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    全国塾長・職員研修大会
    「親子ともによい育ち─変えよう、教育の当たり前─」

全日本私塾教育ネットワーク 第22回
全国塾長・職員研修大会
「親子ともによい育ち─変えよう、教育の当たり前─」

2025-06-02

専門行動療法士・臨床心理士の奥田健次先生による基調講演

私塾ネット理事長 田中宏道氏(LAPIS 鎌ヶ谷代表)

私塾ネット理事長 田中宏道氏(LAPIS 鎌ヶ谷代表)

4月20日(日)、全日本私塾教育ネットワーク(以下、私塾ネット)主催による第22回全国塾長・職員研修大会が、きゅりあん(品川区立総合区民会館)で開催された。私塾ネットは、学習塾の活動を30余年にわたって支えてきた任意団体である。
第1部は、奥田健次先生による基調講演。奥田先生はオーダーメイドの指導法で高い評価を得ている専門行動療法士・臨床心理士だ。信州地方では学校再生に取り組み、学校法人西軽井沢学園を創立。2018年4月に「サムエル幼稚園」を開園、2024年4月には「さやか星小学校」を開校した。そんな奥田先生が今回、不登校やスマホ依存、子どもの育て方などをテーマに熱く語った。

この大会を通じて縁を深めてほしい

[左] 全国学習塾協同組合理事長 森貞孝氏 [右] 私塾ネット研修部長 柳田浩靖氏(日米文化学院)

[左] 全国学習塾協同組合理事長 森貞孝氏
[右] 私塾ネット研修部長
柳田浩靖氏(日米文化学院)

「みなさん、本日は休日にもかかわらず、全国からお集まりいただき、誠にありがとうございます」と私塾ネット研修部長の柳田浩靖氏(日米文化学院)による司会進行で同大会は開幕。オープニングに同理事長の田中宏道氏(LAPIS鎌ヶ谷代表)が次のように主催者挨拶を述べた。
「私塾ネットは北海道から九州まで、学習塾の方々が学びを通して縁を深める団体です。今回はいつもと違い、特別支援学校の先生方、保育園の園長、放課後等デイサービスの経営者やスタッフの方、個人で参加された方などが奥田先生の話をお聞きになりたいということでお集まりいただいています。
本大会の特長として、意見を交換する時間や懇親会も設けておりますので、ぜひ、縁を深めていただきたいと思います」
次に来賓祝辞。全国学習塾協同組合理事長の森貞孝氏が登壇し、次のように語った。
「今、技術が急速に発展して『生成AI』や『ChatGPT』、『ビッグデータ』といった言葉が世の中に数多く飛び交っています。また、デジタル庁が『オープンデータ基本方針』を発表し、国や地方公共団体などが作った膨大なデータを営利・非営利関係なく無償で自由に使える方向に変わりました。私たち塾関係者も、これらを使いこなして、経営力を大きく伸ばしていかねばならない時代になってきたと思います」

[左] 私塾ネットエリア中国代表 西本雅明氏( パワーゼミ代表取締役) [右] 一橋ゼミナール八木山校塾長 丹治美香氏

[左] 私塾ネットエリア中国代表
西本雅明氏( パワーゼミ代表取締役)
[右] 一橋ゼミナール八木山校塾長
丹治美香氏

続いて、今回は公務で欠席した(公社)全国学習塾協会顧問である参議院議員・大島九州男氏のメッセージを司会の柳田氏が代読。そこには「本日の研修会を通じて、教育を取り巻く環境の変化を正しく捉え、今後の指導や運営に活かしていただくことで、子どもたちの健やかな成長と、より明るく温かな社会の実現に向けたさらなるご尽力を賜りますよう、心より期待申し上げます」と綴られていた。
その後、「それぞれの私塾ネット」と題して各エリアからの報告へ。まず、東北エリアから一橋ゼミナール八木山校塾長の丹治美香氏が登壇。同塾では中学から高校までの継続率が6割から7割であること、生徒の部活入部率が8割であること、東北大学の総合型選抜入試の指導に力を入れていることなどを語った。
中国エリアからは、私塾ネットエリア中国代表であり、(公社)全国学習塾協会副会長を務める、パワーゼミ代表取締役の西本雅明氏が登壇。西本氏は、同塾が4教室を展開する福山市についてユーモアたっぷりに語り、会場を湧かせた。

