習指導要領で学んできた〝新課程ネイティブ〟の受験生にとって、今回が初めての共通テストになりました。今後の大学入試のみならず、高校入試も含めた上で、私たち民間教育産業が、これからどういうことを展開していけばよいかを一緒に考える時間にしたいと思います」
田中氏は冒頭でこのように挨拶すると『寝屋川ショック』について述べた。偏差値69の寝屋川高校が今年の入試で倍率1倍を切るなど、大阪府内の公立高校で定員割れが相次ぎ、教育関係者に衝撃をもたらしたのである。
「高校入試には大きく2つの大きな波が押し寄せています。一つは少子化の波、もう一つは、来年以降全国で導入される私立高校無償化の波です。
大阪では今年、私立高校の専願率が35%に達しました。つまり公立高校を受けない生徒が35%もいたわけです。では、どこに流れたかというと、主に近畿大学附属と東洋大学姫路です。両校とも付属大学に進学する権利を有しながら、他大学を受けられるコースに人気が集中しました。こうした状況を受けて、今後、高校入試にどのように対応していけばいいでしょうか。神谷さんと廣瀬さんに意見を伺いたいと思います」(田中氏)
大阪会場セミナー第1部ではスペシャルコメンテーターとして、株式会社成基Society5.0 事業部部長・自立学習ゴールフリーLab 責任者の神谷大蔵氏、株式会社創造学園執行役員教務部次長の廣瀬平八氏の2人が登壇し、意見を交わした。
「例えば、京都に関しては、無償化によって私立の少ない滋賀県から受験生の流入が増えると思われます。特に龍谷大学付属平安、京都産業大学付属などの人気が出るのではないでしょうか。大学の付属校の方が安心だと考える受験生は多いからです。今後はこうした私立の受験生に向けて、個別最適化された指導体制が必要になってくると思います」(神谷氏)
「また、無償化によって生徒が私立にシフトした場合、合格の時期が公立の合格よりも早まるため、高校入学までの長期間、中3生は勉強しなくなります。こうした生徒を高校部門にどうつなげていくかが課題となります。早いタイミングで高校への継続化を図っていくべきです」(廣瀬氏)
受験生の早期退塾を防ぐには?
続いて、田中氏は私大の入試の変化について触れた。今年、東洋大学が関東で初めて学力テストのみの公募推薦を実施。500人の枠に対して、2万人の受験生が集まった。これによって関東では、上位層の高校生を入学させたい大学が学力検査型の公募推薦を導入せざるを得なくなり、一般選抜型の入試の前倒しが起きるのではないかと述べた。これでは高3で早期退塾する生徒が増えてしまう。関西の私大にも何らかの影響はあるのだろうか。
「関西は、あまり影響はないでしょう。ただ、関関同立以外の多くの私大は、公募制推薦に関して、いかに多くの受験生に受けてもらい、いかに多くの合格者を出すかを重要視しています。例えば、京都先端大学のように公募推薦でも特待生を認めて志願者数を集めようとする大学も増えています。また、学力よりもキラリと光るものを持った生徒を総合型選抜で入学させるという方向にシフトしつつあります」(神谷氏)
「私も基本的に関西での流れは変わらないだろうという認識でいます。ただし、中堅や中下位層の高校に通う生徒の間では、コミュニケーション能力や志望理由書の書き方などを早期から身につけ、指定校推薦や総合型選抜を受けて早い段階で合格したいというニーズは高まっています」(廣瀬氏)
こうした受験生の早期退塾を防ぐ対策として神谷氏は次のように述べた。
「対策は2つあります。一般選抜型にも目を向けてもらい、この入試で合格を勝ち取れるように生徒の学力と意識を高めていく方法と、年内に合格が決まった受験生に大学での学びに向けた講座などを開講する方法です。例えば、公募推薦で生物系の学部への進学が決まった受験生には生物の勉強をさせる、あるいは大学に入ると英検RやTOEICRを受けさせられるので、そのための勉強させるのです」
共通テストを条件とする私大入試も
次に今回の主題である新課程入試の分析に移った。田中氏は今年の共通テストの英・国・数の平均点が昨年よりも上がったことに言及。
「国語は試験時間が10分延長しましたが、設問数は昨年と同じ38問なので、解くのに40分、読むのに50分の時間が取れたということになります。つまり、1分間に読まなければならない文字数が去年より減っているのです。しかも、昨年は選択肢が5択でしたが今年は4択でした。これでは平均点が上がるわけです。
では、来年はどうなるでしょうか。これまでの流れで行くと平均点が上がると、次の年は難度調整すると考えられます。反対に大学入試センター的には受験者数を増やしたいので難度は上げないけれども、上位校に関しては高得点勝負になるのではないかと思われます。お二人はどのようにお考えでしょうか?」
