数学の試験で、手も足も出ない難問はあきらめもつきますが、簡単な問題でうっかりミスをすると、悔やんでも悔やみきれませんね。10回に1回程度なら、うっかりミスといえますが、頻繁に繰り返すミスは、本当は力不足、練習不足、と著者は力説しています。

しかし、これを軽く考え、うっかりミスと勘違いしている生徒が非常に多いため、中学数学の基礎基本をガッチリ固め、うっかりミスを減らすことを狙ってこの本は書かれました。
この本は中学数学の「基本のきほん」が全分野について網羅されています。
各項目とも見開き2ページで完結し、教科書順ではなく、「方程式」「式の計算」「関数」などと単元縦断型に並んでいますが、索引があるので、入試対策として3年分の総復習にも最適です。
図やグラフが数多く散りばめられ、生徒目線で書かれているので、数学が苦手な人や勉強嫌いの人でも独学で取り組みやすい構成になっています。まず左頁で「これだけは覚えよう」を確認します。ここには各項目を学習する上で覚えたい重要ポイントが書かれているので、しっかり覚えます。
「例題」の下には例題の解き方や項目のポイントをまとめた「解説」があり、じっくり読むと理解が深まります。次に練習問題ですが、問題を解く上で役に立つヒントが書かれています。
全体を通して、「基本のきほん」に力点を置いているだけあって、つまずきやすい内容が、丁寧に解説されています。逆に言えば「こんな解き方があったのか！」という目新しい解法や裏ワザなどはほとんど含まれていません。
「苦手な子ほどよくわかる」とあるように、つまずきやすい内容をかみ砕いて教科書よりわかりやすく解説することを目的としているので、あえて目新しさは狙っていないのだと感じます。
また、「なぜ直角は100度ではなく90度？」や「ネズミ算って何？」など興味深いコラムも随所に掲載され、遊び心にあふれて、楽しく学べる工夫がなされています。中学生に限らず、お仕事に役立てたい人、もう一度数学をやり直したい人、脳を刺激して若返りたい人にも適しています。
著者の教室は千葉県の津田沼にあり、駅周辺に大小50前後の塾、予備校、英会話教室などがひしめき合う全国有数の塾激戦地です。そのようなところで並みいる大手に対して個人塾が生き残るために、他塾との差別化を図って特長を出すには何をすればいいのか、試行錯誤の末、数学を前面に押し出すことにしたそうです。
近隣には英語専門の塾は多くあるものの、数学専門塾は皆無。しかし、塾をすでに開業したこともあり、また英語のニーズも高く、他教科を切り捨てて数学専門塾にするにはハードルが高いと判断し、「数学、数学、数学」と数学を前面に押し出した戦略だといいます。生徒の保護者からは「数学しか教えてもらえない塾だと間違えられてしまいますよ」と忠告されたほどの力の入れようようでした。数学の底力ドリルシリーズなどの塾内教材を次々に開発、「たったの10問でみるみる解ける中学数学」など市販本も数多く出版し、確固たる地位が確立されたのです。
基本を大切にすることは、数学に留まらず、すべてのことに通じます。どんなことも基本をマスターして初めて実力が育まれ、応用力、人間力につながっていくものと期待されます。※通常の出版物の「印刷版」とは別に「電子版」も同時発売されています。