世界初の「パーソナライズ学習」

いよいよ、奥田先生の基調講演へ。
「奥田先生は、学校法人西軽井沢学園の『サムエル幼稚園』と『さやか星小学校』の創立者であり、理事長でいらっしゃいます。行動分析学の専門家として、不登校や発達障害の子どもたちに向けて、また、学級崩壊といった問題に対し、これまで延べ2万件以上の現場支援を行ってこられました。叱らずに子どもを伸ばす教育の実践者として、科学的で温かい支援を日本全国はもちろん世界へと広げておられます」
柳田氏が次のように紹介したあと、奥田先生はまず、一昨年にテレビ朝日で放映された漫画原作のドラマ「リエゾン―子どものこころ診療所―」で制作協力を務めた際のエピソードについて語った。
このドラマは、自らも発達障害を抱える児童精神科医と研修医が、様々な生きづらさを感じる子どもと親に真摯に向き合う姿を描いた作品だ。脚本は、大ヒットした医療ドラマ「ドクターコトー」を担当した吉田紀子氏。奥田先生はその吉田氏に専門家としての知識と経験をもとに助言した。
続いて2024年、佐久市に開校した「さやか星小学校」について語った。
「長野県で一番小さな定員の私立小学校で、1学級は28人までです。ここでは、児童全員を画一的に指導する日本の従来型教育をやめて、世界初の『パーソナライズ学習』を導入し、子どもの学びを支援しています」
「さやか星小学校」では、タブレットなどのデジタルテクノロジーを有効活用することで、一人ひとりの得意不得意に合わせたオーダーメイドの授業を展開している。例えば、火山に興味のある小学1年生が小学6年生の参考書を使って、先生とともに深堀り学習を行うといったシーンも見られるのだ。こうした学び手の学習進度に合わせた「パーソナライズ学習」によって、落ちこぼれも、浮きこぼれも生じないという。そして児童は学習に楽しさを見出し、自ら「もっと知りたい」という気持ちや姿勢が生み出されるのだ。

寄り添ってはいけないケースも

基調講演を行った奥田健次先生

基調講演を行った奥田健次先生

次に奥田先生は「本日、お伝えしたいこと」と銘打って次のように述べた。
「どうすれば子どもは『悪く育つか』です。それを避けるためにすべきことは、子どもにとってよい環境を整えること、そして、気をつけるべきことは、何もしなければ、望ましくない行動がどんどん増えてしまうということです。
そこで今回のテーマを『不登校』と『依存症』と『家庭と塾が協力することの大切さ』とさせていただきます」
この本題に入る前に奥田先生は「個別」の重要性について述べた。
「みなさんがバイオリンなど、これまで触れたことのない楽器の演奏を習得しようという時、いきなり『エキスパートクラス』に入れられたら、どんな気持ちになりますか?他の生徒がバイオリンを美しく奏でているクラスに放り込まれるわけです。せっかくやる気があったにもかかわらず、次第に学ぶ気力がなくなるでしょう。
このことをみなさんは保護者に伝えるべきです。『みんな一緒の方法で』という考え方は、時代遅れであり、子どもにとって不健康な環境です」
こう力説したあと、本題である不登校について述べた。
「不登校に対する世の中の認識は間違いだらけです。厄介なのは、教育については誰でも口を挟みたくなるもので、子どもに寄り添えばいいというきれいごとを言っていれば安泰なのです。
私は『子どもに寄り添ってはいけない』という時があると伝えています。寄り添ってよいケースとそうでないケースがあるからです」
そして奥田先生は不登校に関して「文部科学省の『不登校』の定義では実態が隠されてしまうので、『長期欠席者』全体に目を向ける必要があると力説する。
「現在の不登校は過去のそれとは違います。『学校に行きたい気持ちがあるんだから不登校と一緒にしないで』と子どもが主張すれば、また、親が医師の診断書をもらえば、「不登校ではない」(不登校に分類されない)とされます。『隠れ不登校』や『不登校隠し』が起きているのです。
2024年の長期欠席者の推移を見ると、子どもの数が減っているのに、こうして長期欠席者は増え続けています。私は警告し続けてきましたが、案の定、コロナ以降も増え続けているのです」