「両方とも可能性はあると思っています。ただ、関関同立を含めた私大の共通テスト利用の合格者の平均点を見ると、かなり低いことがわかります。例えば龍谷大学社会学部の合格最低点は6割の方式もありました。また、私大では共通テストの受験を条件としている入試もあります。高校の先生も大学の説明会でも『共通テストは受けておいた方がよい』と言うでしょう。私も生徒にそう話しています。ですから、受験者数は維持できるはずなので、来年は問題がやや難化するのではと思っています」(神谷氏)
「どちらのケースにしても、センター試験の頃とは、明らかに出題内容が変わってきていますので、早めの準備が必要だと思います」(廣瀬氏)
インプットしながらアウトプットを
2人の意見を受けて、田中氏は同社が考えたスケジュールを掲示しながら、次のように述べた。
「英・国・数や、理系の科目、文系の社会1科目のインプットは高2のうちに終わらせないとたぶん間に合いません。そして、高3になったら演習を重ねておかないと高得点を取るのは難しいと考えています」
続いて個別試験について。田中氏は京都大学、大阪大学、神戸大学の問題を紹介した。京都大学では「口角を少し上げるだけで」という日本語を英訳する問題が出されている。この問題に関して、田中氏は「こうした日本語独自の表現を英訳する問題が出されたということは、まさに文部科学省のいう『生きる力』を問う問題を京大が出題したことになります」と述べた。
「『口角を上げる』の解答のひとつは『lift thecorners of mouth』です。実際に口角を上げてみれば英訳できます。日本語の理解力を試す問題といえます」(廣瀬氏)
そして廣瀬氏と神谷氏は、個別試験に関しては、ほとんど大きな変化はないと分析。田中氏は次のように述べた。
「日常使う言語としての英語、情報処理能力のための国語、生活をしていくための数学。こうした問題を見ていると、国公立大の個別試験が新学習指導要領の影響を受けているというよりも、個別試験に新学習指導要領が追いついてきたという言い方の方が正しいような気がします。ここにお集まりの皆さんも思い当たる節があるでしょう。これらの問題を解き切るには、早めにインプットを終えないとアウトプットに辿り着けません。そしてインプットをしながら同時にアウトプットをすることも必要です。それができるのが映像授業の強みだと思います」
[第2部 東京・大阪]
「パフォーマンス拡大」
〝人材不足〟への対策 5科指導体制
顧客ニーズの多様化 魅力ある塾づくり 等
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グループディスカッションで意見交換
第2部の司会進行を務めたのは同社の大間氏と飯嶋氏だ。
「皆様で話し合っていただきたい課題の一つは、人材不足への対策です。2021年4月時点で不足している全国の公立小中学校の教員数が全国で2558人というデータが示されています。このような人材不足が進む中、各塾様がどのように対応されているかを共有していただきながら、その中で解決に至った事例をぜひご紹介いただきたいと思います。そして、その内容をそれぞれお持ち帰りいただければと考えております。
もう一つの課題は多様化する顧客ニーズへの対応です。デジタル技術の進展や社会構造の変化によって、教育サービスに対する期待や要望が多様化しています。こうした状況から提案力を強化する重要性も高まっています。生徒一人ひとりに個別最適化された学習プランを提案することが、塾様の継続的な成功に不可欠になっているのではないでしょうか。これらの課題に対して、皆様とともに具体的な解決策を模索していきたいと思います」(大間氏)
「生徒や講師が減少する人材不足を打破するためには、魅力的な現場づくりが必要です。『魅力的』というのは、生徒だけでなく、職員の方々にとっても同様であるべきだと思います。
提案力の強化に関しては、学習量増や継続提案など、必要な内容を提案する力を身につけるにはどうすればよいか、皆様の現場における成功事例やお悩みなどを共有する場として、この第2部を活用していただきたいと考えております」(飯嶋氏)
ディスカッションは、奇数列に座った出席者が偶数列の席に座った出席者と向かい合わせになり、自己紹介をしたあと、意見や事例を発表して協議し、まとめていく方式だ。また、QRコードを使って、チャットで投稿することもできる。
魅力的な現場づくりと提案力の強化
まず「魅力的な現場づくり」をテーマにしたディスカッション。時間は10分間だ。ある塾の経営者は次のように語っていた。
「私の塾では大学生の講師を30人ほど抱えています。今の若い人の多くは謙虚で真面目なのですが、精神的に少し弱い面も持ち合わせている印象があります。ですから、叱るという方法は通用しません。これは生徒に対しても同じです。まずは相手を褒めてから何かを伝えることを意識しています。また、SNSで講師や生徒とつながり、個人的な内容にも耳を傾け、上からではなく、対等な関係で、フレンドリーに接するように心がけています」
その後、グループの代表者が全員の前でまとめた結果や成功事例などを発表。代表者の一人は次のように語った。