家庭ではスマホを完全にデトックス

「特に長野県は長期欠席者が多く、県内の私立学校ではこの2年間でさらに増加しています。長野県の私立学校は相変わらず中部地方でワースト1です。
一方『さやか星小学校』では、児童が病院に行かず、2日間休めば支援を開始し、休み癖がつかないようにしている。そのため、長期欠席者がいない。これには保護者の全面的な協力が必要だという。
続けて奥田先生は保護者の声を紹介。「日曜日の朝、起きてきて『まだ日曜日なのか』とため息」「日曜日の夜、『サザエさんのエンディングの後くらいから月曜日が待ち遠しいようです』「まるで遠足に行く日の前のように、学校に登校するのを楽しみにしています」といった声が寄せられているのだ。
長期欠席ゼロの秘訣の一つには、学校でのみ、デジタル機器をふんだんに利用でき、家庭では完全にデトックスしていることがあげられる。スマホ所持児童は、一人もいないのだ。
「学校に行ったらデジタル機器がいっぱいあって家にはない。使っているのは、お父さんやお母さんだけ。『さやか星小学校』は、こうした環境からスタートしているのです」

子どもの要求を優先してはいけない

文部科学省の特別支援教育課調査結果の家庭的要因を見ると「不登校」及び「その他」の要因の上位に「ゲーム障害・パソコンや携帯電話等」が挙げられている。
「ここに入っていない家庭的要因に私は『常に子どもの要求が優先される』を入れました。最近の親は、ほとんど子どもに振り回されています。
数年前、ある地方で起き、現在裁判中の事件があります。精神科医の娘が殺人事件を起こしました。その精神科医は娘の言うことを優先し続けたそうです。その結果でしょう。娘の犯罪を止めることもできず、実行するための協力までさせられたのが結末なのです。こういう子育ては絶対にしてはいけません。
わが国の方針が、残念ながら子どもの意見を重視する方向になっていますが、それを奨励してしまうと、社会も家庭も混乱します。
日本の幸福度はみなさんご存知のように内戦が起きている国と同じような順位です。また、日本は子ども(10?19歳)の自殺率がG7諸国の中で1位です。このような状況を何とか改善しなければなりません」
こうした問題の背景にあるのが、インターネットであると奥田氏は指摘する。
「ネットの利用時間が長ければ長いほど、自己肯定感が低くなります。そして、ネット依存になり、寝不足や自己コントロールの低下、情緒不安定などの状態が引き起こされます。精神の不調が増え、それによって浪費、衝動性が高くなることがわかっているのです。脳科学者、行動分析学者、医師、先日お会いした曹洞宗の僧侶などが口を揃えて子どもにスマホを持たせるのはよくないと言っています」

ネットは依存性のある薬物と同じ

親に対する子どもの要求のひとつがスマホを持ちたい、家庭で使いたいというものだ。
「子どもが持ちたいと言っても、スマホやタブレットは絶対に持たせないようにしましょう。何時から何時までと時間を決めて使わせるのもよくありません。焼き肉90分食べ放題の店に行けば、元を取ろうとして夢中になってたくさん食べようとするでしょう。それと同じです。
『iPhoneを持たせたいですか?』という質問に対して、スティーブ・ジョブズ氏は『持たせるつもりはない。さっき言ったでしょう?一度使うと生活から切り離せなくなるように開発したのだから』と答えたそうです。子どもにとってネットは依存性のある薬物と同じです。iPhoneを開発した人が依存するように作ったと言うんですから。一度持たせたら終わりです」
そう語ると、奥田先生はある映像を見せた。塾帰りと思われる子どもたちが電車の優先席に座ってスマホを見ている。
「周囲に妊娠中の女性や高齢者がしんどそうに立っているのに、スマホに夢中で目に入らないのです」

親がイネイブラーにならないこと

私塾ネット副会長理事長代理 仲野十和田氏(ナカジュク代表)

私塾ネット副会長理事長代理
仲野十和田氏(ナカジュク代表)

次に奥田先生は常に子どもの要求が優先されることで、子どもが悪く育ってしまう状況について「イネイブリング」「イネイブラー」という言葉を用いて解説した。イネイブリングとは依存行動(ゲーム、ギャンブル、アルコール、薬物など)を続けることを許してしまうこと、「イネイブラー」とは、「イネイブリング」をする身近な人のことをいう。親や教育者がイネイブラーになってはいけないのだ。
イネイブリングによって、副次的に現れやすい行動や情緒障害には、睡眠不足や反抗、乱暴、破壊行動、虚言癖、学業不振などが挙げられる。
「街の中はイネイブリングによる『社会的悪循環』だらけです。子どもが泣くと親が不憫に思って注目します。泣き止むとほっとして親は注目しなくなります。しかし、またどうせ何かのことで子どもは再び泣くのです。子どもの行動は親の行動に、親の行動は子どもの行動によって影響を受けます。
子どもの不調に過剰なまでの反応をしてしまい、何かあれば飛んでくる保護者を『ヘリコプターペアレント』と言います。塾を経営するみなさんも、こうした保護者との関わりには苦慮しておられるはずです。
ちなみに『サムエル幼稚園』に見学に来られれば面白い場面が見られます。4月に入園した園児は親と離された不安や環境の変化で泣いたり騒いだりします。しかし、先生は完全に背を向けます。すると、そのうち園児は泣き止みます。そして、おもちゃで遊び始めた時に先生は園児に寄り添うのです。もちろん、これは保護者の理解と協力があってこそ、できることです。
泣いたら声をかける。こうした不健康な寄り添い方は、不健康を増加させます」

尊敬する心を持つ子どもはよく育つ

「イネイブリングをやめるコツ」として、奥田先生は「がばいばあちゃんを見習ってほしい」と提案した。「がばいばあちゃん」は、漫才師である島田洋七氏の自伝に登場する、島田氏の祖母である。島田氏は佐賀に住む祖母のもとに預けられ、少年時代を過ごした。貧しく苦労人であった祖母のもとで、島田氏は健やかに成長していく。
「島田少年が学校から帰ってきて、『ご飯は?お腹すいたんやけど』というと、おばあちゃんは『気のせいや』といいます。空腹を我慢して寝て、朝起きて学校行く前にご飯はあるのかなと思ったら『学校行きなさい』のひと言。『おばあちゃん朝ご飯は?』と聞くと『昨日食べたやん』と言います。そこで島田少年は近所の庭の塀から飛び出しているはっさくを食べて空腹をしのいだといいます。このような貧困状態の中、祖母に育てられたことを、島田洋七氏は今でも講演で楽しそうに語って言います。おばあちゃんにひどい目に合わされたとは微塵も思っていないのです。保護者がイネイブラーにならないためには、島田少年のおばあちゃんを見習わなければならないのです」
そして奥田先生は会場の塾関係者に「学校と一緒に困難に立ち向かいましょう」と呼びかけた。
「人を尊敬する心を持っている子どもは健やかに育ちます。そこで間違っても保護者は学校や塾の先生への不信感を子どもの前で口にしてはなりません。
尊敬する心を持っている子どもはよく育つので、そのためには間違っても先生への不信感を子どもの前で言ってはいけません。これも、皆さんの塾に子どもを通わせている保護者が、塾の先生を軽んじてはいけないということです。もちろん、先生であっても、完璧な人間はいませんし、全員が聖人君子ではないのですが、子どもを教える役割を担っている先生のことを悪く言ってはならないのです。
また、これまで述べたように子どもに寄り添って言いなり召使いのようになること、反対に力づくで子どもを従わせる暴君のような振る舞いをしてはなりません。子どもが親や先生に尊敬の念を抱き、その言葉に従おうという気持ちが自然と沸き起こることが一番です。これをめざしましょう」
その後、奥田先生は自身が原作を手がけた「拝啓、アスペルガー先生[マンガ版]―異才の主張セラピスト実録(飛鳥新書)」などについて紹介。続いて会場からの質問に答えた。

決め事をつくると登校率が2倍に

基調講演の後は、振り返りと情報共有へ。隣の席や後ろの席に座った参加者が3〜4名のグループを組み、各自がアイスブレークシートに仕事や趣味などを記入。グループの中からファシリテータ役を決めて一人ひとり自己紹介し、講演を聞いて思ったこと、感じたことを語り合った。
最後に私塾ネット副会長理事長代行の仲野十和田氏(ナカジュク代表)が次のように挨拶をした。
「私のフリースクールでは、3年ほど前までは精神的に落ち込んでいる生徒が多く、その子たちが元気になるからと思ってとりあえず、やりたいことをさせようとしていました。例えば、ゲームをしたい生徒にはゲームをさせていました。しかし、これではよくないと感じ、子どもたちと相談して『午前中は絶対に勉強をしよう』というような決め事をつくったのです。すると登校率が2倍になりました。子どもたちは、本当は自分が何をしなければならないかをわかっているのだと思います。
今日のお話は非常に興味深く参考になりました。明日から実践してみようと思います。ありがとうございました」
こうして第1部は終了し、第2部の懇親会へと移っていった。


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