「少ない人数でどのように塾を運営すればよいか意見を交わしました。例えば、ある塾の方は、一つの教室内で映像授業を受けている生徒と、先生から直接指導を受けている生徒が共存しているそうです。つまり、複数の授業が一つの教室内で一人の先生のもとに展開されているわけです。また、通っている生徒が教室で学んでいる時から『将来、僕もここで先生になって教えたい』と思ってもらえるような塾づくりを大切にしていると語っていた方もおられました。こうすれば人材を確保できます」
続いて「提案力の強化」をテーマにしたディスカッション。意見が飛び交い、会場にはますます熱がこもっていった。
スクリーンに映し出されたチャットへの投稿には「マニュアルを作成する」「提案力の弱い講師にネットで模範となる授業を見せる」「他塾の強みを知る」といった声が並んでいる。
ディスカッションが終わったあと、再び代表者の発表へ。ある塾の経営者は次のように述べた。
「私の塾では、保護者との面談の際、一番選んでいただきたい講座を申込用紙の一番上に記して『こちらがお勧めです』と伝えて成約につなげています。保護者の方に迷わせないのもひとつの方法ではないかと思われます。一方、多様性を重視して『志望校別コース』を設けたところ、生徒が選ぶのに躊躇してしまったという失敗例もあります」
また、ある代表者は次のように語った。
「多くの講座を細かく用意して、保護者が様々な選択ができるように配慮しています。また、選んでいただきたい講座だけでなく、選んでいただく必要のない講座をあえて混ぜて『この講座はぜひ受講していただきたいのですが、こちらは受講しなくても構いません』と伝えています。不必要な講座を入れておくことで、お勧めの講座の価値を高めることができ、成約に結びつく例が多くあるからです」
[第3部 東京・大阪]
ウイングネットからの提案
〜新システムと新コンテンツによる受講戦略・夏期講習講座設計〜
(株)ウイングネット本部長 田中 聖 氏
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早めの仕掛けが今後は絶対的に必要
田中氏は高校の無償化によって私立高校の専願率が上ったことに加え、東洋大学が2025年度入試に導入した学力テストによる公募推薦について触れた。これは面接や小論文などは実施せず、学力テストのみで合否を判定する年内入試である。
「東洋大学のこの入試には500人の枠に対し、2万人の受験生が集まりました。これは完全に一般選抜型入試の前倒しになります。他の私立大学も追随するでしょう。今後は高校生の早期退塾を防ぐ工夫が必要になってくるわけです。
今年の共通テストに関しては平均点が上がりました。そこで『来年は難しくなる』という予想と『受験者数がこれだけ減っているのだから、現状維持でしょう』という予想の2つがあります。しかし、どちらにしても、センター試験に比べると時間内での処理という点で難しくなっていることは確かです。早めに対応しないといけません。一方、個別試験は相変わらず難しいので、その対策はますます重要になります。
つまり、中学から高校への継続についても、高3生の受験に関しても、早めの仕掛けが今後は絶対的に必要となるのです。そこで、弊社のサービスをぜひご利用いただきたいと思います」
田中氏はそう述べて、高校生の通常授業の年間コース設計と夏期講習の講座設計について概略を伝えるとともに、「高3学校推薦型・総合型選抜」パッケージや「大学生活スタートup」パッケージ、高校入試対策などを紹介した。
岡山県倉敷市にある柚木進学ゼミの塾長を務める柚木真澄氏は、東京会場では映像で、大阪会場では実際に登壇し自塾の取り組みを紹介した。同塾は「中学生ベーシックEXテーマ別演習」を導入して高校入試の合格実績に絶大な成果を上げているという。柚木氏は「映像授業によって生徒一人ひとりのニーズを的確に捉えることができ、生徒の満足度も非常に高い。個人塾ではあるが、多くの優秀な先生方(ウイングネット)が控えている。まるで『塾内の塾』のイメージだ」と講師不足(が問題になっている時代)に対する考えを述べた。
小学生低学年専門在宅オンライン講座「パンセフロンティエル」について藤谷氏から紹介された。「算数や数学の力を本当に伸ばしていくには、場面を思い描きながら考える力、イメージ能力、算数的思考力を低学年から育てていく必要があると思います」と述べて、「パンセフロンティエル」を紹介。これは玉井式算数国語教室Rの玉井満代氏がプロデュースした小学校低学年専門のオンライン講座である。
最後に、代表取締役社長の荻原俊平氏が次のように閉会の挨拶をした。
「これからの時代に何が大切かというと、集客、退塾防止、合格率、そして、子どもの成長のために企業体として地域に貢献していくことです。子どもを幸せにすることは、一社ではできません。皆さんと心をひとつにして、それを成し遂げたいと思いますので、よろしくお願いいたします」